2020.09.02

【車いすバスケリレーインタビュー 男子Vol.7】寺内一真「U23代表での活躍を自信に目指す4年後のパリ」

2017年の男子U23世界選手権では4強入りに貢献した寺内一真[写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。2011年よりパラリンピック競技を中心に、国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドン、16年リオ、18年平昌、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

インタビューした選手に「現在成長著しい選手」「ライバルだと思っている同世代選手」「ベテランから見て将来が楽しみだと思っている若手」「若手から見て憧れているベテラン」などを指名してもらい、リレー方式で掲載するこの企画。車いすバスケットボール選手の個性的なパーソナリティーに迫っていく。

文・写真=斎藤寿子

 Vol.6で登場した山崎泰誠(秋田県WBC)が同年代のライバルとして目標としているのが、今年22歳となる寺内一真(富山WBC)。ともに国内の車いすバスケットボール界では高さを強みとしているセンタープレーヤーだ。寺内は、2017年の男子U23世界選手権ではチーム一の高さを強みにに主力としてプレーし、ベスト4進出の立役者の一人として活躍した。もちろん目標とする次のステージは、A代表。24年パリパラリンピックで世界と互角に戦うために寺内は今、新たな武器を身につけようとしている。

劇的逆転勝利でつかんだ大きな自信

 小学生の時には少年野球チームに所属するなど、もともと体を動かすことが好きで得意だった寺内。車いすバスケットボールを本格的に始めたのは、中学2年生の時だった。続けていくうちに、いつのまにかのめりこみ、いつしか日本代表になることが目標となっていった。

 その背景には、同じチームの先輩、宮島徹也(富山WBC)の存在があった。

「僕がチームに入った時から、テツさん(宮島)は日本代表候補として活躍していました。テツさんのそんな姿がかっこよくて、自分も目指したいなと思うようになったんです」

 初めて“代表”のユニフォームに袖を通したのは、16年11月、高校2年生の時だった。翌年の男子U23世界選手権のアジアオセアニア予選(1月)、そして本戦(6月)に向けた候補選手の一人として合宿に招へいされ、合宿後には北九州チャンピオンズカップに出場した。

 チームとしても、寺内自身にとっても、初めての国際大会。日本は、バスケ大国のアメリカ、翌年のU23世界選手権優勝のイギリス、同3位のオーストラリアという強豪3カ国を相手に4戦全勝で優勝した。

 なかでも寺内にとって、最も強く印象に残っているのは、予選リーグ最終戦のオーストラリア戦だ。同大会はオーバーエイジを採用しており、日本も3人の選手が招集されていた。予選リーグの第1、2戦は、国際大会の経験豊富なオーバーエイジの選手たちが、安定感あるプレーでチームに落ち着きをもたらし、日本は連勝を飾った。

 しかし、最終戦で京谷和幸HC(現在は日本代表HCを兼任)はある決断を下した。初めてオーバーエイジを使わずに、U23代表候補だけで挑むことにしたのだ。いわゆる寺内たち“17年世代”の真のデビュー戦でもあった。

 その大事な試合で、寺内は30分近くのプレータイムを得た。前半は途中出場だったが、後半はスタメンに抜擢され、20分間フル出場。チーム一の長身であるがゆえに厳しくマークされ、得点源となることはできなかったが、それでもインサイドにアタックすることによってディフェンスを引き寄せ、味方にアウトサイドのシュートがしやすいシチュエーションを作り出していた。

 日本は最大11点のビハインドを負いながらも粘り続け、4Qの残り1分でついに逆転。さらに残り4秒で、寺内が“ダメ押し”となる得点を挙げ、勝利を確実なものとした。第1クォーターは6-13とダブルスコア以上の差で始まった試合を、“17年世代”は最後の最後にひっくり返し、劇的な逆転勝利を挙げた。

 その試合で寺内は、大きな自信をつかんだという。チームの勝利に貢献できたことが、何よりうれしかった。チームも勢いに乗り、翌日の決勝でもイギリスを破り、優勝。翌年のU23世界選手権に向けて大きな一歩を踏み出した。

劇的な逆転勝ちで第一歩を踏み出した“17年世代”。寺内の得点で勝利を確実にした[写真]=斎藤寿子

目指すは先輩2人の“ハイブリッド型”プレーヤー

 同世代では一足早くA代表入りし、16年リオデジャネイロパラリンピックに出場した鳥海連志をはじめ、古澤拓也、川原凜、緋田高大、岩井孝義、赤石竜我と、U23世界選手権での活躍をきっかけに、現在では多くの“17年世代”がA代表入りを果たした。そんな中、寺内はまだA代表の候補合宿に呼ばれていない。

「もっとうまくなりたい。もっと強くなりたい。そのためには……」

 この2、3年、そればかりを考え、模索してきた。そして寺内が出した答えは「変わらなければいけない」だった。

これまでは高さを生かし、インサイドでのプレーをメインとしてきた。だが、世界では寺内は決して高くはない。U23世界選手権では、その現実を突き付けられた。そこで、プレーの幅を広げようと考えたのだ。

 目指しているのは、チームの先輩である宮島と、ジュニア時代からの先輩で世代が近い村上直広(伊丹スーパーフェニックス)の“ハイブリッド”だ。

「テツさんは視野が広くて判断力が速いので、自分自身が得点するだけでなく、しっかりとゲームコントロールできるんです。そして村上選手は、とにかくアウトサイドからのシュートの確率が半端ない。それに国内でもそれほど高さがないのに、インサイドでもパワフルなプレーができる。そんな2人に近付きたいと思っています」

 今年、寺内は本格的なトレーニングマシンを購入し、自宅でもしっかりと体を鍛えられるような環境を整えた。1年前はMAX50キロだったベンチプレスは、今では80キロとなった。車いすを漕ぐスピードもシュートの飛距離も伸び、3ポイントの確率も上がってきている。

 A代表として日の丸を背負う“その日”に向けて、寺内は今、黙々とトレーニングの日々を送っている。

司令塔役もポイントゲッターもこなすプレーヤーを目指している[写真]=斎藤寿子

(Vol.8では、寺内選手が注目している選手をご紹介します!)

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