2023.04.26

マブスの“レジェンド”ノビツキー氏がコービー氏からの勧誘を断った理由

2000年代を象徴するフランチャイズプレーヤーの2人 [写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 2023年、NBAの殿堂入りが発表されたダーク・ノビツキー(元ダラス・マーベリックス)氏。1998年のリーグ入りから引退までの21年間、マブス一筋を貫いた球団史上最高のフランチャイズプレーヤーは、そのキャリアにおいて14度のオールスター選出、4度のファーストチーム選出、2007年のシーズンMVP受賞、そして球団にチャンピオンリングをもたらした2011年にはファイナルMVPを受賞するなど、輝かしい功績を残してきた。

「ノビツキーはマブスの看板」。誰しもがそのようなイメージを抱くなか、ドイツ産の技巧派センターを“勧誘”した選手がいる。それはほかでもない、コービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)氏だった。

 遡ること2010年、ノビツキー氏はマブスと4年8000万ドル(現在のレートで約106億8000万円)で契約延長に合意した。この頃の彼は1試合平均25得点7.7リバウンド、3ポイントシュート成功率42.1パーセントを記録する圧倒的なスキルセットを所持しており、現代バスケほどアウトサイドが主流でなかった当時のビッグマンとしては唯一無二の存在だった。

 もちろん、リーグ屈指のスタープレーヤーが移籍市場に登場するとなれば、引く手は数多。その過程で選手個人からもアプローチがあり、コービー氏以外にもかつてコート上でボールを共有し合ったスティーブ・ナッシュ(元フェニックス・サンズほか)氏からも連絡があったという。

「HBO」の番組『ヘッドライナーズ・バイ・レイチェル・ニコルズ』に出演したノビツキー氏は、コービー氏からの勧誘を懐かしそうに回想した。

「コービーから電話をもらった時は、最高の気分だったよ。僕にとって、彼は今でも対戦したなかで最高の選手だ。でも、僕が『聞いてほしい。僕はダラスで長い時間を過ごしたい。ここでキャリアを終えたいんだ』と伝えたから、彼は僕に対して尊敬の念を抱いてくれたのだと思う」

 ノビツキー氏と同様にコービー氏もまた、2000年代を象徴するフランチャイズプレーヤーだ。自分と同じく球団に忠誠を誓う姿勢に心を打たれ彼は、共演以上にタイトルを争うライバルとして、ノビツキー氏の存在を認めたに違いない。

現役引退後も球団の顔として知られる [写真]=Getty Images

 ノビツキー氏の勧誘については、コービー氏自身も生前に言及。“ブラックマンバ”は「NBAオールスター2016」のメディアカンファレンスで、以下のコメントを残した。

「ダークと俺は常に素晴らしい関係を築いてきた。俺たちは2人とも非常に競争心に溢れ、チームに対しても忠誠を誓ってきたからだ。ダークについて話そうか。彼はフリーエージェントの身で、俺は彼の返答を知っていたけど、敬意を示して『皆がフリーエージェントを見ている。だから、君がLAに来たいかを聞くためにテキストを送ろうかと思ってね』と言ってみたんだ。すると、彼は『君と一緒にプレーするのは最高だけど、ダラスは俺のホームタウンであり、このチームが俺の居場所なんだ。だから、ここを離れるつもりはない』と返答してきた。彼と俺はそういう思考の人間なんだよ」

 一つの球団に忠誠を示した2人のレジェンド。ノビツキー氏はフランチャイズプレーヤーの代表として、今後もコービー氏の思いを代弁していくだろう。

文=Meiji

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