2021.10.11
2年ぶりのインターハイが北信越地域地区を舞台にまもなく幕を開ける。昨年の大会は新型コロナウイルスの影響により中止を余儀なくされ、今年の高校生プレーヤーのなかには夏の全国を知らない選手も、数多くいるだろう。そこでバスケットボールキングでは、かつてインターハイで激闘を繰り広げたBリーガーにインタビューを実施。当時の思い出とともに、彼らにとってインターハイがどのような舞台だったのかを伺った。
第一弾はアルバルク東京のザック・バランスキー。日本で生まれ、4歳からのアメリカ生活を経て、10歳のときに再来日したバランスキーは、東海大学付属第三高校(現・東海大学付属諏訪高校)時代に3年連続で夏の全国行きを果たした。そんな彼にとって、インターハイとはどんな舞台だったのか。前編では高校入学から1年次のインターハイまでの思い出を聞いた。
インタビュー・文=峯嵜俊太郎
――まずはバスケットを始めたきっかけを教えてください。
バランスキー 小学6年生のときに長野県に引っ越してきて、たまたま仲良くなった子がミニバスに入っていたのがきっかけです。当時は日本語もまだそんなに話せなくて、日本語を学ぶにもいいと思ったし、友達ができるのもいいなと思って始めました。
――中学時代は長野県の長野市立裾花中学校でプレーされていました。
バランスキー 2年生のときは市内大会1回戦負け。でも1年生と3年生のときは北信越大会に出られました。僕自身は1年生のときはほとんど試合にも出ていなくて、ベンチに入って試合の最後のほうに出たり出なかったり。2年生のときにローテーションには入れるようになって、3年生からスタートで出られるようになりました。個人として県選抜とかに選ばれたことはなかったです。
――そんななか、強豪校である東海大三高校に入学するきっかけはなんだったのでしょうか?
バランスキー 僕はスカウトで東海大三に入りました。中学入学のときは163センチだったですけど、卒業の頃は188センチくらいまで身長が伸びて、当時の東海大三は身長が大きい選手が少なかったのも理由かなと。あとは顧問の入野(貴幸)先生が中学校の大会で僕のコート外での行動を見て、『人間としてしっかりしているから、この子は伸びるな』と感じたそうです。そういう経緯で。多分、期待枠という感じでスカウトされたんだと思います(笑)。
――県内屈指の強豪に進学し、環境の変化に戸惑ったのでは?
バランスキー いやぁ、しんどかったです……。入学前から中学の同期や先輩に、「絶対練習がハードすぎて、1カ月もしないうちに帰ってくるよ」って言われていたんですけど、実際にトレーニングの量が僕の中学校とは比べ物にならないくらい激しいものだったので。ただ、「1カ月で帰ってくる」とか言われたことが「やってやる」というモチベーションにもつながりました。それに、トレーニングはやった分だけ自分に帰ってくるというのもわかっていたので、キツイ練習を乗り越えた先には明るい将来があるとずっと思っていましたね。
――ですが、インターハイ初戦の尽誠学園高校との試合では先発出場されています。
バランスキー たまたまインターハイ前日にスタートだった先輩が捻挫してしまって。でも歩けていて、先輩も『全然いける』とは言っていたので、まさか自分がスタメンになるとは思っていませんでした。けれど、試合当日のスタメン発表で先生がいつも通りのスタメンの最後に「ザック」と僕の名前を呼んで。絶対呼ばれないって思っていたので、「えっ? 今俺の名前言った?」みたいな感じで、一瞬思考が止まりました。
――本当に全く予想外だったんですね。
バランスキー はい。「いや待て待て待て」という感じで、一人で勝手に焦りだして、心の準備ができていなかったです。でもすぐに、「すごいチャンスだ、楽しみだな」というふうに気持ちも切り替わりました。それでも、試合が始まるまではすっごく緊張していましたね。人生でトップクラスの緊張だったと思います。
――尽誠学園高校との1回戦は82-81と激闘の末に1点差で勝利しています。バランスキー選手は23分出場して6得点を挙げました。
バランスキー 1回戦は本当にがむしゃらにやっていただけで、全然覚えていないです(笑)。23分も出ていたんですね。
――続く2回戦は晴山ケビン選手が所属する盛岡市立高校と対戦し、122ー91で敗れてしまいました。
バランスキー 2回戦はよく覚えています。当時、ケビンもバスケを始めてまだ数カ月だったと思いますが、すごく能力が高くて。うちの先輩がチェイスダウンブロックをやられるのを見て、「うわ、こいつすげえな。まだバスケ始めて数カ月でこれか!」と思ったのは記憶に残っています。
――ただバランスキー選手は30分の出場で16得点6リバウンド4アシスト3ブロックと1回戦をしのぐ活躍ぶりを見せています。
バランスキー 1回戦よりはいろいろやっていた記憶はあるんですけど、どちらかというと30点差くらいで負けて、全国の壁は高くて厚いなと痛感した印象が強いです。県内では普通に勝てても、全国ではそう簡単にはいかないなと、そのとき初めて肌で感じました。
――この大会では、永吉佑也選手が所属する延岡学園高校が優勝しました。
バランスキー 永吉選手はその体格が印象に残っています。今まで対戦したことのないレベルというか、身長もそうですけどフィジカルの強さも見ているだけで伝わるくらいすごいものがあって。あとは県立北中城高校の岸本隆一選手。たまたま見た試合で40点近く決めていて(編集部注:1回戦市立船橋高校戦で48得点、2回戦明徳義塾戦で40得点)、すごく印象に残りました。
――全国の高いレベルを感じたという感じですか?
バランスキー ほかの高校の試合を見ていると、本当に“ハンパない奴ら”ばかりだなと思いましたね。田舎者だったので、「全国はすごい人が集まる場所だなぁ」みたいな。だからこそ、またウインターカップや次の年のインターハイでここに帰ってきたいと、強く思いました。
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