2023.02.17

「もう“下っ端”ではない」…ENEOS入団4年目でブレイクする星杏璃「吉田さんのようなPGになりたい」

ENEOSで先発に定着し、WリーグU25のメンバー入りを果たした星杏璃 [写真]=W LEAGUE
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 2月11日、12日の2日間にわたって国立代々木競技場 第二体育館で行われた「Wリーグ SUPERGAMES ~4GENERATIONS~」は、26歳以上で構成されたW LEAGUE UNITED O26が優勝を飾った。

 渡嘉敷来夢(ENEOSサンフラワーズ)や町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)を擁するWリーグO26と決勝を戦ったW LEAGUE UNITED U25は、馬瓜ステファニー山本麻衣(ともにトヨタ自動車アンテロープス)、吉田舞衣(シャンソン化粧品シャンソンVマジック)、東藤なな子(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)、赤穂ひまわり(デンソーアイリス)が先発出場。「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2022」に出場するなど日本代表でも活躍する5人に加え、所属チームで台頭する若きホープが代わる代わるコートに立った。22回のリーグ優勝を誇るENEOSで今シーズンから主軸を担い、10連覇を達成した「第89回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」では大会ベスト5に選出された22歳の星杏璃もその1人だ。

 昭和学院高校卒業後の2019年にWリーグ入りした星だが、キャリア1年目のレギュラーシーズンは12試合でわずか61分のプレータイム。2年目は174分、3年目も197分と出場機会が限られていた。ところが、2022-23シーズンは開幕4試合目で初の先発に抜擢されると、その後もスターティングファイブに名を連ね、1試合平均25.9分で12.1得点2.9リバウンド2.2アシストをマーク。チームをけん引してきた岡本彩也花が復帰後もプレータイムを減らすことなく、ENEOSで必要不可欠な存在になっている。

「ベンチで試合を見ながら思うことというか、言葉にできない悔しさを感じて過ごしていました。これまでの3年間、いつでも試合に出られる準備をしていましたけど、4年目になって、もう“下っ端”ではないなと。活躍して、チームに貢献しないといけないというちょっとしたプレッシャーがあって。自分に掛けるプレッシャーが、自分を変えさせたと思っています」

 ベンチから試合を見守っていた3年間は、渡嘉敷のプレーに注視していたという。「渡嘉敷さんにどう合わせるのか。そこのコンビネーションを見ていました。ここがうまくいかないと、試合に出させてもらえないなと。3年間はそこを見つつ、自分のプレーを出すことを意識していました」と明かし、ポイントガードとしてエースを活かすために、自主練でパスの練習にも取り組んできたようだ。

 Wリーグでの活躍が認められた結果、WリーグU25のメンバー入り。選出を聞いた時は驚いたようだが、「このメンバーと一緒にプレーできることを考えると、楽しみで仕方なかったです」。山本や東藤のような世代別から日本代表を経験してきた選手と異なり、星には代表歴がない。「同じチームというのがすごい楽しくて。本当に楽しい2日間を過ごしたと思っています」と話したように、他チームに所属する選手との共演は新鮮だったようだが、“即席チーム”でも難なく自身のプレーを披露する選手たちを見て感じることもあった。

充実した2日間を過ごしたようだ [写真]=W LEAGUE

「ぶっつけ本番みたいな試合だったので、プレーを合わせるのが難しいと実感しました。でも、パッと集まってチームを組まれた時、自分のプレーをできるのが一流の選手。そこはまた新しい課題だと思います」

 先述した東藤は、星と同じ2000年生まれ。チーム内最年少選手として「東京2020オリンピック競技大会」に出場し、ワールドカップ2022でも全5試合で先発を担うなど、日本代表の若きエースとして期待される。星も日本代表選出を「最終目標」として掲げているものの、「日本代表に入るために頑張るわけではないと思っています。自分にできることを一生懸命やった結果、代表に選ばれたらいいなと思っています。『代表に入るぞ』という考えはそこまでないですね」と自身の見解を示した。

 星に与えられたコートネーム“アン”の由来は、チームのHPによると「『安』心してチームを任せられるPG、安定したボール運びが出来るPGになるようにとタクさん(※渡嘉敷のコートネーム)がつけてくれました」。ENEOSは大神雄子(現トヨタ自動車ヘッドコーチ)さんをはじめ、岡本や現日本代表の宮崎早織など名ガードを輩出してきたが、星が憧れるのは吉田亜沙美さんだ。

「吉田さんと在籍が被っていた時、全然違うなと思っていました。チームを作るポイントガードが必要。今必要とされている得点を取りにいく部分を伸ばしつつ、チームを作る吉田さんのようなポイントガードになりたいと思っています」

 2シーズン連続でトヨタ自動車に明け渡している“女王”の座を取り返すために、ブレイクする170センチの司令塔がその力になれるか。ENEOSのレギュラーシーズンは25日に再開する。

飛躍を遂げる若き司令塔の挑戦は続く [写真]=W LEAGUE

文=酒井伸