2024.02.19

継続されるバスケ女子日本代表のレガシーと走り勝つスタイルで五輪切符獲得

「死の組」を戦い抜いてパリへの切符を手に入れた女子日本代表 [写真]=fiba.basketball
フリーライター

 中国、ハンガリー、ブラジル、ベルギーと4会場に分かれて2月8日〜11日(現地時間)の期間で行われた「FIBA女子オリンピック世界最終予選(OQT)」。各グループ4チームでリーグ戦を行い上位3チームがパリオリンピックの出場権を獲得となったが、日本はハンガリー会場にてスペイン、カナダ、そして地元ハンガリーと出場権を争った。

 大会前にFIBA(国際バスケットボール連盟)が『死の組』と表したように、日本の属するグループは予想に違わぬ混戦に。日本も初戦でスペインに勝利したものの、翌日のハンガリー戦には惜敗。2戦目を終えた時点で全チームが1勝1敗となり、最終の3戦目の結果次第では、どのチームも1位にも4位にもなる可能性があった。それでも日本は3戦目でカナダとの接戦を制して白星を奪取、最終的には2勝1敗でグループ1位となり、見事にパリオリンピック出場を決めた。

3ポイントシュートという武器の生かしか方

『走り勝つシューター軍団』をコンセプトに「勝てるところで勝つ、持っているもので最高の戦い方をする」(恩塚亨ヘッドコーチ)と挑んだ日本は、初戦のスペイン戦では持ち味の3ポイントシュートが炸裂する。中でもキャプテンの林咲希(富士通レッドウェーブ)が序盤に幸先よく2本を沈めて流れを引き寄せると、山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)、馬瓜エブリン、髙田真希(ともにデンソーアイリス)らも続き、終わってみれば15本の3ポイントシュートを沈めた。

3ポイントシュートを中心としたオフェンスを見せた日本代表 [写真]=fiba.basketball


 また、この試合では2ポイントシュートの確率でも72.7パーセントという数字を残した。これについて恩塚HCは「(それまでは)難しいペイントショットを打ち過ぎていました。フィニッシュスキルを高めないといけないというのはありますが、(シュートを)頑張っただけで終わってしまうのはもったいない。勝てるシュートは勝ちにいくけれど、五分以下のシュートは無理して攻める必要ないということでボールを共有した結果、(スペイン戦は)3ポイントシュートが増えましたし、2ポイントシュートの確率もその結果だと思います」と、コメント。大会前の練習試合でも2ポイントシュートの確率が75パーセント近かったとのことで、効果的な2ポイントシュートでの得点は「チームの一つの成長だと思います」と、手応えを感じていた。

 さらに、日本の武器である3ポイントシュートを警戒されて思うように打つことができなかったカナダ戦ではガードの宮崎早織、山本らのドライブが決まったが、これも「実は狙いどおり」。指揮官は、その理由を次のように説明する。

「相手は私たちの3ポイントシュートを消すためにスイッチングディフェンスをしてきます。そのスイッチングディフェンスに対してインサイド(ペイントエリア)を狙うというのは描いていた道筋の一つ。シューター軍団というコンセプトで走り勝つには、ドライブができることも入っていて、相手は日本3ポイントシュートを消さないといけないけれど、消そうと思うとドライブされるということがジレンマになります。そこを選手たちが的確に判断してプレーできていたので素晴らしかったです」

 そのカナダ戦、日本は前の2試合と同様に機動力を前面に出して40分間を戦い抜いた。それにより、体力が削られ大事な場面でミスを起こしたのはカナダの方だった。リバウンドやディフェンスでの貢献が大きかった赤穂ひまわり(デンソー)や髙田など、コートに立った選手個々が役割を全う。3試合を通して、まさに“走り勝つ”を体現してのオリンピック出場権獲得だったといえる。

 もちろん、課題もある。髙田も「高さに対しての対策は自分達の課題ではあると感じました。オリンピックまであと半年もないので、そういった中で課題をクリアしていかないとオリンピックは難しくなってくると思います」という。一方で、OQTを通して「そういった課題も収穫ですし、チームで自信を得られる試合ができたと思います。勝って自信を得られたことで次につなげることができて良かったです」とも振り返った。

 これで女子日本代表として初の3大会連続のオリンピック出場。パリでも走り勝つシューター軍団というコンセプトは変えずに、「勝つために何ができるのか。勝って恩返しをしたいです」と、指揮官は夏を見据えた。

「みんなのために」受け継がれる女子日本代表のレガシー

「(カナダ戦は3ポイントシュートを打つ機会が少なかったが)焦らずに、みんながいるから大丈夫だと思っていました」(林)

「リバウンドは、みんなでカバーしながらできたと思います」(山本)

「自分のシュートが入らなくても『みんながいる』という気持ちを持って戦うことができました」(馬瓜ステファニー/モビスター・エストゥディアンテス[スペイン])

 3試合を通して、選手たちの口からは多く、『みんな』といった言葉が聞かれた。

 アナリストやアシスタントコーチを歴任し、15年近く女子日本代表に携わっている恩塚HCは「女子日本代表は、チームのカルチャーというか『チームのために、みんなのために』という思いが本当強くあります。だから自分のことよりも、チームのこと。そんな思いを持てる選手たちなんです。(カナダとの)試合前に伝えたのは、みんなを信じられるからこそ、コート上で自分の体力考えずに走れる、戦える、ぶつかれる。冷静にプレーできる。私がやらなきゃとならなくていいよねと。私はそこが勝つカギになると思っていましたし、それをまさに選手たちはやってくれたと思っています」という。

 多くの国際大会に10代から出場し、リオオリンピックではキャプテンを務め、今シーズンから選手として復帰した吉田亜沙美(アイシンウィングス)も4年ぶりに戻ってきた日本代表について同じようなことを語っていた。

「日本代表に選ばれた選手たちは本当に仲間のためにチームのために戦える選手たち。(日本代表とは)そういうメンタルを持ったチームで、私自身久しぶりに戻ってきましたが、それが継続されていることがうれしかったです。自分たちのバスケットを信じて、苦しい時間帯も我慢して、お互いを信じて戦うことができました」

吉田亜沙美は自身のバッシュへ一緒に戦ってきた仲間の背番号を書き込んで試合に臨んだ [写真]=fiba.basketball


 2年前、9位という順位だけでなく、チームの強みを発揮し切れないまま終わった「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2022」。その大会を経験している髙田は、ワールドカップからの成長を問われると、「自分たちを信じることです、なかなか結果に結びつかない時期もありましたが、そういったことを含めて自分たちの力を信じてもう一回やり通したことはすごく大きかったと思います。選手の中でも、コミュニケーションを取ることが増えていきました。そうやってコミュニケーションを自分たちで取っていくというのが、このチームの一つの特長かもしれません」と、力強く発した。

 チームのため、仲間のためにという思いを持ちながら、疑問や課題が出ればすぐに声を掛け合って確認する。練習からスタッフも含めてそうしたコミュニケーションを重ね、細かいところまで突き詰めていった選手たち。スペインリーグで戦っている馬瓜ステファニーを除く11名は、自チームに戻り2月23日から始まるWリーグに戦いの場を移す。ともに一つの目標に向かった仲間は、これから最高のライバルとして切磋琢磨していく。

文=田島早苗

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