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『B MY HERO!』
「勝負所で守りきれなかったのが一番の敗因です。勝負所で決め切った薫英さんが、勝ちですね」
チームを率いる安江満夫コーチは、素直に敗戦を受け止めた。
過去5大会連続でインターハイ決勝進出を果たしていた岐阜女子高校(岐阜県)。しかし、2年ぶりの開催となった「令和3年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会」では、準決勝で姿を消し3位で大会を終えた。
決勝進出をかけた相手は大阪薫英女学院高校(大阪府)。岐阜女子はスピードでかき回す相手に序盤で1−10とされたものの、そこからディフェンスの強度を上げて追走。前半を2点ビハインドで終えると、第3クォーターに逆転し、第4クォーター中盤では51−43とした。
準々決勝までの3試合では、平均50.6失点という堅守を最大の武器に勝ち上がってきた岐阜女子。このまま守り切るかと思われたが…、そうはならなかった。
前から当たってきた大阪薫英のディフェンスに捕まり一気に同点とされると、残り50秒には宮城楽子(3年)に逆転の3ポイントシュートを献上。その後は最後まで得点を奪えず、56−57で試合終了のブザーが鳴った。
「最初に流れを持っていかれてしまって……。後半は持ち直したんですけど、要所でミスが重なってこういう結果になってしまいました」
目を潤ませながら試合を思い返したのは、計20得点をマークした藤澤夢叶(3年)。藤澤は今年、センターのアググア チカ・チュクウ(3年)とともに得点源としてチームを引っ張る攻撃型ガードだ。
この日の前半は3得点止まりだったものの、「後半は絶対自分が決め切ってチームに流れを持ってこようと思い切り替えました」と後半にエンジンがかかった。得意のドライブで相手を切り裂き、守備でもスティールを披露して流れを引き寄せる。
第4クォーターでは、前半当たりがこなかったジャンプショットも冴えわたり、大阪薫英を自らのプレーで引き離した。
しかし、終盤にはボール運びでミスをしてしまう場面もあり、チームを決勝へ導くことはできず。藤澤からは反省の弁ばかりが並ぶ。
「あそこ(第4クォーター)は決められたんですけど、やっぱり前半のシュートを決められたら良かったなと思いました」
「相手のプレスに対しても練習をしてきていたので、自分の対応力のなさと冷静さが足りなかったと感じています」
それでも、藤澤の類まれなスピード、テクニックは際立ったものがあり、大会を通じても対戦したガード陣が次々と置き去りにされていた。安江コーチも、162センチの藤澤へこんな言葉を残す。
「彼女はこういった大舞台での経験、キャリアがない選手なのですが、それでも物怖じしないで戦ってくれました。もっともっと力をつけられると思っていますし、あのサイズでもオリンピックで日本が世界で通用したわけですから、そういう選手に育ってくれればと思っています」
インターハイという大舞台を経験し、岐阜女子のエースガードは、相手にとってもっと厄介な選手になって冬の舞台に帰ってくるのだろう。
写真=伊藤 大允
取材・文=小沼克年