2024.08.09

“悔しい記憶”を刻みリベンジ…東山・佐藤凪「福岡第一には絶対に勝ちたいと思っていた」

インハイ準決勝で最多23得点を挙げた東山の佐藤凪[写真]=佐々木啓次
フリーライター

「朝から去年の崎濱選手にやられたシーンだけをずっとホテルで見て、悔しい気持ちを持ったまま臨みました」

 8月8日、「令和6年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の男子準決勝で福岡第一高校(福岡県)との一戦に臨んだ東山高校(京都府)の佐藤凪(2年)はこのように語った。

 佐藤にとって忘れられないのが昨年のウインターカップ準々決勝。前半を11点リードして終えたものの、後半に福岡第一の反撃に遭い、残り25秒には崎浜秀斗(当時3年)に3ポイントシュートを沈められ逆転負けを喫したのだ(最終スコアは71-74)。

 そのため、佐藤にとって今夏での対戦はリベンジともいえる試合。また「福岡第一には僕がいる時期だけではなく、過去の歴史を見てみても何回か負けてるのを知っていたので、絶対に勝ちたいと思っていた」という思いも抱いていた。

 しかし、迎えた準決勝では出だしにリズムに乗れず苦しむと、適時に3ポイントシュートを決めた福岡第一に導権を握られてしまう。それでも「インターハイの1カ月ほど前に福岡第一と試合をして、そのときは(相手の)プレスに結構はまってしまったのですが、そこからプレスダウンの準備をしてきました。(試合の)最初は緊張して硬くなってしまったのですが、(その後は)練習してきた通りのことが出せました」(佐藤)というように、第2クォーター以降は福岡第一の激しいディフェンスにも慌てることなくジリジリと点差を縮めていく。佐藤も3ポイントシュートやドライブからファウルを受けてのフリースローなど積極果敢な攻めで引っ張った。

東山をけん引する活躍を見せた佐藤凪[写真]=佐々木啓次


 さらには、「前半焦ってしまって判断が悪かったことがあったのですが、後半は正しい判断することができたことも巻き返すことができた要因かなと思います」と、4点ビハインド絵迎えた後半も、佐藤はディフェンスの状況を見ながらドライブや3ポイントシュートなどと確実にシュートを沈めていき、チームの逆転に加勢。シュートを決めた後のシャウトする姿など勝ちへの思いを前面に出して仲間を鼓舞した。

 福岡第一とのタフなゲームに運動量豊富に動きまわった佐藤。第4クォーター残り約5分には自らがシュートを決めた直後に両足がつり、コートを後をすることに。だが、佐藤が抜けた間に小野寺星夢(3年)がバスケットカウントの3ポイントシュートを沈めるなど3年生たちが奮闘。コートサイドでケアを終えて佐藤がベンチに戻ってきたときには10点以上の差がついていた。その後も3年生たちが役割をしっかりと果たした東山は68-52で勝利。2年連続の決勝進出を決めた。

 試合終盤、ベンチから戦況を見守った佐藤は遠くから見ていても分かるほど涙を流していた。試合後、その涙の理由を「チームを引っ張る立場として試合に出なきゃいけないのに途中でケガという形で抜けてしまって本当に悔しくて」と、佐藤は語った。それと同時に「3年生を中心に最後まで頑張って勝ち切ってくれたので、3年生をはじめチームメートに感謝したいです」と、仲間への感謝の言葉も口にした。

 終わってみれば両チーム最多となる23得点を挙げた佐藤。昨年も1年生ながらインターハイではスターターとして出場し、決勝の舞台に立った。しかし、決勝では日本航空高校(山梨県)に敗れて準優勝。それだけに、翌日に控える美濃加茂高校(岐阜県)との決勝戦に向けて、「(昨年は)日本航空の留学生選手を気にし過ぎてしまったというのが反省であるので、美濃加茂も強い相手で留学生選手のところもキーポイントになるとは思いますが、自分たちのバスケットを貫き通すというのをテーマにして頑張っていければと思います」と、気持ちを新たにしていた。

2年連続決勝進出を果たした東山…インハイ初優勝なるか[写真]=佐々木啓次


取材・文=田島早苗