2020.03.30

強固なディフェンスを武器に白星を重ねる昨季覇者ラプターズ/2019-20NBA通信簿チーム編⑤

選手層の厚さとチームディフェンスでイースト2位の好成績を残すラプターズ[写真]=Getty Images
フリーライター

新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。シーズン再開は早くても6月中旬から下旬にかけてと現地メディアが報じている中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階

2019-20シーズンNBA通信簿チーム編⑤トロント・ラプターズ

イースタン・カンファレンス(アトランティック・ディビジョン)
総合評価:S

■ここまでの戦績
今季戦績:46勝18敗(勝率71.9%/イースト2位)
ホーム戦績:23勝9敗(勝率71.9%)
アウェー戦績:23勝9敗(勝率71.9%)

■主要チームスタッツ(カッコ内はリーグ順位)
平均得点:113.0(12位)
平均失点:106.5(1位)
平均リバウンド:45.2本(12位)
平均アシスト:25.4本(11位)
平均スティール:8.8本(2位)
平均ブロック:4.9本(17位)
オフェンシブ・レーティング:111.3(12位)
ディフェンシブ・レーティング:104.9(2位)

3ポイントはもちろんのこと、リング下でも簡単には得点を許さない[写真]=Getty Images

■主要スタッツリーダー
平均出場時間:カイル・ラウリー(36.6分)
平均得点:パスカル・シアカム(23.6得点)
平均リバウンド:サージ・イバカ(8.3本)
平均アシスト:カイル・ラウリー(7.7本)
平均スティール:フレッド・バンブリート(1.9本)
平均ブロック:クリス・ブーシェイ(1.0本)

■主な開幕後の選手またはコーチの動き
特になし

シアカムはエースへと昇格し、イーストを代表するフォワードとなった[写真]=Getty Images

複数の主力を10試合以上欠く中で好成績を残し、プレーオフ出場も確定

 フランチャイズ史上初の優勝を成し遂げた後、ファイナルMVPのカワイ・レナードがロサンゼルス・クリッパーズ、スターターを務めたダニー・グリーンがロサンゼルス・レイカーズへそれぞれ移籍し、大幅な戦力ダウンがささやかれたが、余計な心配だったようだ。

 昨年10月のジャパンゲームズを前に行われた電話取材で、就任2年目を迎えたニック・ナースHC(ヘッドコーチ)は今季のチームについてどのように見ているかと聞かれて「オポチュニティー(機会、チャンス)ですね。非常にいい選手たちがそろっているんですけど、中でも若い選手たちにとってはすごくいい機会になるんじゃないかと思っています。今までなら、ほかの選手がいてできなかったことができるようになり、役割が広がっていくことでいろんなことができるようになると見ています」と話していた。

 オフェンス面ではエースに昇格するパスカル・シアカム、ディフェンス面ではコンディションを取り戻したOG・アヌノビーをキープレーヤーに挙げ、チーム最古参でリーダーを務めるカイル・ラウリーについても「(昨季優勝したことで)その成熟度が増したと思っています。感情のコントロールやコート上のコーチという役割をしっかりとこなしてくれています。オフェンスでもディフェンスでも、チームのプランをしっかり遂行させるようにする、リーダーシップ面における成長がすごく見られます」と絶賛。

的確なコミュニケーションと指導力でラプターズを進化させたナースHC[写真]=Getty Images

 そうして迎えた今季、ラプターズは順調に白星を重ねていき、指揮官の期待どおりにシアカムがスコアリングリーダーとして成長。アヌノビーをはじめ、フレッド・バンブリート、ノーマン・パウエルがスターターに名を連ねて攻防両面で奮起しており、ラウリーやマルク・ガソルサージ・イバカといったベテラン陣がサポートする体制を構築している。

 とはいえ、ディフェンディング・チャンピオンの今季は決して順風満帆だったわけではない。ガソル(27試合)を筆頭に、バンブリート(15試合)、イバカ(14試合)、ラウリー(12試合)、さらにはシアカム(11試合)といった主力をそれぞれ10試合以上もケガで欠いていた中で、ナースHCは15パターンのスターターを組んで試行錯誤を重ねて勝利をつかんでいったのだから恐れ入る。

 1月中旬からフランチャイズ史上最長の15連勝をマークしたラプターズは、オールスターにラウリーとシアカムを送り込み、4連勝でレギュラーシーズン中断を迎えた。64試合終了時点で昨季と同じ46勝18敗を残していることは称賛に値することであり、すでにプレーオフ出場を決めていることから、ナースHCは最優秀コーチ賞の最有力候補と言っていいだろう。

鍛え上げられたチームディフェンスを武器に強固なチーム力を堅持

 ドラフト上位指名選手がロースターにほぼおらず、雑草軍団とも評されたラプターズ。だがマサイ・ウジリ(バスケットボール運営部門代表)、ナースHCを中心に、フロントとコーチングスタッフの選手育成が実を結び、強固なロースターを形成することに成功。

 昨夏、パウエルが「このチームにはハードワーカーが何人もいる。多くのことを証明しようとしている選手やキャリアを伸ばすべく、コートに出たがっている選手やプレータイムを望む選手がね。プレーする機会を手にすれば、彼らはより大きな役割をこなしてステップアップできると思ってる。レギュラーシーズン中には、ケガやマネジメント、休息といったことが理由で状況が変わることはあるけど、彼らは自分たちにできることをやってのけるんじゃないかな」と『Sportsnet』へ口にしていたように、新加入選手を含めてチーム全体がレベルアップした印象がある。

 昨季も在籍していたパウエルやクリス・ブーシェイ、パトリック・マコーが存在感を示しており、新加入のロンデイ・ホリス・ジェファーソン、マット・トーマスは要所で持ち味を発揮し、新人のテレンス・デイビスも限られた時間で上々のプレーを見せている。スタンリー・ジョンソンがケガに苦しんでいるものの、シーズン中に2連覇を狙える戦力を整えることができたと言っていいだろう。

リーダーとして信頼を集めるラウリー(中央)を軸に、抜群のチームケミストリーを誇るラプターズ[写真]=Getty Images

 キャリア14年目のラウリーが積極果敢に身体を犠牲にしてテイクチャージを奪う献身ぶりを見せるラプターズは、チーム全員で激しいディフェンスを遂行する好チーム。ジョエル・エンビード(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)を無得点に抑えた実績があり、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)相手には複数の刺客を送り込んで苦しめることができる。

 被3ポイント成功率でリーグトップ(33.7パーセント)、被フィールドゴール成功率ではバックスに次いでリーグ2位(42.9パーセント)と鍛え上げられたチームディフェンスがある限り、6月中旬以降にシーズンが再開したとしてもこのチームが大崩れすることはなさそうだ。

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