2024.08.13

全国常連の名門校も“選手にとっては初出場”…インハイ4強の昭和学院はさらなる成長誓う

インハイ準決勝まで勝ち上がった昭和学院。中央は山下絵伶奈[写真]=佐々木啓次
フリーライター

■ 固さが見られた初戦「緊張のあまり…」

「顔がこわばってるというか、やっぱり慣れてないというのがありましたね」

 8月4日から9日にかけて熱戦が繰り広げられた「令和6年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」。初戦となる2回戦の聖カタリナ学園高校(愛媛県)との試合をこう振り返ったのは昭和学院高校(千葉県)の鈴木親光コーチだ。

 試合は、動きに硬さが見られた昭和学院が第1クォーターから3点のビハインドを負う展開に。それでも第2クォーターにはプレーに好不調の波がありながらも逆転に成功すると、落ち着きを取り戻した後半には分厚い攻撃を披露し、一気に点差を広げた(92-60)。

 試合後、「緊張のあまり何をしているのか分からないような感じで前半が進んでいったと思います」と、鈴木コーチは語った。無理もないだろう。「自分たちは全国大会が初めてなので、それに圧倒されて出だしが全然うまくいきませんでした」と、キャプテンの月松蒼(3年)が言うように、チームとしては55回の出場を誇るが、インターハイ出場は実に3年ぶり。ここ2年はインターハイだけでなくウインターカップでの出場も果たせずにいたため、選手にとっては初の全国大会だったのだ。

昭和学院のキャプテンを務める月松蒼[写真]=佐々木啓次


 ただ、聖カタリナ学園戦の後半から「中外のプレーができてきて、やっと落ち着いたかなと思います」(月松)と、どこからでも点の取れる強みを生かした昭和学院。九州チャンピオンの精華女子高校(福岡県)との3回戦でも3ポイントシュート5本を含む23得点を挙げた前田珠涼(3年)を筆頭に、コート上の5人がバランス良く攻めて前半を12点リードすると、最後は精華女子の猛追をしのぎ、75-73で競り勝った。続く北信越覇者の鵬学園高校(石川県)との準々決勝でも総合力の高さを見せて第1クォーター終盤から加速すると、第4クォーターで山下笑伶奈(3年)がファウルアウトと苦しい展開となりながら、82-80で勝利をものにした。

 これでチームの目標であるベスト4入りを果たした昭和学院。インターハイ2連覇中の京都精華学園高校(京都府)との準決勝では、最終的に70-75で敗れたものの前半は4点リード。逆転された後半も第3クォーターの終盤まで僅差の戦いを演じるなど、前回覇者に一歩も引くことはなかった。

■ 準決勝で見えたチームの課題

昭和学院の鈴木コーチと選手たち[写真]=佐々木啓次


 今年の昭和学院は、全国大会初出場の選手たちとはいえ、6月の関東大会では準優勝。181センチの山下、175センチの石井杏奈(2年)といったU17女子日本代表でもある2人がインサイドで強さを発揮し、内外とオールラウンドな攻めを見せる月松に、鋭いドライブから攻撃を仕掛ける前田、そしてアウトサイドシュートを持ち味とするガードの藤松柚乃(2年)と、個々の能力が高い選手がスターターを担う。そのため、インターハイの前評判も決して低くはなかった。それだけに、実力をしっかりと出してチームの目標を達成したともいえる。

 準決勝後、鈴木コーチは「今日も最後は単発(な攻撃)だったのですが、少しチームとして何かをやろうという雰囲気が見えてきたのが最近。6月の関東大会の頃より少しは我慢できるようになったと思います。ただ、今日(準決勝)の第3クォーターのように自分でどうにかしようという気持ちがあるのはいいのですが、我慢しきれなくなったときに少し協力をしてほしかったですね」と、6月以降のチームの成長と、それを踏まえた上での課題を語った。

 今回のインターハイを経て、チームは8月31日からはじまる「U18日清食品トップリーグ2024」の出場が決まった。約2カ月間にわたって行われる全国トップチームとの対戦は、チームにとって、また選手個々にとっても大きな経験となるだろう。

インハイ銅メダルを首にかける昭和学院のメンバー[写真]=佐々木啓次


 9月からは過去2年間、悔し涙を逃したウインターカップ千葉県予選も始まる。「県大会を勝って、冬の全国大会ではコツコツコツコツ、一戦一戦を大切に戦ってベスト4、そして優勝したいと思います」と山下。月松も「全国に出られるのは当たり前ではないということをこの2年間で経験したので、県大会でもしっかり点差をつけて勝ち切って、ウインターカップでも結果を残せるようにしたいです」と力を込めた。

 福岡の地で『昭和学院健在』のインパクトはしっかりと残した。自信にもつながった夏の戦いをプラスに、『最強の初出場軍団』は冬のさらなる飛躍を誓った。

取材・文=田島早苗