2018.03.17
2月19日(現地時間18日)にロサンゼルスのステープルズ・センターで行われる「NBAオールスターゲーム2018」。先月、オールスターの出場選手ならびにロースターが発表され、開催が刻一刻と近づいてきている。バスケットボールキングでは、67回目となるオールスター出場選手紹介に加え、オールスターにまつわる記録や大盛り上がりしたイベント、印象的なゲームなども順次お届けしていく。
今回は、オールスターゲーム史上唯一となる2度の延長戦へともつれ込んだ2003年を紹介したい。1980年代半ばからスーパースターとして活躍したマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)にとってのラストオールスターは、思わぬ展開となった。
■イースタン・カンファレンス出場選手一覧(所属は当時のもの/太字はスターター)
アレン・アイバーソン(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)
トレイシー・マグレディ(オーランド・マジック)
マイケル・ジョーダン(ワシントン・ウィザーズ)
ジャーメイン・オニール(インディアナ・ペイサーズ)
ベン・ウォーレス(デトロイト・ピストンズ)
ジェイソン・キッド(ニュージャージー・ネッツ)
ビンス・カーター(トロント・ラプターズ)
ポール・ピアース(ボストン・セルティックス)
ブラッド・ミラー(インディアナ・ペイサーズ)
ジャマール・マッシュバーン(ニューオリンズ・ホーネッツ/当時はイースト所属)
アントワン・ウォーカー(ボストン・セルティックス)
ジドルナス・イルガウスカス(クリーブランド・キャバリアーズ)
■ウエスタン・カンファレンス出場選手一覧(所属は当時のもの/太字はスターター)
ケビン・ガーネット(ミネソタ・ティンバーウルブズ)
ティム・ダンカン(サンアントニオ・スパーズ)
コービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ)
スティーブ・フランシス(ヒューストン・ロケッツ)
ヤオ・ミン(ヒューストン・ロケッツ)
シャキール・オニール(ロサンゼルス・レイカーズ)
ショーン・マリオン(フェニックス・サンズ)
ダーク・ノビツキー(ダラス・マーベリックス)
スティーブ・ナッシュ(ダラス・マーベリックス)
ゲイリー・ペイトン(シアトル・スーパーソニックス)
ステフォン・マーブリー(フェニックス・サンズ)
ペジャ・ストヤコビッチ(サクラメント・キングス)
※出場選手変更(ケガのため)
クリス・ウェバー(サクラメント・キングス)→ペジャ・ストヤコビッチ
この年のオールスターファン投票では、コービーが全体トップの147万4,386票を獲得したのだが、ウエスト2位、そして全体4位に入ったのはロケッツの新人ヤオだった。母国である中国から多くの票を得たことで、128万6,324票でスターター入りを果たした。
その一方、イーストのセンターにはドラフト外からリーグ屈指のディフェンシブ・ビッグマンへと成長した“ビッグベン”ことウォーレスが先発としてオールスター初選出。ドラフト外の選手がオールスターの先発を務めるのは史上初のことだった。
この年が最後のオールスターとなったジョーダンは、ファン投票でスターターに選ばれたのではなく、ヘッドコーチ投票によるリザーブ選出だった。しかし当日はスターターとしてコートに立った。ノースカロライナ大の後輩カーターが、先輩へ先発の座を譲ったのである。カーターは現地メディア『AP』へ次のように語っていた。
「最初はスターターとしてプレーするつもりだった。でもしばらくして思ったんだ。『これは彼にとって最後のオールスターだ。彼は最も偉大な選手なんだ。俺は彼からここでプレーできる機会を与えてもらったようなものだろ?』ってね。俺に投票してくれたファンにはとても感謝しているけど、彼にはスターターとして出場する資格が十二分にあるからそうしたんだ」。
