Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
「もう少し早く達成したかったというのはあるのですが、チームのみんなにお祝いをしてもらい、ファンの方にも声を掛けてもらったので、長くやってきて、Wリーグでの記録を一つ残せたことはうれしいなと思っています」
3月8日の東京羽田ヴィッキーズ戦。この試合で自身『Wリーグ通算2000得点』を達成したプレステージ・インターナショナルアランマーレ(以下アランマーレ秋田)の森ムチャは、試合後にゆっくりとした口調で記録達成の感想を語った。
記録達成まであと4点として臨んだこの一戦。森がコートに立ったのは第1クォーター残り2分27秒のときで、そこから約1分半後にはフリースローを得たが、ここは1本の成功に留まり、記録まであと『3』として第1クォーターを終える。続く第2クォーターでは得点シーンがなく、そのまま記録達成は後半へと持ち越された。
迎えた後半、第3クォーターの途中で再びコートに入り、残り6分59秒に森らしいターンシュートを沈める。これであと1点。すると残り2分13秒にはリバウンドシュートをねじ込み、見事記録達成となった。その後も得点を重ね、終わってみれば約19分の出場で10得点10リバウンドをマーク。しかし、チームは序盤からリードを許す展開の中、点差を詰める場面はあったものの、東京羽田に15本の3ポイントシュートを決められてしまい69-88で敗れた。なお、この試合では東京羽田の津村ゆり子も通算1000得点を記録している。
アランマーレ秋田への移籍に際しては、熱心に誘ってくれた小嶋裕二三ヘッドコーチの存在が大きかったようで、「最終的には小嶋さんがいるというのは大きかったです。小嶋さんとは(U24日本代表として出場した2011年の)ジョーンズカップで一緒になったぐらいで、相手チームの監督という存在でした。これも縁だなと感じます」と、森は言う。
一方の小嶋ヘッドコーチも、森について「若いチームにはベテラン選手の経験値がどうしても必要だということで彼女に声をかけました。プレーはもちろんですが、彼女の経験値を他の選手に伝えること。それと実際にスキルも(若手選手に)落とし込んでくれているので、本当にありがたいですし、貢献度はとても大きいです」と、評する。それこそ、同じセンターのニアン ンディ クンバに関しては、「クンバが試合中にボールを取れるようになってシュートも決められるようになったのはムチャのおかげで、ムチャが練習後にクンバを指導してくれた成果なんです」とも教えてくれた。
森自身もプレーヤー兼コーチという役割を粋に感じており、「自分自身の集大成としてもう少しバスケットをしたいという思いと、次につなげて(若手選手を)育てることもできるとなったらここが一番で、いろいろな意味で達成できることがたくさんあったので、(アランマーレ秋田に)決めました。選手としての気持ちが強くなってしまうこともあってバランスが難しいのですが、コーチ兼選手ということで、選手の自分と新しくコーチ目線で見る自分とがいて、そのことで自分自身のプレーも深まりました」と、語る。
3月16、17日の三菱電機コアラーズとの2連戦はホームゲームであり、今シーズンの最終戦となる。「やることは変わらないので、いつも通りではあるのですが、オフェンスでもディフェンスでももっと精度を高めて、自分たちの持っているものを個人としてもチームとしても出していきたいです。経験や自信をつけられる、次につながる試合にしたいです」と、意気込んだ森。現在、Wリーグ出場試合数が299試合のため、残る地元開催の2試合のうち1試合でも出場すれば、またしても森は通算300試合出場という素晴らしい記録を達成する。
昨シーズンのデンソー在籍時と比べて、今シーズンはプレータイムが約6、7倍に増え、得点も3月9日時点で155点を稼いでいる。
トヨタ自動車で1793点、デンソーで60点。そしてアランマーレで150点を挙げて2000点には到達した。この2000点にはバスケットに真摯に向き合ってきた森のこれまでの努力と、新天地での飛躍を誓った覚悟が込められている。
取材・文=田島早苗