2022.10.20
かつてインターハイで激闘を繰り広げたBリーガーにインタビューを実施。当時の思い出とともに、彼らにとってインターハイがどのような舞台だったのかを伺う本シリーズ。第五弾はサンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生が登場。
中学卒業後に地元福岡県を離れ、宮崎県の強豪・延岡学園高校に入学し、3年時にはエースとしてチームを“高校3冠”に導いた。そんな彼にとって、インターハイとはどんな舞台だったのか。前編では高校入学の経緯から、「まさか」の結果に終わった2年時のインターハイまでの思い出を聞いた。
インタビュー・文=峯嵜俊太郎
――まずはバスケットを始めたきっかけを教えてください。
ベンドラメ 始めたのは小学校3年時の時、友達のお母さんに誘われたのがきっかけです。最初は親同士でいいねと言っていて、それで嫌々体育館に連れて行かれて始めたという感じで(笑)。当時はよくケガもしていましたし、あまりアクティブなタイプではなかったので。
――嫌々で始めたバスケットにハマった瞬間は覚えていますか?
ベンドラメ 瞬間というわけではないんですけど、だんだんシュートが入るようになると、シュートを決める喜びとかを感じるようになってきて、そこから少しずつハマっていったという感覚です。それからは、それまで全然やっていなかった昼休みのドッジボールにも参加するようになって、結構性格的にも明るくなったというのを覚えています。
――当時のベンドラメ選手のバスケットの実力は?
ベンドラメ 小学生の時の大会で県3位になったことがあるので、福岡県のなかではそれなりに強いチームだったと思います。でも、「自分がうまい」とか感じたことはなかったですね。
――その後入学した筑紫野市立筑紫野中学校ではいかがでしたか?
ベンドラメ チームとしても県大会も出れず、地区大会で負けてしまうような感じで。僕個人としても別に名前が売れていたわけでもなく、いわゆる選抜チームみたいなものには一回も呼ばれたことはなかったです。
――決して有名選手ではなかった中学時代から、宮崎県の強豪である延岡学園にはどのような経緯で進学されたのでしょうか?
ベンドラメ 高校進学にあたって、福岡県内でも幾つか声を掛けてくれてる高校はありました。でも、どの高校も県3位とか4位のチームでした。僕個人はインターハイに出たいという気持ちがあったんですけど、福岡には福岡第一高校と福岡大学附属大濠高校があるので、福岡の3位とか4位のチームでは出られないなと思って。その時に、たまたま知り合いの伝手で延岡学園がやっている中学3年生を集めたキャンプみたいなものに参加する機会があったんです。
――そのキャンプがきっかけで延岡学園に入学したんですね。
ベンドラメ そうですね、そこで声をかけてもらったことがきっかけで。ただ、そのキャンプではそこまで手応えはなくて。実際、特待での入学でしたけど全額免除とかレベルの高いものではなく、本当にただ声を掛けてもらって入学できるという感じでした。けれど、当時の延岡学園は全国大会に毎年出ている宮崎県で断トツのチームでしたし、インターハイに出られるチャンスはこっちの方が高いかなと思って、入学を決めました。
――地元を離れて宮崎の高校に進むということで、環境の変化に対する不安や戸惑いはありましたか?
ベンドラメ 当時は親元を離れて寮生活をすることに対して、あまり深く考えていなくて。不安とかも全く感じず、むしろバスケットをする環境があることへの、楽しみの方が大きかったです。
――当時のチームには3年生に永吉佑也(現ライジングぜファー福岡)選手が在籍していました。
ベンドラメ 「いや、でかいな…」というのが最初の印象です。あんなに大きい人は初めて見ましたし、さらに大きくてあんなに走れるという人も初めてでした。正直怖かったです(笑)。
――入学後の最初のインターハイで延岡学園は準優勝を果たしますが、1年生でも何人かがメンバー入りするなかでベンドラメ選手はメンバーに入ることができませんでした。
ベンドラメ シンプルに実力が足りませんでした。そんなに自信を持ってプレーもできていなかったので、もちろん悔しさはありましたけど、当然といえば当然かなと思って試合のビデオを撮ったりしていました。
――その後、1年生の時のウインターカップではメンバー入りを果たしています。
ベンドラメ ウインターカップの前に天皇杯の九州予選があって、そこで福岡第一と対戦したんですけど、その試合で不意に出場機会をもらえたんです。結構接戦の場面だったんですけど、そこで2、3個いいプレーができて。結果的に負けてしまいましたけど、僕個人としては手応えのあるプレーができました。あそこで出ていなかったら、多分ウインターカップのメンバーにはいなかったと思います。
――インターハイの頃は自信を持ってプレーできていなかったなか、その福岡第一高校との試合を経て、自分への自身が芽生えたのでしょうか?
