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『B MY HERO!』
2012年にENEOSに入団してからは(入団当時はJX)、新型コロナウイルスでプレーオフが中止になった2019-20シーズンを除いて、すべてのシーズンでファイナルを経験している圧倒的キャリアを誇る。
今シーズン、宮澤の加入についてはチームの誰もが大きな力になったと語っている。
「チャンピオンを何度も経験しているのでメンタル面で自信を持っている」(町田瑠唯)「シュートだけでなく、ディフェンスやリバウンドでも頑張ってくれる」(篠崎澪)「試合だけでなく練習からリバウンドを取る姿勢を見せてくれて、その姿にみんなが勉強になっている」(BTテーブスHC)という声があがるほど、信頼されているプレーヤーだ。
宮澤自身は新しい環境に慣れるまでに少し時間を要したことと、年明けにひざを痛めたこともあり、なかなか調子が上がらなかったが、プレーオフに向けてはしっかりと照準を合わせてきた。こうしたピーキングのうまさを含め、宮澤のすべての言動が、ファイナルから6シーズン離れていたチームにとっては心強い存在だったに違いない。
そんな豊富なキャリアを持つ宮澤は、ファイナル1戦目に痛恨の逆転負けを食らったあと、どのように立て直しを図ろうとしたのだろうか。2戦先勝方式のプレーオフで重要なのは、敗れた後には気持ちを切り替えて次戦に臨むことである。連戦ゆえに落ち込んだ気持ちを引きずっていては、試合に影響してしまうからだ。
1戦目の敗戦後、司令塔の町田も「明日、切り替えてやります」と自分に言い聞かせるようにコメントしていた。逆転負けをどう受け止めて2戦目に臨んだのか。ファイナルを終えた後、宮澤にその気持ちを聞くことができた。
「今日(2戦目)の負けより、昨日(1戦目)の負けのほうが悔しかったです。昨日の試合が終わってメンタルでのダメージが強くて、本当に悔しくて、あんなに悔しかった試合はいつぶりだろうというくらい悔しくて、クソーッって(壁を)殴りたいくらい本当に悔しかったです。絶対に勝てると思っていた勝ちゲームを落としてしまい、富士通の弱さを痛感したゲームでした。
でもまだ終わっていないので次に切り替えなきゃと思い、でも切り替えようといっても、自分自身どう切り替えていいのかわからない状態でした。それで試合(映像)を見て振り返り、見たくはなかったですけど、ダメなところも全部見て受け入れました。改善点が見えたので、その悔しい気持ちを明日にぶつけてやるという気持ちになることができて、昨日の夜の時点で切り替えることができました。みんなもモヤモヤしているだろうと思い、『朝に会う時は気持ちを切り替えた状態で会おう』とチームのラインにメッセージしました」
ENEOSとのセミファイナルで接触して鼻骨骨折をしたため、ファイナルではフェイスガードをつけて奮闘した。富士通に移籍してからはポストアップをして得点を取ることも多くなり、ディフェンスでは1戦目で負傷した内尾聡菜の分もカバーリングの範囲を広くして踏ん張り、リバウンドではファイナル2試合でチーム一となる平均8本をもぎ取るなど、ENEOS時代よりも幅広いプレーでオールラウンダーぶりを発揮。得点、ディフェンス、リバウンド、ビッグゲームを戦う強いメンタル――富士通にとって宮澤の存在は欠かすことのできない大黒柱になっていた。
新天地の富士通でチームをチャンピオンに導くことは、自身のキャリアにとって大きなチャレンジである。今シーズンは信頼する仲間とファイナルのステージに挑み、チャンピオンになるための階段を上っていく経験を積んだ。今までにないほどの悔しさを痛感しながらも、冷静に振り返って最後はこう語った。
「このチームが好きで、このメンバーが好きで、楽しくてもっとやりたい思いでしたが、2連敗で終わってしまってすごく残念です。シーズンが終わったのでヘッドダウンすると思うけど、一度リフレッシュしてまた次につなげられるように、もう一回、前を向きたいと思います」
文=小永吉陽子