2021.07.26
「この街にとって、(NBAで優勝することは)全てを意味すると僕は確信している。彼ら(ファンの皆)は僕らがこの瞬間のために何年もかけてつぎ込んできたことを見てきた。このチームの現在地を楽しんでくれるといいね」。
7月21日(現地時間20日、日付は以下同)に行なわれたNBAファイナル第6戦。ミルウォーキー・バックスは105-98で勝利し、フェニックス・サンズを4勝2敗で下して1971年以来となるNBAチャンピオンとなった。
ファイナルMVPに選出されたヤニス・アデトクンボと共に、チーム在籍8シーズン目の最古参として優勝に大きく貢献したクリス・ミドルトンは試合後にそう口にし、この偉業を成し遂げたことを誇らしげに語っていた。
この日ホームのファイサーブ・フォーラムには1万7397人が詰めかけたのだが、地元チームがNBAチャンピオンになるのを見届けるべく、アリーナの外にあるDeer Districtには最大6万5000人も集まったという。
ミドルトンはルーキーシーズン終了後にデトロイト・ピストンズからトレードでバックスへ移籍。ドラフト指名されてルーキーとして入団したアデトクンボと共に、バックスがプレーオフチーム、そしてチャンピオンチームまで昇華する過程を全て経験。
バックスは2018-19シーズンにマイク・ブーデンホルザーHC(ヘッドコーチ)が就任後、レギュラーシーズンで2季連続リーグベストの戦績を残し、アデトクンボがいずれもシーズンMVPを獲得も、プレーオフではイースタン・カンファレンスを勝ち上がれずにいた。
ミドルトンは「全てのことに価値があったのは確かだね。僕には頑固な面もあったけど、お互いに向上すべくチャレンジしてきた。でも彼は全てにおいてチャレンジを課してきた。リーダーとなるため、逆境に立ち向かうため、それに自分たちのゲームを変えるべく、毎日挑戦を課してきたんだ。さっきも言ったように、それら全てに価値があった」と、ブーデンホルザーHCについて語っている。
そしてここまで8シーズンをプレーし、苦楽を共にしてきたアデトクンボとプレーすることについてはこう話している。
「簡単なことさ。彼は練習熱心で、勝利を欲しているから、誰だってチームメートにしたい男だろう。完璧なヤツなんていない。誰だってミスはする。僕もそうだし、彼もそう。だけど僕らはいつだって勝利しようとやってきた。僕らはより良い選手になろうとずっとやってきた。人として成長し、チームのリーダーとして向上を続けることが、ここ(優勝)へたどり着くための唯一の方法だと分かっていたからね」。
ミドルトンは2012年のドラフト2巡目全体39位指名のスイングマンで、ルーキーシーズンにはGリーグ(フォートウェイン・マッドアンツ)でもプレーしてきた苦労人。バックス加入後、徐々にチャンスをつかんでオールスターへと成長し、チームの窮地を救うクラッチプレーヤーへと進化を遂げた。
「どんな道のりでも、どの選手であろうと完璧なことなんてない。このリーグで生き残ることはタフなんだ。(全30チーム×ロースター15人の)450選手のうちの1選手になること、Gリーグでプレーしてはい上がることがね。でも自分のことを信じて、信念を持ってやり続けることと、自分の思いどおりにいかない時でも、努力し続けることが大事なんだ。このリーグの選手たちは皆そうやってきている。ここに到達するために、自分自身を信じて、ひたすら努力を続けていくことなんだ」とミドルトンはこれまでのキャリアを振り返っていた。
第6戦の最終クォーター。サンズは何とか第7戦へと持ち込むべく、何度も4点差まで詰め寄ってきたのだが、バックスはアデトクンボらのショットでそれ以上詰めさせずに主導権を握っていた。
そしてサンズの息の根を止めたのは、ミドルトンが繰り出したプルアップジャンパーだった。残り56.9秒、ハイポストにいたアデトクンボからハンドオフでボールを受け取ったミドルトンは、右エルボーから美しいジャンパーを放り込み、サンズがタイムアウト。
その後デビン・ブッカーが3ポイントを落とすと、ミケル・ブリッジズのファウルでミドルトンがフリースロー2本を確実に沈めたことで、バックスが8点差をつけた。
ファイナルでは連続してショットミスしてしまい、スランプに陥る時間帯こそあったものの、ミドルトンはシリーズ平均24.0得点6.3リバウンド5.3アシスト1.5スティールをマーク。両チーム最多となる平均42.5分もコートに立ち、フィールドゴール44.8パーセント、3ポイント35.6パーセント、フリースロー88.9パーセントと、サンズの厳しいマークに遭っていた中でこの数字を残したことは十二分に称賛に値する。
優勝パレードを終えたミドルトンは、チームメートのドリュー・ホリデー、対戦相手のブッカーと共に、東京オリンピックへ出場すべく、プライベートジェットで日本へ向かう。ハードな日程ではあるものの、優勝したことでさらに自信を深めた男のパフォーマンスは必見だ。
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