ベンドラメ もちろん自信も生まれましたし、高校のバスケットに慣れてきたというのはあると思います。そのおかげで自分のプレーをうまく表現できるようになってきた部分はあったと思います。
――ウインターカップはベンドラメ選手にとって、初めての全国大会となりました。緊張はありましたか?
ベンドラメ めちゃくちゃ緊張しました。やっぱり初めての全国大会だったので。試合に出てもすぐに息が上がっちゃって、何をやったらいいか分からないような状態でした。
――ベンドラメ選手の全国大会初出場は大会2回戦の東海大学付属第三高校(現東海大学付属諏訪高校)戦でした。相手にはザック・バランスキー選手(現アルバルク東京)もいました。
ベンドラメ 宿舎も一緒だったので、よく覚えています。この外国人選手、めちゃくちゃ日本語うまいなって思いました(笑)。実際に対戦した時はすごくシュートが上手な選手という印象でした。
――この大会では準々決勝まで勝ち進んで、メインコートの試合で明成高校(現仙台大学附属明成高校)に敗れることとなりました。
ベンドラメ 東京体育館のメインコートはとんでもなく広くて、天井がめちゃくちゃ高く感じました。すごく自分が小さいような感じがして、頭が真っ白になったのを覚えてます。そんな状態だったので、試合でもリング正面から打ったシュートをボードの端っこに当ててしまって。それぐらい緊張していました。苦い思い出というか、苦いと言えるかどうかも分からないぐらい、何もできなかった。「全国すげぇ〜」って感じでした(笑)。
――その後、2年生になると延岡学園はベンドラメ選手たちの世代が中心のチームとなりました。個人的にチームでの立ち位置や、上級生としての進行の変化などはありましたか?
ベンドラメ それは特になくて、引っ張っていかないといけないとか、責任感とかももあまり感じず。どちらかというと、怖いものなしみたいな感じで、イケイケなチームだった記憶はあります。
――後輩として寺園脩斗(現レバンガ北海道)やジュフ・バンバ(現東京八王子ビートレインズ)も入学しました。
ベンドラメ 寺園は延岡学園と中高一貫になっている尚学館中学校出身なので、彼が中学生の頃からずっと同じコートで練習していました。寮生活も一緒にしていたので、高校に入る前から仲は良かったです。あいつが中1のちんちくりんの時から知っています(笑)。僕と(岡本)飛竜が一緒に練習しに行くと、「俺も行くっす!」って声変わりしていない声で言ってついてきて、可愛い後輩という感じです。
――大会で延岡学園は2回戦からの登場で、愛知産業大学工業高校に96-68で勝利しています。
ベンドラメ 初戦ということもあって、やっぱりちょっと固さはありました。愛知と埼玉の昌平のどちらかが上がってくるという組み合わせだったんですけど、当時昌平にはスラムダンク奨学金でアメリカに行く山崎稜選手(現・群馬クレインサンダーズ)がいて、僕らのなかでも「アメリカに行く奴がいるらしい」と噂になっていたんです。それでどちらかと言うと昌平を意識していたら、愛知が勝ち上がってきたので、それもあって固くなったのかもしれません。
――続く3回戦では八王子高校と対戦しましたが、57-75で敗れてしまいました。
ベンドラメ まさか、でしたね。その年、確か四角のシード校が明成以外みんな負けたんです。結構荒れた大会だったというのを覚えて、その後も八王子はその勢いで優勝して。僕たちとしても八王子の試合を見てもそんなに怖さとかは感じていなかったんですけど、全然そんなことはなかった。相手の日本人ビッグマンにめちゃくちゃ走られたり、3ポイントラインの3メートルくらい後ろから打つ選手がいたり。もう全部がサプライズすぎて、それにあたふたしているうちに試合が終わってしまったという感じでした。
――自信を持って大会に臨んだなかで、まさかの敗戦。チームにはどのような影響がありましたか?
ベンドラメ それが、特になかったんです。まさかすぎて、びっくりしていた印象で。それで3年生引退だったので申し訳なかったですけど、話し合って「もっとこうしていこう」とかはありませんでした。
――敗戦ではあったものの、それまであった自信が喪失することはなかったんですね。
ベンドラメ なかったですね。負け方も、相手のやりたいことを全部やられてどうしようもなかった、という感じで。敗戦に対してそこまで深刻に考えてはいなかったです。当時のインターハイ全体として「どこどこも負けたってよ」みたいな、そういう雰囲気の大会だったので、しょうがないという感じで自分に言い聞かせていたのかもしれません。
2022.10.20
2022.08.24
2022.07.26
2022.06.01
2022.03.14
2022.02.10
2022.08.24
2022.08.05
2022.07.26
2022.07.19
2022.07.12
2022.07.11
2022.07.25
2022.07.25
2022.07.25
2022.07.23
2022.07.22
2022.07.22