2024.09.02
OG2人にとってパリ2024オリンピックに出場する女子代表はチームメートや後輩たち。だからこそ知っているロスター12名の素顔を紹介してもらった。
取材・文=田島早苗
――まずは最年長の吉田亜沙美選手からお願いします。
栗原 どこからパスが来るかわからない。リュウさん(吉田)がボールを持っているときはボールから目を切ったら怒られます(笑)。でも、目が一瞬でも合うと動きの中で『いける』と思ったときに必ずボールが来る。試合をしながら『この人すごいな』と思っていました。普段は優しいし、コート外では人見知り。オンとオフのギャップが大きいです。
三好 コート上とは違って普段はシャイですね。リオデジャネイロオリンピックのとき、私は3試合で合計3分ぐらいしか出ていなかったのですが、3ポイントシュートを1本決めることができて。そのときにLINEですごく褒めてくれました。そうやって後輩にも気を遣い、周りを見てくれます。そこから年齢と経験を重ね、この前代表戦のインタビューで神の領域みたいな内容がありました。仏様のような感じです(笑)。
栗原 仏様やね、うちらからしたら。
三好 すべてを経験で埋められる人だと思います。
三好 語弊があるかもしれませんが、自らの手を汚さずにイタズラをする(笑)。ただ、そういう一面があるから、私たち年下からすると壁がなく友達に近い感覚でいられる。もちろん、コートではリツさん(髙田)にボールを預ければ大丈夫という信頼感は大きかったです。
三好 口数が多いわけではないけれど、自分のやりたいことへの意思はしっかり持っているよね。だからあれだけのパスができる。ルイさんは『見ていないのに何で私がほしいと思ったときにパスがくるの?』というのがある。
栗原 パスだけでなく、私はシュートの感覚が良くないときに「パスくれたのにごめん、シュート決められへんくて」って言ったら、「ソウさん(栗原)ちょっとシュート流れてるかも」ってアドバイスくれて。すごい見てるなというのはそのときに感じた。
三好 私も同じで、メンタルの影響もあってシュートが入ってなかった時期に「パスくれたのにごめん」って言ったら、「いや、サン(三好)は入ると分かっているからパスし続けるよ」と言ってくれて。そうやって気持ちも乗せてくれるガードです。
――次は宮澤夕貴選手。
三好 アース(宮澤)も芯がしっかりしている選手。普段は…少し不思議ちゃんなところが(笑)。
栗原 わかる。めっちゃ女子だよね。あと、バスケットで怒られていてもすごくうれしそうだし走るのが好きで朝にトレッドミルで走っているときもニヤニヤしている。
三好 普段はチームで一番というぐらい女子だけど、確かに怒られてもサバサバしている感じはあるね。
栗原 強靭なハートの持ち主。すごく前向きで怒られても自分のために言ってもらってると素直に受け止めることができている選手よね。
三好 落ち着いてるよね、人に興味がないんです(笑)。
栗原 この代ってサン(三好)も含めてアース、モエコ(長岡萌映子/ENEOSサンフラワーズ)とキャラが濃い子ばっかりやのに、その中に急に入っても平然と過ごしている。
三好 ナコ(本橋)は自分のことを客観的に見るのが上手かもしれない。(当時ヘッドコーチの)トム(ホーバス)さんのバスケットにフィットして“ナコの時代”みたいなころ、天狗になってもおかしくないのにすごく冷静で。おごりもなく客観的でした。それと、東京オリンピック前に大ケガをしましたが、(復帰に向けた)わずかな期間の中、彼女のトレーニング向かう姿勢はもうすさまじかった。普通の人ではやれないようなことを毎日やって、それでもつらい顔を見せなかったので尊敬しかないです。
――貴重なお話しですね。続いては林咲希キャプテンについてお願いします。
三好 真面目。
栗原 真面目で努力している印象。休むこと知ってる?という感じだね?
三好 『林咲希=バスケ』
栗原 常に何かしている。
三好 常にバスケのこと考えて常に体育館にいて、真面目。
栗原 東京オリンピック前にシュートが全然入らなかった時期に相談が来て。それまで、そんなことはなかったので、これはもう最終段階まで来てるなと思いました。
――アドバイスをしたわけですね。
栗原 はい。私だけでなくていろいろな人に聞いたとは思うのですが、頼ってきてくれたことに少しだけ驚きつつ、うれしかったですね。そのころはプレッシャーもあったからだと思いますが、今は『経験』があるので、そういったことはもうないと思います。
三好 そのころは悩んでいるなというのは感じていました。だけど私は同じポジションでしたが、私からするとやっぱりトムさんが信頼しているのはキキ(林)なんですよ。キキに復活してほしいという気持ちがあったので、とにかくキキの調子が上がるまでは私がどうかするからといった感じでしたね。
――林選手にそれは直接言った?
