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『B MY HERO!』
ライターの三上太氏による、強豪チームが築かれる過程についての著書『高校バスケは頭脳が9割』が12月20日からAmazonや全国書店にて発売されている。
高校バスケ界の名将、高橋仁監督(元山形市立商業高校)、佐藤久夫監督(明成高校)、色摩拓也監督(尽誠学園高校)、安江満夫監督(岐阜女子高校)、近藤義行高校(市立船橋高校)に密着。その中から色摩監督の一部を紹介する。
渡邊雄太(ジョージ・ワシントン大学:アメリカNCAAディビジョンⅠに所属する大学)という日本の未来を背負うスター選手を擁していたことも、全国大会の決勝戦に進めたひとつの要因だろう。しかしそれだけではない。例えば2014年のウインターカップでは、超高校級のスコアラー、角野亮伍(サザンニューハンプシャー大学:アメリカNCAAディビジョンⅡに所属する大学)を擁する静岡・藤枝明誠高校を破ってベスト8入り、2016年の同大会では2回戦で敗れてはいるものの、名将・佐藤監督が率いる明成高校を破っている。
藤枝明誠を破った2014年を色摩監督が振り返る。
「あのときのチームは全国で、もし“チーム力指数”みたいなものがあったとしたら、500番とかそれより下やと思うんです」
東大阪出身の色摩監督は、当然のことながら関西弁を使う。しかしその語り口調はつねに穏やかで、丁寧だ。
全国で500番かそれ以下の尽誠学園に対して、当時の藤枝明誠は全国でも上位20番目までに入るであろう実力を持っていた。
「でも出た結果はベスト8やから、選手たちには『ウチは5~8番目のチームなんや』と言いました。普通にやらせたら能力指数どおりの結果になるかもしれんけど、じゃあ普通にやらさんかったらええということです。準優勝が2回あってのベスト8。それがどれだけすごいのか。藤枝明誠のゲームなんていうのは、全国で準優勝した2回よりも、考え方によってはもっといいゲームだったと思うし、間違いなくウチの最もよかったゲームのベスト5に入ってきます」
すでに渡邊は卒業している。189センチ、187センチの選手はいたが、まだ下級生で、渡邊クラスとはもちろん言い難い。それでも全国のベスト8にまで勝ち進んだのは選手たちの頑張りもあるけれども、色摩監督が相手に「普通にやらせない」よう仕向けたことも挙げられる。
「子供らにははっきり言わんときのほうが多いんです。でもその藤枝明誠のときは、あまりにも藤枝明誠が強いと思ったのではっきり言ったんです。『こういう戦術でいこう。でも戦術どおりにならないことが絶対にある。それも含めてゲームプランだから』と。あまりにも角野くんの1対1を止められなかったり、チームで頑張って守るけれどもリバウンドを取られて、押し込まれたり……『ポイントガード以外190センチ近い選手たちがそろっていた藤枝明誠だからこそ、出てくるかもしれない問題もあると思う。でもどうなるかわからない状態さえもゲームプランで、どうなるかわからない状態の“わからない”こともベンチは考えてゲームに入るから、自信持ってやれ』と。自信は持ってやらせてやろうと考えていました。そこで出てきたものに対しては、僕も頑張って知識をつけてきていましたし、何が出るかはわからないけど、対応はできるだろうなと思っていたんです」
聞いているそばから筆者の頭が汗をかき始める。同じ年齢だが、この監督はいろいろなことに思考を巡らせながら選手を育て、チームをつくり、試合に臨んでいる。自分の頭脳でついていけるのか。そう不安になりながらも、やはり3人目の取材対象者として色摩監督を選んだのは間違いなかったと安心する。
チーム力指数は決して全国の上位ではないというチームが、どのようにして全国上位の結果を残せるのか。練習見学をさせていただく2日間ですべてを知ることはできないだろう。しかし少しでもその本質に迫ることができたらいい。そう考えて色摩監督と尽誠学園・男子バスケット部の5月に密着した。