2022.10.15
さいたまスーパーアリーナで開催されたゴールデンステイト・ウォリアーズとワシントン・ウィザーズによる「NBAジャパンゲームズ2022」は、ウォリアーズの2連勝で終えた。
3年ぶり通算8度目となったジャパンゲームズは、前回の2019年のトロント・ラプターズに続いて、前シーズンの王者(ウォリアーズ)が来日という記念すべきイベントとなったのだが、今回はこれまでのジャパンゲームズ史上、最も印象的な大会として記憶に残ることとなるに違いない。
その違いをもたらしたのはもちろん、八村塁の存在だ。2019年のドラフトで日本人として初めて1巡目(全体9位)指名された男が、NBA選手としてジャパンゲームズへ参戦したのだから当然だろう。
昨年夏も東京オリンピックで日本代表のトップスコアラーとして、ジャパンゲームズと同じ会場のさいたまスーパーアリーナでプレーしたものの、この時は新型コロナウイルスのパンデミックのため無観客試合だった。
「今回こうやってファンがいて、2試合とも負けてしまったんですけど、とても特別な思い出になりました。チームとしてもそうですし、この日本という国にとっても、すごく大きいイベントだったと思うので良かったです」。
今年のジャパンゲームズで見事に主役を務めた八村は、第1戦で25分10秒プレーして13得点9リバウンド、第2戦でも26分21秒の出場で11得点10リバウンドとスタッツ面でもインパクトを残した。初戦ではステフィン・カリーからスティールを奪い、センターコートを超えてボールを追いかけ、最後はルーズボールダイブするハッスルプレーを見せ、第2戦では左ローポストからアンドリュー・ウィギンズ相手にパワープレーからタフショットをねじ込むなど何度も見せ場を作って会場を沸かせた。
敵将スティーブ・カーHC(ヘッドコーチ)は、外国籍出身としてNBAで活躍する八村についてこう評していた。
「彼がどれほど人気なのかは、観客に向けて話した時に(観客が)熱狂していたのを見ればわかるさ。ゲームはグローバル化しているだけでなく、外国籍出身のスター選手が増えてきている。その選手たちの国ではもっと有名になる。できたら、日本からもっと多くの選手たちが出てくるといいね。この国はバスケットボールが熱狂的な国だから。彼らは大好きなんだ。その一部になれて楽しいよ」。
八村自身も“ホーム開催”のジャパンゲームズについて「日本のファンの皆さんの前でプレーするのも何年かぶりなので、僕もすごい楽しめましたし、NBAゲームでもナショナルチームでも、日本へ帰ってきてプレーするのはすごい好きなので、これからもどんどん増えていけばいいなと思いますし、日本人でNBAファンが増えていくのも僕にとってもすごくうれしいので、もっとそうなってくれればいいなと思います」と今後にも期待を寄せていた。
もっとも、記者から「(ファンからの)歓声は力になりましたか?」という質問に「もちろんなりましたね」と切り出すも、「それでもステフさんには負けてたと思うんですけど」と白い歯をのぞかせながら話すと会見場は一気に笑いに包まれ、「そこはちょっと…どうかなぁとは思うんですけど」と振り返っていた。
そんな八村にとって、今季はNBAという世界最高のプロバスケットボールリーグで4シーズン目。「僕も4年目なので、こうやって年も重ねていくうちに、僕もベテランになってくると思うんですけど、そういう中でチームとしても大事な存在の1人だと思っているので、その中で自分もしっかりと、プレーもそうですけど、コート外でもちゃんとお手本になれるようになっていきたいなと思います」と意気込む。
ウィザーズには14年目のタージ・ギブソン、11年目のブラッドリー・ビール、ウィル・バートンといったベテランたちがいるものの、在籍期間だけで言えば八村はビールに次ぐチーム2位。
「4年目になるので、どういうふうになるかというのもわかっていますし、シーズンもどういう感じかというのもわかるので、そういう中では、ゲームに集中できるようになってきているので、そこに余裕が見られているんじゃないかなと思います」という24歳の言葉は、今後に向けて頼もしい限りだろう。
ジャパンゲームズではクリスタプス・ポルジンギス、カイル・クーズマと共にフロントコートのスターターに名を連ねた八村。メディアデイで「今年は勝負の年」と口にしていた日本の至宝は、このまま先発としてレギュラーシーズンを迎えることができるのか。
現時点で当確ランプこそついていないものの、試合中のパフォーマンスや言動からも、今季に向けて高いモチベーションを持っていることは、会場や試合後の会見場にいなかった方にも、画面越しでしっかりと伝わったのではないだろうか。
今夏の充実したオフシーズン、そして今回のジャパンゲームズを機に、NBAという最高峰の舞台でも、思う存分に暴れ回ってほしいところだ。
文=秋山裕之
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