2022.01.09
2年ぶりのインターハイが北信越地域地区を舞台にまもなく幕を開ける。昨年の大会は新型コロナウイルスの影響により中止を余儀なくされ、今年の高校生プレーヤーのなかには夏の全国を知らない選手も、数多くいるだろう。そこでバスケットボールキングでは、かつてインターハイで激闘を繰り広げたBリーガーにインタビューを実施。当時の思い出とともに、彼らにとってインターハイがどのような舞台だったのかを伺った。
第一弾はアルバルク東京のザック・バランスキー。日本で生まれ、4歳からのアメリカ生活を経て、10歳のときに再来日したバランスキーは、東海大学付属第三高校(現・東海大学付属諏訪高校)時代に3年連続で夏の全国行きを果たした。そんな彼にとって、インターハイとはどんな舞台だったのか。後編では高校2年次、3年次のインターハイの思い出と今なお気にする母校への思いを聞いた。
インタビュー・文=峯嵜俊太郎
――1年次の夏冬と全国を経験して、2年生に進級してからはメンタル的な変化などはありましたか?
バランスキー 1年生のときからインターハイとウインターカップでスタートとして出させてもらったこともあって、2年生からは自身の役割もエースに近いものになりました。すごく責任感のあるポジションだったんですけど、その中でもチームでは自由というか、楽にやらせてもらっていて。一方で、個人的には結果を残さなきゃいけないとすごく感じていました。
――2年次のインターハイは、1回戦で鳥取東高校に105-75で大勝し、バランスキー選手も33得点と活躍しました。
バランスキー 1年前のインターハイで負けてから、個人的にもそうですけど、チームとしても「全国で勝つためにはどうしたらいいか」をみんな考えて。初戦の鳥取東戦はどれだけ自分たちが成長したかを試す、見せられるいい場所だなと思っていました。実際に、試合の入りからすごく良かったというのは覚えています。
――しかし、続く試合で松島良豪選手が所属する沖縄の小禄高校に58-64で惜敗し、前年と同じく2回戦敗退となってしまいました。
バランスキー その試合はすごく覚えていて、次勝てば強豪校と対戦する組み合わせだったんですけど、僕たちは次の試合ばかりを意識して、目の前の相手をあまり見ずに準備していました。結果として沖縄の独特なリズムに試合の入りからやられて、最後までリズムをつかめずにそのまま負けてしまって。みんな本当に呆然として、言葉が出なかったのをすごく覚えています。
――1年前とはまた違う負け方。感じるものも違ったのではないでしょうか?
バランスキー 1年前の負けからみんなで意識を変えてやってきたなかで、力がついている手応えはありました。ただ、逆にちょっと謙虚さを失っていた時期もあって、だからこそ小禄高校に対しての準備を怠って、次の強敵に目を向けてしまった。手応えを感じていたからこそ怠った準備だったのかもしれません。けれど、全国に来ているチームはどこも強いんです。あらためて、そういうことをすごく学んだインターハイだったと思います。
――チーム全体としてもこの年に懸ける思いは強かったのではないでしょうか?
バランスキー 先生もすごく気合が入っていて、インターハイの開催地が沖縄ということもあって、長野県も夏で暑いのに暖房を効かせて練習をやるなんて過酷なことも(笑)。それだけ「今年は絶対やってやる」という気持ちがあって、実際それだけの準備はしてきたという思いもありました。
――実際にチームはインターハイで非常に好調で、1回戦と2回戦を危なげなく突破し、3回戦で当たった藤枝明誠高校も78-69で破って、念願のベスト8入りを果たしました。
バランスキー 藤枝明誠に勝った瞬間は、高校生活のなかで1番素直に喜べた瞬間でした。今でもその試合を見たら鳥肌が立ちますね。
――そして続く準々決勝では能代工業高校と対戦することとなります。
バランスキー 試合が始まる前の整列で「うわ、能代じゃん、絶対やばいじゃん」と伝統のある能代工業の名前を恐れて、試合の入りがすごく悪かったのは覚えています。でももう目標を達成していたので、満足したわけではないですけど、本当に楽しく気楽に僕たちはやっていました。なので、試合が始まったら徐々にリラックスして、みんなのいつも通りのプレーが出て、「俺らも能代に負けてないんだ」という自信は持てました。
――その能代工業戦は81-54と快勝し、準決勝の八王子高校戦を迎えます。
バランスキー この試合も入りは悪くなかったですし、八王子とも前に練習試合をやっていた経験から、勝つ自信がありました。僕たちも波に乗っていて、このまま優勝も夢じゃないというなかで、前半に僕が思いっきり打撲しちゃって。たまたまそれが藤枝明誠戦のときに痛めたところとまったく同じところで。そこからは全然走れなくて……。
――結果として八王子高校に53-66で敗れ、ベスト4で涙を飲むこととなりました。
バランスキー 八王子に負けてしまったのはすごく悔しかったです。ただ、当時の東海大三としては初めて、また長野県勢としても初のベスト4入りをしたことはすごく胸を張れることでもありました。負けたのは悔しいけれど、それより当時は達成感ややり切った感があって、素直に楽しい大会だったといえるものでした。
――好成績を残せた要因は何だと思いますか?
バランスキー どこの高校よりもやるべきことをやってきた一人ひとりの自信や、自分たちのやるべきことを信じて最後まで戦えたことだと思います。みんな仲良くがむしゃらに、最後まで諦めないでやるべきことをやったら結果はついてきました。チームとしては決して有名選手がいたわけではないですけど、誰でもやるべきことをやって、夢を追いかけ続ければ結果はついてくる、というのを自分たちが証明できたんじゃないかなって思います。
――ザック選手にとってインターハイとはどんな舞台ですか?
バランスキー 長野県、そして東海大三の歴史を作れたということでもインターハイが一番記憶に残っていて、一番特別感のある大会だったなと個人的には感じています。また、その年その年の新しいチームが最初に見られる全国大会なので、どれだけ成長した姿を見せられるかという楽しみもあったりするので、僕は毎年インターハイをすごく楽しみにしていました。
――イレギュラーな状況でインターハイへ出場する選手たちへメッセージをお願いします。
バランスキー 変なプレッシャーとかは感じずに、みんなに楽しくやってほしいと思います。去年の大会がなかった分、今まで努力してやってきたことを全部このインターハイに出し切って、ぶつけてほしいです。イレギュラーな1年、2年が続いていると思いますが、そのなかでもバスケットボールができる喜びを感じながら、単純に楽しんで頑張ってほしいと思います。
――母校である東海大諏訪高校も出場します。今でも成績は気にされていますか?
バランスキー 気にしていますね(笑)。入野先生と年齢も近くて、新型コロナウイルスが流行る前はよく遊びに行ったり、先生の家に泊まらせてもらったりというつながりもありましたし、自分を育ててくれた場所でもあるので、今でも地区大会から気にしていて、全国大会も試合が配信されていたら練習の合間で見たりしています。
――母校の後輩たちにどこまで上り詰めてほしいですか?
バランスキー それは優勝してほしいですよ! 僕たちの代の記録を余裕でぶっちぎって超えていってほしいです。
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