2024.08.25
8月21日。NBAレジェンドのダーク・ノビツキー(元ダラス・マーベリックス)が、ブランドアンバサダーを務める『BAUERFEIND(バウアーファインド)』の東京都内で開催されたイベントに登場した。
ノビツキーは13日(現地時間12日、日付は以下同)にマサチューセッツ州スプリングフィールドにあるシンフォニー・ホールでバスケットボール殿堂入り式典へ出席し、殿堂入りを飾った。今年はノビツキーだけでなく、かつて何度も戦ってきたドウェイン・ウェイド(元マイアミ・ヒートほか)やパウ・ガソル(元ロサンゼルス・レイカーズほか)、トニー・パーカー(元サンアントニオ・スパーズほか)といったレジェンドたちも殿堂入りを果たしており、今年の式典をこのように振り返っていた。
「本当に素晴らしい体験でした。家族、それに友達150人ぐらいが世界中から集まって2日間祝うことができました。そのなかには、ドイツで一緒に育ってきた幼なじみ、元チームメートたちも参加してくれて、2日間が本当に特別で一生忘れられない2日間でした。あとは今まで対戦相手だったり、トップレベルで一緒にプレーした選手も参加してくれて、多分、今後の人生で絶対忘れることはない思い出になったと思います」
ドイツ出身のノビツキーは、1998年のドラフト1巡目9位でミルウォーキー・バックスから指名され、ドラフト当日にマブスへトレード。ルーキーシーズン(1998-99)こそ平均8.2得点だったものの、翌1999-2000シーズンからスターターに定着。平均得点を2ケタに乗せると、2001-02シーズンにオールスター初選出を飾り、計13シーズンで平均20.0得点以上を記録。
213センチ111キロのサイズがありながら、ノビツキーはペイントエリアで得点するだけでなく、ペリメーターからスムースな動きでジャンパー、アウトサイドから3ポイントシュートを綺麗に放り込み、高精度なフリースローなどで点を積み上げてきた。
2018-19シーズンまで、マブス一筋21シーズンをプレーし続けた男は、同一チームにおけるNBA歴代最長在籍記録を保持しているほか、外国籍出身選手として史上最多の通算3万1560得点(NBA歴代6位)をたたき出し、出場1522試合や5万1368分、1万1489リバウンド、1281ブロックなど、マブスで数多くの球団最多記録を保持している。
2006-07シーズンにはマブスをリーグトップかつフランチャイズ史上ベストの67勝15敗(勝率81.7パーセント)へ導き、ヨーロッパ出身選手として初のMVPに選出。2011年にはプレーオフを勝ち上がり、マブスへ球団史上初のチャンピオンシップをもたらし、ファイナルMVPに選ばれた。
そんなノビツキーが繰り出してきたシグネチャームーブは、片足フェイダウェイジャンパーだった。7フィート(約213センチ)という身長と打点の高さ、柔らかいシュートタッチの持ち主は、片足で跳び上がり、フェイダウェイでジャンパーを放つことでマッチアップ相手との間にスペースを作り出し、ブロックさせなくすることで、自身のシグネチャームーブとなった。
このプレーはケビン・デュラント(フェニックス・サンズ)やレブロン・ジェームズ(レイカーズ)、ジョエル・エンビード(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)、クレイ・トンプソン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)など現役選手たちもレパートリーに加えており、試合中に決めている。
今回、ノビツキーにそのことを聞いてみると、こう話してくれた。
「このワンレッグフェイダウェイがNBAに残って、利用され続けていることをとても誇りに思っています。(このプレーで)重要なのがバランスとコートビジョンになります。それさえあれば、覚えるのはそんなに難しいことではないです。ですので、今でもいろんな選手が繰り出しているのをとても楽しんで見ていて、ゲームのレベルアップにつながればいいなと思っています」
ノビツキーが最後にプレーしたのは2019年4月11日のこと。(現地時間で)40歳と295日までNBAという世界最高のプロバスケットボールリーグを戦い抜いたノビツキーは、マブスで着用した背番号41、ドイツ代表で身にまとっていた背番号14が永久欠番となっている。
引退から約4年が経過した今。殿堂入りも飾ったレジェンドは、21年間のプロバスケットボールキャリアを「本当に長くいい経験でした。21年間もプレーし続けて、ずっとトップレベルでプレーさせてもらえる選手はあまり多くはいないので、本当に自分はラッキーだったと思います」と振り返り、さらにこう語ってくれた。
「元チームメートたちとの関係やロッカールームでのやり取りがあり、仲間と一緒に世界中を飛び回ることを恋しく思うこともあって、とてもいい思い出です。あとはもちろん、トップの選手たちと一緒に対戦できたことも本当に良かった、とてもいい経験だったと思います」
「そして、対戦相手たちとのプレーだけではなく、そのほかの選手たちとの関係性です。最初は、バスケットボールを終えたあとの人生に何があるのか、どうなるのかと疑問に思うことがありましたが、小さい子どももいますし、世界中を飛び回らなければいけないということは変わらないので、この4年間とても忙しかったです」
殿堂入り式典でプレゼンターを務めたスティーブ・ナッシュ(元サンズほか)、ジェイソン・キッド(元マブスほか/現マブス指揮官)という2人の偉大なポイントガードだけでなく、ノビツキーはジェイソン・テリーやマイケル・フィンリー、ジョシュ・ハワード(いずれも元マブスほか)にショーン・マリオン(元サンズほか)など、数多くの選手とチームメートとして戦ってきた。
試合に勝つため、チームを勝利へ導くべく、コート内外で一丸となってきた仲間たち、そしてコート外ではリスペクトしつつ、試合中は激しいマッチアップを繰り広げてきた対戦相手たちは、ノビツキーにとって今でもかけがえのない思い出であり、自身の人生のなかでも重要な部分を占めているのだろう。
ノビツキーのプレーを現地で観戦したことのある人たちもいれば、画面越しで見てきた人たちもいる。現地でノビツキーと対面したことがない方も大勢いるだろう。だがこの男が試合で勝つために、NBAで戦い続けるために磨いてきたシュート力は特筆すべきものだったと言っていい。
そしてドイツ出身のレジェンドが生み出した片足フェイダウェイジャンパーは、これから先もバスケットボールの試合で繰り出されていくはずだ。
文=秋山裕之
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