2024.01.29

現役復帰即“日本代表入り”の吉田亜沙美が見据えるパリ五輪予選「今の自分ができることを」

OQTに臨む女子日本代表候補に名を連ねている吉田亜沙美[写真]=伊藤大允
フリーライター

■「バランスを考えながら試合に出ないといけない」

 パリ2024オリンピックの出場権を懸けた「FIBA女子オリンピック世界最終予選(OQT)」(2月8日~11日/ハンガリー)に挑む女子日本代表が1月26日に公開練習を行なった。

 練習後、「しんどいですよ(笑)」と冗談まじりに語ったのはチーム最年長36歳の吉田亜沙美(アイシンウィングス)。

 ただ、今シーズンより現役復帰を果たした吉田は、復帰間もない頃は出場時間が短かったものの、12月の皇后杯・準々決勝では約12分、そして1月3日のWリーグの試合では約17分の出場。試合を重ねるごとにコンディションを上げ、それに伴いプレータイムも伸ばしてきた。もちろん、公開練習でも本人の言葉とは裏腹に「しんどい」と感じさせないほどのキレのある動きを見せている。

「1月2、3日のWリーグの試合、特に2戦目は結構試合に出られましたし、そのときも(試合中に)きついと思った時間もあったけれど、終わったときに『あ、こんなに出てたんだ』という感覚がありました。徐々に出場時間は増えていますね」と、吉田自身もコンディションに関しては一定の手応えを感じている様子。一方で「でも日本代表だと、よりディフェンスもタフになるし、接触のところも含めて、今は男子大学生が一緒に練習してくれていますが、そこでの体力はまだまだ。ゲーム形式の練習では疲れてきたときにパスが弱くなっていると感じています」と、当面の課題も挙げた。

「自分がやるときと他の選手がやるときとのバランスを考えながら試合に出ないといけないと思っています。それは、大事なところでミスを起こしてしまうようなことを絶対にしたくないから」と語る吉田は、だからこそ、先に挙げたパスの強度など細かいところをさらに突き詰めたいと考えているのだろう。

 体力や筋力といった点ではむろん全盛期とは異なる。だが、吉田にはキャリアがあり、戦況を読む力や優れた状況判断、さらには流れを一気に引き寄せるパスやシュートなども持ち合わせる。それは1月14日に高崎アリーナで行われた紅白戦でも実証済だ。

■「昔の自分とは切り離して」

豊富な経験を武器に司令塔としての活躍が期待される吉田亜沙美[写真]=伊藤大允


 最終メンバーの12名に入れば、4年前のOQT以来の日本代表での試合となる。ただ、このときは開催国枠で東京オリンピックの出場権を得ていたため、出場権を勝ち取りに行くOQTとなると2012年のロンドン・オリンピック予選にまで遡る。※2016年リオデジャネイロ・オリンピックは、当時アジア選手権の優勝国に出場権が与えられたため、アジアで優勝していた日本はOQTに出場していない。

 ロンドン・オリンピックのOQTは12チームが一同に介し、その中で上位5チームに出場権が与えられる形式だったが、日本は5位決定戦でカナダに敗れて、あと一歩のところでオリンピック出場を逃した。現在の日本代表でその悔しさを味わったのは髙田真希(デンソーアイリス)と吉田のみ。これまで様々な経験をしてきた吉田に改めてOQTを戦う上での大事なことを聞くと、このように返ってきた。

「自分たちのバスケットを40分間どれだけ遂行できるか。選手たちが自分の役割を全うし、目標に向かっていけるかも大事だと思います。(OQT初戦の)スペインは格上だとは思いますが、ひるむことなく戦う。2戦目は開催国のハンガリーとの対戦でアウェイになりますが、初戦のスペイン戦で自分たちのバスケットができれば、良いバスケットができるのではないかと思います」

 OQTに出場すれば、オリンピックを懸けた大一番が吉田の日本代表復帰戦となるのだが、「プレッシャーはそこまでないですね」と、本人は言う。加えて「自チーム(アイシン)で与えられている役割とほぼ一緒で、流れを変えることやメインのポイントガードをどれだけ休ませられるかということにフォーカスできています。日本代表にいられることがありがたいと思っていて、だからこそ結果を残さないといけないという気持ちは強いのですが、気負わずに。昔の自分とは切り離して、今の自分ができることを精一杯やるということに集中しています」と、発した。

 体力も与えられた役割も12年前とは違う。だが、「限られた時間で自分のパフォーマンスをどれだけ発揮できるかということにこだわっていきたい」と語るベテランは、昔と変わらず、日本の勝利のために全力を尽くす。

取材・文=田島早苗

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