2019.10.08

【いきいき茨城ゆめ国体】再び同じ道を歩み始めた愛知の粟津雪乃と平野実月(成年女子)

国体を優勝して金メダルをかざす成年女子・愛知の粟津雪乃(左)と平野実月(右)
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

 第74回国民体育大会、成年女子で8年ぶりに優勝を飾った愛知。決勝ではチーム最多の16得点を挙げたのが粟津雪乃だ。

中高時代と変わらずリバウンドに果敢に飛び込んでいた愛知・粟津雪乃

 粟津は今年4月に愛知学泉大学のバスケット部に入学した新入生。だが、中学や高校のバスケットファンなら知るところ、朝明中学校(三重県)では全国中学校大会で準優勝。進学した桜花学園高校では2年生からスターターとして活躍し、3年生の時には3冠獲得にも大きく貢献した選手だ。

 しかし、高校卒業後に入団したWリーグのデンソーアイリスでは怪我もあり、所属した2シーズンで試合に出場したのは先シーズンのみ。試合数も4試合に留まった。

 そしてデンソーを退団――。

 その時のことを粟津は、「怪我から復帰した時に、『自分はもう付いていけないな』ということを最初に思ってしまったんです。それでバスケットは辞めて違うことをしようと考えました」と振り返る。

 悩んだ末に出した引退。だが、そんな粟津に「一緒にバスケットをやらない」と声を掛けたのが同級生であり、中学、高校のチームメイトでもある平野実月だった。

 平野もまた、名門・桜花学園高校で2年生の頃からメンバー入りを果たしたポイントガード。出場時間は決して多いとは言えなかったが、進学した愛知学泉大学では昨年、2年生ながらスターターとして「第70回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)」では準優勝に輝いた。今回の国体でも決勝で10得点、7リバウンドを記録している。

愛知学泉大学の3年生でもある平野実月はチームの顔ともいえる選手の一人

 平野からの誘いを受けた粟津は、「本当に辞めようと思っていた時に声を掛けてもらって。体が壊れても最後に一緒にやりたいなと思ったのが平野でした」と、バスケットを続けることを決意。ちょうど「昔から栄養士になりたいという思いがあり、短期大学にはスポーツ栄養の科目があったので、栄養士の資格も取れてバスケットも続けられる」ことも大きかったようだ。

「栄養士の資格は二の次として、ここで辞めるのはもったいない、もう一度、一緒に日本一を取りに行きたいと思いました」とは平野。

 そんな平野は粟津との久しぶりのバスケットに「プレー中、目が合う時があって。それはやっぱりずっと一緒にやってきているからだと思います。リバウンドもそうだし、ここぞという時にポストで体を張ってくれる。やる時はやってくれるので感謝しています」と言う。

 対する粟津も「パスは変わらないなと思います。自分の一番取りやすいところにパスをしてくれるから、そのままシュートまで持っていけるし、大事な場面でディフェンスをしてくれるので、こっちも後ろから後押ししやすいです」と語る。

 遡ること6年前、2013年に静岡で行われた全国中学校大会では、大接戦となった準決勝に朝明中学は競り勝つのだが、その時、熱戦に終止符を打ったのは平野からの巧みなパスとそこに絶妙なタイミングで合わせた粟津のシュートだった。

 中学時代のような“あうんの呼吸”から繰り出されるプレーは、愛知学泉大学にとってもプラスになるはず。

「今できること、やるべきことをやって絶対に日本一を取ります」(平野)

「自分ができるのはリバウンド。しっかり前を走ってリバウンドを取って優勝に貢献したいです」(粟津)

 引き寄せられるように日本一という頂へ再び一緒に歩み始めた粟津と平野。そんな2人にとって、今年最大の目標は、12月に控えるインカレだ。

粟津と平野の息のあったプレーは今後さらに磨きがかかっていくだろう

取材・文・写真=田島早苗

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