2019.05.13

【対談】期待値の高い20歳の馬瓜ステファニーと赤穂ひまわり 「今は付いていくのに必死です」

ともに偉大な姉を持ち、日本代表に名を連ねる20歳の赤穂と馬瓜(左から)[写真]=田島早苗
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

ベルギーとの「バスケットボール女子日本代表国際強化試合2019 三井不動産カップ」(5月31日、6月2日)に臨むため、5月6日から3次合宿を実施した女子日本代表。同合宿の参加メンバー18名から、本戦ではさらに12~15名に絞られるため、依然、サバイバルは続いている。その中で先輩たちに負けじと奮闘するのが20歳の馬瓜ステファニー(トヨタ自動車アンテロープス)と赤穂ひまわり(デンソーアイリス)だ。

2人はともに中学時代から全国大会で活躍し、その後はアンダーカテゴリーの日本代表として国際大会にも多く出場。プレーのみならず、それぞれの姉がすでに中高で全国トップレベルに位置していたこともあり、“妹たちも”と注目を浴び、その期待に応えるかのように着実に成長を遂げてきた。180センチを超える高さがありながら、外角シュートにドライブにとオールラウンドなプレーを見せる馬瓜と赤穂。そろって女子日本代表候補に名を連ねた今年、どのような思いで代表活動に取り組んでいるのか。コートを離れると少しマイペースな2人の話は、時に緩くもあり、時に意思の強さを感じさせるものとなった。

インタビュー・写真・文=田島早苗

――代表合宿も3次となりました。今年はどのような思いで臨んでいますか?
赤穂 昨年から日本代表としていろいろ経験させてもらっているので、今年は2年目、昨年の経験を活かしたいと思っています。トムさん(ホーバス・ヘッドコーチ)のバスケットも昨年よりは分かっているはずなので、最初からしっかりやっていこうという気持ちです。

――現時点で手応えはありますか?
赤穂 手応えは……ないです。
馬瓜 溜めたな~(笑)。
赤穂 ないというか、昨年からいろんなポジションをやらせてもらっていて、今は4番なのですが、当たりとか、ぶつかるのに必死です。
馬瓜 私は、昨年はアジア競技大会の日本代表だったので、トムさんに直接指導をしてもらうことはあまりありませんでした。でも、今回呼んでもらい、まだ分からないことや、私もいろんなポジションをやらせてもらっていることもあって、付いていけていないところが多いです。でも、トムさんのバスケットを理解して、少しでもチームに貢献できるようにしたいと思っています。

――ホーバスHCのバスケットにはまだまだ慣れていないのですね。
馬瓜 頭が付いていかないです。(頭が付いてきてなおかつ)体でも覚えたら“こっちのもの”なのですが、そうなった!と思ったら、また新しいことが出てくるので(笑)。追い付いていないので、私も必死です。

ホーバスHCの要求には「頭が付いていかない」という馬瓜[写真]=田島早苗

――昨年からの経験がある赤穂選手からアドバイスはありますか?
馬瓜 あー、ほしい。
赤穂 頭が付いてかないからといって考え過ぎると……終わる。
馬瓜 “終わる”(笑)。考え過ぎちゃいけないってことだよね。
赤穂 そう。考え過ぎると自分のバスケットが分からなくなってできなくなるから、トムさんのバスケットをやりつつ……
馬瓜 自分のバスケットもやると。
赤穂 そう。でも……、それが一番難しい(笑)!
馬瓜 間違いない(笑)。

――話は変わりますが、お互いが存在を知ったのは中学生の時ですか?
赤穂 1年生の時、対戦したよね。
馬瓜 全中(全国中学校バスケットボール大会)かな。
赤穂 全中で対戦したのは2年生だね。
馬瓜 そうだ。1年の時はジュニアオールスターで対戦して、その時は(馬瓜のいる)愛知が負けて。
赤穂 でも2年の時は、全中で対戦して(赤穂のいるチームが)負けて、ジュニアオールスターも(赤穂のいる)千葉が負けて……。

――当時の印象は覚えていますか?
赤穂 (身長が)大きい、というイメージです。
馬瓜 あの時は私の方が大きかったからね。私も覚えてますよ。お姉さん(赤穂さくら/デンソー)のことを知っていたので、その妹という感じで。自分たちの代、あの頃から大きい選手が多かったんですよ。
赤穂 未和ちゃんとかね(栗林/富士通レッドウェーブ)。
馬瓜 大きい人ってだいたいすぐに存在を知るじゃないですか。ひまも、その中の1人でした。