三好 はい。「トムさんが信頼しているのはキキなんだから、今は私が調子いいからシュート入れとくからオリンピック本番になってキキが戻ってきてくれたらいいんだよ」と言いました。
――三好さんを表す素敵な話ですね。
三好 いやでも、本当に戻ってきてくれるのがキキですから。
――続いて宮崎早織選手。
栗原 とにかくおしゃべり(笑)。私、早織の姉と仲が良くて。
――学年では栗原さんの1つ年下にあたる優子さんですね(東京成徳大学高校、白鷗大学、山形銀行などでプレー)。
栗原 はい。それで優子から私のことを変な人って聞いていたようで、イジられました(笑)。そういったことを言ってきました。本当に口から生まれてきたというぐらい良くしゃべる。
三好 ずっとしゃべってるよね。
栗原 でも、メンタルは意外と…。
三好 結構気にするし、全く話さないときもあるね。元気ではあるけれど、周りの人から見えているほど楽観的ではなくて真面目ですごく慎重。そういう意外な一面を持っている。でも、自分が明るく引っ張るキャラということも分かっていると思う。
栗原 そうだね、明るく元気にチームを引っ張ってるよね。ただ、エブリンのことを「普段は静かですよ」と言っているけれど、いや、早織もそういうとこあるよねとは思う。だからあの2人は気が合うのかも。
栗原 うん、エブリンというキャラを持っているよね。
三好 でも、普段の練習前では普通だし。
栗原 真面目だよね。
三好 真面目で、暗いときだってある。だけど基本は人を喜ばせるのが大好き。サプライズやみんなで何かをするような企画とかを考えてくれる。だからこそ、『エブリン』というものに徹底しているのかなと。「パリでは吠えまくる」と言っているけれど、それをやることによってチームが勢いづくことも分かっているからやるんだと思う。
栗原 それと、とっても妹思い。
三好 あれだけ仲の良い姉妹は、私は初めて見た。
三好 「エブリンより楽観的だけど繊細」という表現はすごく合っているかもしれない。
――今は活躍の場をスペインリーグに移して奮闘しています。
栗原 自分の目標はしっかり持っている選手で、賢く計画的なところがありますね。忘れ物多いですけど(笑)。
三好 確かに。そういう抜けてるところがたくさんあるけれど、賢さがあるよね。
――続いて赤穂ひまわり選手。
栗原 私たぶん、互いに心を打ち明けらへんまま終わっちゃったかも。
三好 大丈夫。ヒマ(赤穂)はね最近大人になったからか、久しぶりに会ってもしゃべってくれるけど、以前は合宿終わりに「お疲れさまです!」という感じで解散したのに、5日間後ぐらいに次の合宿で会うと、最初は「あ、こんにちは…」みたいな。毎回『はじめまして』に戻る。
栗原 たった5日で?
三好 そう、5日間でそうなる。でも、ユラに対して冷静にぼそっとツッコミ入れて、それが面白い。
栗原 普段はあまり自分から言わへんけど、たくさんのことを考えているよね。
三好 プレーヤーとしてすごいよね。
栗原 あれはすごい。
三好 ディフェンスもできるし何でもできる。あんな人いない。
栗原 ポテンシャルが高い。
三好 今はセカンドメンバーだけど、それはスタメンでも出られるけれど、セカンドメンバーでもメンタルとして安定してやれるからだと思う。あの若さですごいプレーヤー。
栗原 リバウンドも反応が早いから、どっから飛んできた? みたいな。いつもいいところにいる。感覚的なところはあると思うけど、運動能力も高いよね。
三好 普段もそうですし、プレーでも献身的ですね。地味という言い方が正しいかは分かりませんが、ディフェンスや合わせのプレー、リバウンドなど、バスケットはシュートを決める人が目立つけれど、ナナコはそういう地道なところをしっかりやってくれる。本当に一生懸命に取り組む選手なので、私は誰か一人に感情移入はしないですが、報われてほしいなと思って見ていました。それこそOQT(2月に開催されたオリンピック予選)ではメンバーから外れてしまったけれど、すごく頑張って結果も残してオリンピックのメンバーに入ったことは良かったなと思います。
三好 かわいい系だけど12人の中で一番メンタル強いと思う。
栗原 『自分はこうあるべき』という芯が強い気がするね。
三好 それに負けず嫌い。
栗原 「ハハハ」って笑っている中でも、『いや、絶対負けないし』という気持ちの強さは人一倍持ってるよね。
三好 一緒にプレーしてていてもボールをほしい、『私にちょうだい』みたいな雰囲気を感じた。でも、それだけ自信持ってやってるし、実際に結果も出すから。
栗原 常にメラメラしているよね。やられたら絶対にやり返すタイプ。あとは自分の中で許せると許せないとのラインが決まっているから、絶対にここまで自分を持っていくっていう設定はしてる感じはありますね。
三好 東京オリンピック以降、メディアでの扱われ方としても金メダルといった好成績が期待されています。もちろん、チームのみんなもそこを狙っていると思うのですが、その分プレッシャーというのは大きいはず。あれだけ笑顔でやっているけど、心の中はプレッシャーで苦しいと思うので、金メダルを目指す中でも、とにかく楽しんでほしいなと思います。誰かのためにとか、日本のバスケット盛り上げるためにメダルが必要とかそういう考えも分かりますが、まずは自分たちのために頑張ってほしいです。
――これで以上になります。栗原さん、三好さんありがとうございました。
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