2020.04.15

女子日本代表の髙田真希が社長就任「バスケをもっと広める活動がしたい」

自身で会社を立ち上げた高田真希 ©2020 TRUE HOPE
バスケットボールキング編集部

「自分の経験をもっと子供たちに伝えたい」と起業

起業はしたが、今後もデンソーの一員としてプレーを続ける [写真]=伊藤 大充 


 4月6日、Wリーグデンソーアイリス所属で、女子日本代表でもある髙田真希が会社を設立、新たなプロジェクトを立ち上げた。社名は『株式会社TRUE HOPE』、「今まで培ってきた経験を次世代の子供たちに伝えて行く機会をどんどん増やしていきたいと想い…」と自身のツイッターで設立の理由を語っている。同8日にはプロジェクトの第1弾として、『髙田真希女子アスリート社長室』というオンラインサロンを開設した。

 今回、高田本人にプロジェクトを起こした理由、今後の展開を聞く機会を得た。会社を作ってまでこのプロジェクトをなぜスタートさせたのかを聞いた。

「選手としていろんな経験をしてきましたが、これを自分だけではなく次世代の子供たちに伝えていきたいという気持ちが強くなりました。そして自分に何ができるのかを考えた時に子供たちやファンの方々と触れ合える機会が少ないと感じていて。その機会を増やすために自分がすぐ動けるように会社を作りました。クリニックなどは体育館さえあればいつでもできるので機会をどんどん増やしたいという思いがあって、会社に任せるだけでなく、自分から動いたのです」

 自身、無名の中学時代から高校バスケ界の名門、桜花学園高校に進学して、そこからリオオリンピックに出場するなど、様々なことを経験してきた。それだけに、バスケを広めたい思いやバスケ界への恩返しをしたいという思いがどんどん膨らんでいったという。

「日本でもバスケが盛り上がってきていますが、どうしても男子のほうに注目が行ってしまう。女子のほうはまだまだなのかなと選手の立場から見てもそれを感じています。ただ国際大会に出場して結果を出し続けているのは確かなので、このようなことを皆さんに知っていただきたいですし、バスケ自体もどんどん広めていきたいなという思いが本当に強くなりました」

 では、実際にどのようなことを行なっていくのか。

「主にはイベント業です。全国各地でバスケ教室を開いて、子供たちに現役の日本代表である私が直接リアルな情報を伝えたいと思っています。悩んでいることがあればそれを解決するヒントを与えられるかもしれませんし、バスケの楽しさや魅力を伝えられれば」

 さらに対象は子供だけでなく、“大人”のファンに向けてのものを考えているという。

「個人的なファンミーティングも開きたいと思っています。自分のことをもっと知ってもらったり、『あの場面、どんな気持ちでプレーしていたのですか?』など、普段なかなか聞けないこともイベントを通して聞いてもらえればと。またオンラインサロンもやろうと思っています。自分のSNSの公開アカウントで説明するのは難しいので、ここなら文章や動画を付け加えながら悩み等解決するヒントを与えていけるのではないでしょうか。そこにメリットはあるかなと思います。お金をいただいている以上の対価を出せるように作っています」と準備にぬかりはないようだ。

アスリートのセカンドライフも視野に入れた活動

女子代表の頼れるキャプテンが他の競技のアスリートも牽引するつもりだ [写真]=fiba.com


 本来であれば、この時期、東京2020オリンピックを直前に控えて、バスケットボールをはじめとするスポーツが注目を集めていたに違いない。そのような気運を起爆剤にして、プロジェクトを立ち上げようとしたのではないか。

 そのように聞くと、「それもあります。オリンピックで盛り上がるのは間違いないと思いまし、自分もそこで結果を出せばこのプロジェクトにもいい流れができたとも言えます。1年延びてしまいましたが、これを良い準備期間だとしてもっともっと注目されるためにこの1年活動していきたいです」と前向きにとらえている。

 そう思えるのには理由がある。

「今は現役なので私自身がメインとなりますが、自分が引退したあとはその時の現役の選手をそういう場に立ってもらう仕事もしたいと思っています。これはバスケに限らず他の競技の選手にもやっていきたい。その競技の魅力を伝えたり、選手を知っていただけるようなファンミーティングもやっていきたいですね」と、現役引退後の髙田自身の設計図が出来ているからなのだ。

「今の現役選手の中にももっと広める活動がしたいと思っている人もいると思うので、そのために自分でどんどん動いていきたいです。セカンドキャリアで引退した後にも競技に関われる環境を作りたい。引退してからでは遅いので、現役の時からやっていこうと思っています」

 今後の活動について、現段階では特にスポンサーは決まっていないという。これに関して「活動をしながら、スポンサー探しも同時に進めたいと思います」と語る。「実際に自分でやり始めて、体育館を借りるだけでもとてもお金がかかると実感しました。これをスポンサーなしでやるとしたらとても高い参加費にしないとできません。それだけにスポンサーさんへの営業も私がやっていきたいと思います。スポンサーさんは大事ですし、私の思いを理解していただける方と一緒にやっていければ」とここでも自分で動くつもりだ。

 バスケットボールの選手としての活動はこれまで同様デンソーの所属選手という立ち位置に変化はない。髙田の活動は副業として会社に認められている。「柔軟に対応していただきました」と、感謝の言葉を忘れなかった。

「思いつきから始まって、それを形にしている段階です」と語る髙田。元々好奇心旺盛な性格が自身の挑戦を後押ししているのだろう。

「始めてみてわかることもたくさんあるので、大変ですけどやりがいも感じています」

 何もかもが一からのスタート、すべてが勉強ではあるが、それすら今の髙田にとっては原動力となっているようだ。

文・取材=入江美紀雄

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