「まずはジャマールからゲームが始まっていったと思う。それがヨキッチのゲームを少しばかり楽にしていたんだ」（ラウリー）

　6月8日（現地時間7日、日付は以下同）にカセヤ・センターで行われた「NBAファイナル2023」の第3戦は、デンバー・ナゲッツが109－94でマイアミ・ヒートに勝利し、シリーズ戦績を2勝1敗とした。

　ナゲッツはニコラ・ヨキッチが32得点21リバウンド10アシスト2ブロック、新人クリスチャン・ブラウンが15得点4リバウンド1スティール、アーロン・ゴードンが11得点10リバウンド5アシストをマーク。

　そしてジャマール・マレーがゲームハイの34得点に10リバウンド10アシストのトリプルダブルを達成。フィールドゴール成功率54.5パーセント（12／22）、3ポイントシュート成功率50.0パーセント（3／6）は、いずれもシリーズベストだった。

　ヒートはマレーに対して第2戦からジミー・バトラーをマッチアップさせる機会を増やし、その試合では18得点10アシストに終わっていた。この試合でも、ヒートはマレーがヨキッチらとの2メンゲームを仕掛けた際にバム・アデバヨらがダブルチームで襲い掛かるなどボールを手放すように仕向けており、アデバヨがメインのディフェンダーとなった場面で5本、試合全体で7本のターンオーバーを喫するなど苦しめられるシーンもあった。

　それでも、マレーはディフェンダー2人を引き連れてゴードンやブラウンのイージーショットを演出するなど10本のアシストを残し、3試合連続で10アシストに到達。

ヒートの選手たちに何度もダブルチームされたマレー（中央）[写真]=Getty Images

　『NBA History』によると、ファイナルで3戦連続10アシスト以上に達したのはアービン“マジック”ジョンソン（元ロサンゼルス・レイカーズ／6度）、ボブ・クージー（元ボストン・セルティックスほか／1度）とマレーのみ。しかも、マレーはキャリア初のファイナルでこの快挙をやってのけたのだから見事というほかない。

　また、ナゲッツのマイケル・マローンHC（ヘッドコーチ）はこの試合で3本のオフェンシブ・リバウンドを含む計10リバウンドを奪ったマレーを「あれこそチャンピオンたちがやることだ。（ゴールデンステイト）ウォリアーズだってやっていた。彼らは（リバウンドで）盛り返してきたじゃないか」と称えていた。

「私は彼の存在感を試合中ずっと感じていたんだ。スタッツはほんの一瞬、忘れてくれ。彼の存在感とエナジーはその瞬間にしっかりあった。彼とニコラが今夜やってくれたことは、まさに我々がシリーズでホームコート・アドバンテージを取り返すために求めていたことであり、見ていて特別なことだったよ」

　ターンオーバーこそ多かったものの、第3戦のマレーはリバウンドでも積極的に絡んでいき、ときにはシャウトしてチームを盛り立てるなど、スタッツ以外の面でもナゲッツを引っ張っていた。

　キャリア17年目のベテランガード、カイル・ラウリー（ヒート）はこう話す。

「まずはジャマール・マレーからゲームが始まっていったと思う。それがヨキッチのゲームを少しばかり楽にしていたんだ。僕らはジャマールへヘルプを送っていた。そこでヨキッチは彼自身の仕事をしていく。彼は2度のMVPで、バスケットボールを熟知している」

「彼は32（得点）、10（アシスト）、21（リバウンド）というとんでもない数字を残す。7フィート（213センチ／公称は211センチ）で、どんなこともうまくこなしてしまう。でもあのグループのために雰囲気を作り出すのはジャマールだと思うね。それに彼はアグレッシブではっきりと主張するんだ」

　マレーはこのシリーズで平均33.3得点14.0リバウンド9.3アシストのヨキッチに次いで、両チーム2位の同26.0得点に6.7リバウンド、シリーズ最多の10.0アシストの活躍を見せており、10日の第4戦でもこの男のパフォーマンスが勝敗を左右することとなるに違いない。