そうして迎えたオールスター本戦。前半は55-52とウエストが3点をリードした。スターターの211センチのガーネットとダンカン、229センチのヤオ、控えから216センチの巨漢シャックらで構成されたビッグラインナップを誇るウエストは、この試合でオールスター記録となるディフェンシブ・リバウンド46本(現在は1位タイ)を記録するなど、インサイドを制圧。
第3クォーターにイーストが41-31とウエストを上回ったことで93-86、イースト7点リードで第4クォーターへ突入。しかしここでウエストが反撃に転じ、第4クォーターを終えて両チーム一歩も引かず、120-120の同点で延長へともつれ込む。
延長戦も両チームが互いに加点し、残り23.1秒にシャックがフリースローを決めてウエストが136-136の同点に追いついた。この時点でリードチェンジは25回と、ジョーダン最後のオールスターは激しい接戦となった。そして、次のプレーでジョーダンに対して、この日最大の歓声が沸き起こることとなる。
イースト最後のポゼッション。キッドのパスを受け取ったジョーダンは、ディフェンスに定評のあるマリオンとの1対1へと持ち込み、流麗な動きから自慢のフェイドアウェイジャンパーを放った。
観客が息をのんで見守る中、高いアーチを描いたショットは静かに、かつ綺麗にネットを通過。残り4.8秒にイーストが138-136と逆転に成功した。
1998年のNBAファイナル。第6戦終盤に決めたブルズ時代最後の“ラストショット”に続き、ジョーダンはオールスターでも見事な“ラストショット”を決めてみせた。
だがこの日はこのまま試合が終わることはなかった。タイムアウト明けのウエスト最後のプレーで、3ポイントラインにいたコービーへ、ジャーメインがまさかのファウル。
「俺はあのショットがゲームウィナーになるもんだとばかり思ってたよ。でもNBAの試合というのは、何が起こるかわからない。本当にどんなことも起こりうるんだ」とジョーダンが語ったように、残り1.0秒でコービーに3本のフリースローが与えられた。
3本すべて成功させればウエストが一気に逆転する。勝負強いコービーは、もちろんすべて決める気でショットを放った。だが2本目をミスしてしまい。試合はオールスターゲーム史上初となる2度目の延長戦へ。
そこで台頭したのがKGことガーネットだった。打点の高いジャンパーなどで得点を重ねたKGが、最終スコア155-145でウエストを勝利へと導いた。
「最も重要なのは、俺が競争的な、互いに競り合うゲームをしたかったということ。楽しいエンディングになったからいいんじゃないかな」とジョーダン。
この大会でMVPを獲得したのは、試合をとおしてフィールドゴール24投中17本成功、フリースローは3投中3本すべて決めて37得点をマークしたガーネット。9リバウンド3アシスト5スティールも挙げる大活躍を見せた。
ウエストではコービーが22得点7リバウンド6アシスト、ダンカンが19得点15リバウンド4アシスト、フランシスが20得点9アシストと続き、ベンチからはシャックが19得点13リバウンドを記録。
一方のイーストでは、アイバーソンがチームトップの35得点5リバウンド7アシスト5スティール、マグレディが29得点、ジョーダンは20得点を奪い、キッドが11得点5リバウンド10アシスト5スティール、ジャーメインが10得点10リバウンド4ブロックと続いた。試合を終えたジョーダンは、次のようなコメントを残している。
「私は信頼できる選手たちに任せてコートから離れていくことができる。多くの偉大なスターたちがコート上で飛躍し、プレーしてきた。Dr.J(ジュリアス・アービング/元フィラデルフィア・セブンティシクサーズほか)、マジック・ジョンソン(元ロサンゼルス・レイカーズ)、ラリー・バード(元ボストン・セルティックス)といった多くのスーパースターたちが、私にバトンを渡してくれた。そして私は今、ここにいるオールスター選手たち、そしてNBAでプレーする選手たちにバトンを渡していく。皆さんからいただいた多大なるサポートに感謝したい」。
2度の延長へともつれ込んだ激戦は、競争者ジョーダンにとって、最もふさわしいエンディングだったのではないだろうか。
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