――確認ですが、お互いに何と呼んでいるのですか?
馬瓜 『ひま』です。
赤穂 『ステちゃん』です。
馬瓜 最近、練習では『ステ』って呼んでくれるんですよ。
赤穂 前は練習でもどこでもステちゃん。でも長いから。
馬瓜 あ、そういう理由か。でも、密かに嬉しいです。9年目でやっと“ちゃん”が取れたって。私も最初は『ひまちゃん』でしたが、いつからか“ちゃん”がなくなっていました。

――中学から一緒に歩んできている感じですよね。
赤穂 ずっと一緒にいるという感じだよね。
馬瓜 ね、長いよね。なんだかんだ(日本代表以外では)同じチームだったことはないけれど、同じチームでやっていた人より長く一緒にいる。
赤穂 高校3年間だけじゃないもんね。
馬瓜 そうだよね。え、9年目だ。長いね。

――現在、互いにプレーヤーとしてどう見ていますか?
馬瓜 デンソーに入ってスタートを任されているし、日本代表でも自分を出せているなと感じます。中高の時はそこが課題と言われていた時期もあったと思うけど、元々すごい選手だし、今は自由にプレーできているという印象です。
赤穂 一番すごいなと思うのは、「めっちゃ手が長い」。これはず~っと、昔から思っています(笑)。ステちゃんは、私とは逆で自分を出すのが昔からうまい。どんな場所に行っても自分のやるべきプレーや得意なプレーをしっかり出して、アピールもできているので、すごいなと思います。

Wリーグでは新人王を獲得した経歴を持つ[写真]=田島早苗

――お互いの活躍は気になるものですか?
馬瓜 気になるというよりは、「あ、ひま何点取ってる、イェーイ(拍手する動作)」って。
赤穂 私も「ステちゃん、こんな点とった⁉」みたいな感じです。
馬瓜 ひまが頑張っているから私も頑張ろうって。
赤穂 そういう感じだよね

――ちなみに、相手の性格はどう見ていますか?
赤穂 こう見えて意外と人見知り。見た感じは社交的で自分から行きそうだけど、振られないと話もしないし、自分からは行かないタイプです。
馬瓜 私、店員さん呼べないんですよ(笑)。(テーブルに)ピンポンと鳴らす呼び出しボタンを置いている店ならいいんですけど、それが無い店にはなるべく行きたくない……。だから、定員さんが「注文が決まったらお呼び下さい」と言った時は、その場で決めます。ひまは、周りから大人しいとかしゃべらないとか言われているけれど、最初だけ。意外とズバッと言う。でも、真面目だから、ひまが「やろう」と言ったら、こっちも「やるか!」となる。だけど抜けてるところは抜けていて、かわいいです(笑)。

――さて、今の日本代表の中では2人とも若手です。
馬瓜 いや、でも先輩たちがすごいので。
赤穂 すご過ぎるんですよ。
馬瓜 超越しているというか。それに付いていくので必死です。
赤穂 本当そうだよね。細かいところがすごいしっかりしているというか、一つひとつのプレーが正確。
馬瓜 そうなんだよね。だから先輩たちと同じことやっていても、そうならない。
赤穂 そうそう! 「なんでそこでフリーになってるの」とかね。
馬瓜 だから見て勉強するしかないなと思っています。
赤穂 必死です。
馬瓜 若いから何かやってやろうとか、そんな余裕は今はない……(笑)。

――でも、期待はしていますよ。
赤穂 やらなきゃいけないというのは分かってるんです。
馬瓜 そうだよね、選んでもらったことに対しての責任はあるよね。
赤穂 『若手』とかは関係なく、(26人の中の)一選手という気持ちでいます。
馬瓜 ここにいる以上、やるしかないよね。

――年齢は関係ないということですね。では、最後に今後の日本代表活動での意気込みをお願いします。
赤穂 まずは3次合宿で自分の力を発揮すること。トムさんに求められていることをしっかりやりつつ、自分の得意なプレーやできるプレーを表現してアピールする。選考に残るのが第一の目標です。
馬瓜 トムさんの言っていることを理解して、今はまだそんな余裕はないかもしれないけど、自分のできること、目の前のことを一つひとつやり、その結果、メンバーに選ばれたらいいなと思っています。

今後も2人の“妹”の活躍に期待したい[写真]=田島早苗

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