2020.04.19
「もしあの時こうなっていたら…」「あの場面でこれを決めていれば…」など、スポーツ界には多くの“タラ・レバ”がある。それはNBAも同じで、その後の歴史を大きく変えたかもしれないプレーやショット、パフォーマンスが数多くあった。
毎年行われるドラフトもその1つ。特に上位指名権を手にしたチームにとって、即戦力と評される選手を獲得することで、フランチャイズの歴史を大きく変え、チャンピオンシップ獲得に成功するケースが理想のシナリオだろう。
アメリカでは“What if…”というフレーズでファン同士が話したり、メディアが報じるケースもある。新型コロナウイルスの影響でNBAがレギュラーシーズンを中断したことにより、選手たちが率先してツイートしたり、インスタライブで選手同士あるいはファンからの質問に答えて、キャリアにおける名場面を振り返るケースが出ている。
先日ドウェイン・ウェイド(元マイアミ・ヒートほか)がカーメロ・アンソニー(ポートランド・トレイルブレイザーズ)とインスタライブで共演した中で、「もしデトロイトからドラフト指名されていたら?」という問いにカーメロが「俺は…そうだな。2個か3個のリングを持っていただろうな」と口にした。
レブロン・ジェームズ(現ロサンゼルス・レイカーズ)がクリーブランド・キャバリアーズから全体1位指名された2003年のドラフトは、カーメロ(全体3位)、クリス・ボッシュ(元トロント・ラプターズほか/同4位)、ウェイド(同5位)など歴代で見ても屈指の豊作年。
当時カーメロはシラキュース大学をNCAAトーナメント優勝へと導いた1年生としてレブロンに次ぐ高評価を得ていた。事実、今年ザイオン・ウィリアムソン(ニューオーリンズ・ペリカンズ)が塗り替えるまで、10代のNBA選手として史上最長となる9試合連続20得点以上を達成するほどスコアラーとしてリーグ上位の実力を誇っていた。
ところが、レブロンが指名された後、デトロイト・ピストンズが全体2位で指名したのはカーメロではなく、ダーコ・ミリチッチ(元ミネソタ・ティンバーウルブズほか)。NBAキャリア10年で、平均6.0得点4.2リバウンド1.3ブロックを記録した213センチ113キロのビッグマンだが、ピストンズには約2シーズンのみの在籍で、平均5.8分1.6得点1.2リバウンドと不発。
当時のピストンズとしては、バックコートにチャンシー・ビラップスとリチャード・ハミルトン、センターにベン・ウォーレスがおり、スモールフォワードには03年のプレーオフで台頭したテイショーン・プリンス(いずれも元ピストンズほか)がおり、名将ラリー・ブラウンHC(ヘッドコーチ)を迎えた03-04シーズンを前に、フロントコートを強化する、という背景があった。
そしてそのシーズン途中にラシード・ウォーレス(元ピストンズほか)という攻防兼備のビッグマンをトレードで獲得し、鉄壁のディフェンスを構築したことで04年に優勝。翌05年もイースタン・カンファレンスを制してNBAファイナルへ進出し、サンアントニオ・スパーズと第7戦まで及ぶ死闘の末に惜敗している。
ミリチッチ指名は、当時のロースターを見れば理にかなっていると捉えることができるのだが、その一方で「ドラフトは残っている選手の中でベストな選手を指名すべき」という考えもあり、カーメロを指名していればプリンスをシックスマンに置き、ピストンズは爆発的な攻撃力を手に入れることができたに違いない。
そんな中、4月2日(現地時間1日)にピストンズのリーダーとして君臨したビラップスが、『ESPN』へ「もし(デトロイトが)メロを獲得していれば、俺たちはチャンピオンシップを3回制していたかもしれないね」と語っていたことは興味深い。
ビラップスは08年途中にアレン・アイバーソン(元フィラデルフィア・セブンティシクサーズほか)とのトレードでナゲッツへ移籍。カーメロとのタッグで09年のプレーオフを勝ち上がり、カンファレンス・ファイナルでロサンゼルス・レイカーズの前に2勝4敗で敗退。ニューヨーク・ニックス時代を含めて、ビラップスはカーメロと約3シーズン共にプレーしていただけに、ビラップス自身も「あの時のピストンズにメロがいればなぁ…」と思ったことがあったのだろう。
もちろん、これはあくまで「タラ・レバ」の話で、カーメロがピストンズ入りして優勝を手にしていたかどうかは誰にも分からない。ブラウンHCとカーメロが敵対してしまい、ピストンズを勝者へと押し上げたチームケミストリーが崩壊してしまった可能性もある。
とはいえ、シーズン中断という期間の中で、選手たちがSNSを通じて意見を交わすのは見ていて面白く、当時のファンからすれば、うれしく感じるのではないだろうか。
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