2022.06.16

“世界進出”へ絶好の機会到来…川島悠翔擁する日本代表はU17W杯への切符を手にできるか/U16アジア選手権

あと1勝でU17ワールドカップ出場が決まる日本代表[写真]=fiba.com
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 カタール・ドーハで開催中のFIBA U16アジア選手権。この大会でベスト4に進出すると、7月2日からスペインで開催されるU17ワールドカップの出場権が与えられる。すでに他の大陸では予選が終了しており、アジア予選は開催が1年延期しての実施となっている。そのため、この大会には実質U17世代が出場しており、高校3年生の早生まれまでが資格対象となっている。春先にアンダーカテゴリーの指揮官として就任した、スペイン人のマルチネス アレハンドロヘッドコーチのもとで迎える初の国際大会だ。
 
 今大会は世界に進出する絶好の機会である。新型コロナウイルスの影響により、常にアジア上位に君臨する中国と、ダークホース的存在のチャイニーズ・タイペイが辞退。そんななかで日本は、2014年以来となる二度目のU17ワールドカップへの切符をもぎ取る決意で臨んでいる。

2014年は八村塁前田悟牧隼利らを擁するチームが史上初のU17W杯出場を果たした[写真]=fiba.com


 前回大会は新型コロナウイルス以前に、アジア内での開催地と会期が決まらずに大会が2年に渡って流れてしまった経緯がある。そのため、現在の大学1、2年世代はU15世代から選考合宿を重ねて強化を進めてきたにもかかわらず、アンダーカテゴリーの国際大会(U16、U18アジア選手権、U17ワールドカップ)の経験を積めずに悔しい思いをした。

 かろうじて、昨年にラトビアで開催されたU19ワールドカップには出場することができたが、それは新型コロナウイルスの影響でアジア予選(U18アジア選手権)が免除となり、FIBAランキング順に出場権を得たもので(中国とニュージーランドは辞退)、実戦経験の場は極めて少なかった。今回のように、アジアの中で出場権を勝ち取る試合ができることは、ユース世代が成長していくうえで貴重な経験になる。さまざまなプレースタイルを持つアジアのライバルと対決し、世界舞台につなげるべく奮闘しているのが、現在開催中のU16アジア選手権という大会だ。

 現在はグループラウンドが終了。日本はC組にてクウェートとフィリピンに2連勝し、グループ1位で準々決勝進出を決めた。初戦のクウェート戦では激しいディフェンスからの速攻で98点の大量得点。失点を33点に抑える好調な滑り出しを見せた。

 勝負となったのは2戦目のフィリピン戦。これに負ければ、16日に準々決勝進出決定戦に回ってカザフスタンと戦うばかりか、17日の準々決勝の相手がA組1位のオーストラリアとなるため、何が何でも勝利を手にしたい相手だった。

 試合はフィリピンに猛攻されながらも、チームディフェンスで奮闘して73-67で勝利。川島悠翔(福岡大学附属大濠高校2年)が前半だけで21得点、トータルで26得点18リバウンド3アシストの大活躍。追い上げられた終盤には、パワーフォワードからシューティングガードへとコンバートした小川瑛次郎(羽黒高校2年)の連続3ポイントで突き放した(3ポイント 8本中4本成功)。中学時代より体重を10キロ以上減らして切れが出てきた小川は、コート上でのシュート力のみならず、ムードメーカーとしても存在感を出している。

3ポイントで存在感を示した小川[写真]=fiba.com


 また、速い展開で流れを作った石口直(東海大学付属諏訪高校3年)、フィリピン戦ではファウルが込んでしまったがフィジカルの強さを見せる内藤耀悠レバンガ北海道U18)、最年少の高校1年生ながら204センチのサイズを持つ渡辺伶音(福岡大学附属大濠高校1年)も32分のプレータイムを得て16得点9リバウンドで体を張り、試合をこなすごとにチームとして機能してきている。

 17日の準々決勝はインド対インドネシアの勝者(16日決定)と対戦。これに勝って4強に進出できればU17ワールドカップ出場となるだけに、全員でつかみにいく戦いになる。そして世界の舞台へのあと1勝に留まらず、その先の戦いへとチャレンジしたい。

■KEY PLAYER/ PF #10 川島悠翔

エースとしてチームをけん引する川島[写真]=fiba.com


 U16代表をけん引しているのは、2メートルのサイズを持つ川島悠翔だ。勝負のフィリピン戦では、ボール運びから力強いドライブ、ミスマッチを生かしたポストプレーと大車輪の活躍で勝利に導いた。その姿は、昨年出場したU19ワールドカップの頃と比べると見違えるほど。当時は高校1年生の最年少ということもあり、自分のすべきことが見つけられず、先輩たちについていくだけだった。さらには、インサイドの選手として日本一をつかんだ昨年末のウインターカップ時と比べても大きな成長のあとが見られた。

「NBA選手になるのが目標」という川島にとって、アジアを勝ち抜いて世界に出ることがどれだけ重要かわかっているからこそ、エースの自覚のもと、日本を背負って戦う大会になっている。

文=小永吉陽子

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