2020.02.11

スモールボールで勝負に挑むロケッツ…ダントーニHCは「我々はこの方法でよりよくプレーしている」

トレード後、スモールラインナップで勝負に出たロケッツ[写真]=Getty Images
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直近30試合で好調のウェストブルック

 シーズン開幕前、大型トレードによりラッセル・ウェストブルックがチームに加入したことで、今季優勝に大きな期待がかかるヒューストン・ロケッツ。シーズンの序盤はエースのジェームズ・ハーデンが、平均40得点に届きそうなスコアリングパフォーマンスを披露してチームをけん引していた。だが中盤に差し掛かるにあたって、それまで影を潜めていたウェストブルックがギアを上げていくことになる。

『StatMuse』によれば、ウェストブルックの直近30試合のスタッツは大幅に改善されているという。平均33.4得点はデイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)に次いでリーグ2位、フィールドゴール成功率52.6パーセントはヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)に次いでリーグ2位、8.2アシストはリーグで5位という数字だそうだ。また1月中旬からは、今季平均24.0パーセントである3ポイントシュートのアテンプト数を、平均4.9本から1.4本へと大幅に減少させた。結果的にミドルレンジのプルアップジャンパーや、持ち前のスピードと屈強なフィジカルを活かしたドライブの回数を増加させ、あわよくばバスケットカウントへとつなげている。

 いよいよウェストブルックがチームにフィットしていくにあたって、ロケッツは今回のトレードで決断をしなければならなかった。それはビッグマンのクリント・カペラについてだ。機動力があって優れたスクリーナーであるカペラだが、『heavy.』によると、彼は過去数年間において、ロールマンとしてのピックアップロールの攻撃ランキングにおいて、リーグ全体8位に並ぶ平均4.4得点を記録。また昨季はロールからのオフェンスで、64.4パーセントという確率でショットを沈めている。しかし今季ウェストブルックの加入により、これまでの平均4.4得点は、今季は平均2.4得点まで減少していたという。もともとピックアップロールを起点とした攻撃で存在感を放っていたカペラ。しかしピックの起用よりも、果敢に自分のドライブを優先するウェストブルックの加入の影響が、こうして数字に表れたのだろう。

抜群のスピードでドライブをし、フィニッシュするウェストブルック[写真]=Getty Images

カペラ放出を決断したロケッツは、スモールボールで勝負に

 最終的にはロケッツは4チームの間でトレードを成立させ、その中でカペラともう1人のビッグマンであるネネも放出し、ウイングであるロバート・コビントンを獲得した。この動きに『ESPN』のティム・マクマホン記者は、「カペラを放出することで、ウェストブルックの力を最大限引き出すことが狙い。マイク・ダントーニHC(ヘッドコーチ)とダレル・モーリーGM(ゼネラルマネージャー)がスモールボールにすべてを賭けるために、このトレードを望んだ」と、『The Hoop Collective Podcast』にてコメントしている。

「私の仕事は勝つこと。勝つための最大のチャンスが何であろうと、我々はいつもそれを追い続けている。このチームはともに働き、重要な事柄にともに打ち込んでいる。そしてダントーニが正しい方向へ導いてくれることが刺激的だ。皆が同じページに存在し、そして優勝のために機能させたいと思っている」と、『Clutch Points』をとおしてモーリーGMは語る。

 ダントーニHCも「どうすればこのチームの強みを最大限活かせるのかを模索している。これが(スモールボールを貫くという)意思の表れだとか、我々が何かおかしなことをしているだとか、そんな外野からの声を気にする必要はない。我々はこの方法でよりよくプレーしているんだ」と、今回のトレードについて言及した。現地でロケッツの番記者であるマイケル・シャピロ記者が報じている。

屈強な肉体でサンズのビッグマンであるエイトン(左)とマッチアップするタッカー(右)[写真]=Getty Images


 コビントン獲得後のロケッツは、パワーフォワードで196センチのPJ・タッカーが事実上センターを務め、その周りにハンドラーやウイングを配置している。本来スモールラインナップはポジションレスな並びで、攻撃の範囲を3ポイントまでコートをストレッチさせるのが狙いである。運動量でもアドバンテージを取れるが、一方で高さのミスマッチというリスクを抱える。これまでは試合中の奇襲や勝負所で使用されてきた戦い方だが、レギュラーシーズンの試合のスタートからスモールで挑むロケッツには今後も注目が離せないだろう。

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