2021.08.24

「お前はシュートを打ちすぎだ」…新人トンプソンへエリスが放った一言を元ACが明かす

トンプソン(左)とエリス(右)[写真]=Getty Images
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 ジェリー・ディグレゴリオ。NBAでアシスタントコーチ(AC)を4シーズン務めたことがあるコーチで、ゴールデンステイト・ウォリアーズには2011-12から13-14までの3シーズンをマーク・ジャクソン前HC(ヘッドコーチ)の下でACとして所属していた。

 ウォリアーズは14-15シーズンにスティーブ・カーHCが就任し、15年から5年連続でNBAファイナルへ進出し、そのうち3度(15、17、18年)の優勝を飾っているのだが、ジャクソン前HCやディグレゴリオACはその基盤を作ったコーチ陣と言っていいだろう。

 8月24日(現地時間23日、日付は以下同)。そのディグレゴリオ元ACが『The Athletic』の取材に応じ、クレイ・トンプソンのルーキーシーズンにおけるエピソードを明かした。

 11-12シーズンは、ロックアウトによって66試合の短縮シーズンとなり、ウォリアーズはウェスタン・カンファレンス13位の23勝43敗。当時のロースターにはトンプソンのほか、デイビッド・リー(元ウォリアーズほか)やリチャード・ジェファーソン(元ニュージャージー・ネッツほか)、ネイト・ロビンソン(元ニューヨーク・ニックスほか)、そして3年目のステフィン・カリーがいた。

自慢のドライブで敵陣を切り裂いて得点を量産したエリス[写真]=Getty Images

 もっとも、当時のチームでエースを務めていたのはモンテ・エリス(元ウォリアーズほか)。190センチのコンボガードとしてドライブを中心に攻め立て、平均20得点前後を残していた。

「彼(トンプソン)のルーキーシーズンで、クレイが3ポイントを打ちすぎたゲームがあったんだ。そこでタイムアウト中に、モンテがルーキーへ激しく非難したんだ。『おい、シュートを打ちすぎだ。パスしろ。お前はただのルーキーだろうが』と言っていたのを覚えているよ。私はその間、ずっとクレイを見ていたんだが、彼がひるむことは全くなかったね」。

 そのシーズン、エリスは平均19.0本のショットを放ち、チームトップの平均21.9得点を記録。新人トンプソンは平均10.9本のショットで同12.5得点に過ぎず、当時はエリスが格上だったことは事実。

 だが、トンプソンはルーキー時代からシュート力に絶対の自信を持っていたのだろう。「その直後のポゼッションで、ボールが回ってクレイへと渡ったんだ。そこで彼は(タイムアウト明けで)最初のショットを放ち、3ポイントを見事決めてみせたんだ」とディグレゴリオが明かしていた。

リーグ有数のシューターとなったトンプソン[写真]=Getty Images

 ウォリアーズの指揮官を務めていた時期に、ジャクソン前HCがカリーとトンプソンを「NBA史上最高のシュート力を持つガードコンビ」と絶賛していたように、早くもトンプソンの才能を認めていたのだろう。

 事実、ウォリアーズは12年3月14日にエリスを含む3選手を放出し、ミルウォーキー・バックスからアンドリュー・ボーガット(元バックスほか)、スティーブン・ジャクソン(元ウォリアーズほか)を獲得するというトレードを断行。カリーとトンプソンを先発バックコートに据える動きを見せていた。

 エリスはNBAキャリア12シーズンで通算平均17.8得点3.5リバウンド4.6アシスト1.7スティールと、スコアリングガードとして活躍してきたが、トンプソンはルーキーシーズンから8シーズン連続で3ポイント成功率40.0パーセント以上を記録し、5シーズン連続で平均20得点以上をクリア。

 ケガのため直近2シーズンを全休しているものの、オールディフェンシブチームにも選ばれたほどの堅実なディフェンス力を持ち、キャッチ&シュートや1ドリブルからのプルアップでジャンパーや3ポイントをいとも簡単に沈めてしまう脅威のシュート力があるため、選手としての格で見ても、今では完全にエリスを上回ると言っていい。

 もちろん、中堅のエーススコアラー(エリス)とルーキーガード(トンプソン)を天秤にかけてどちらを残すかを決断するのは並大抵なことではない。それでも、ウォリアーズはカリーとトンプソンがいることで、エリスを手放してもいいと判断したのだろう。

 そして、その決断は間違ってはいなかったと断言できるほどの結果を彼らは残してきた。

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