2023.11.13

ショットスランプへの対処…カイリー・アービングが思い出したコービーと父のアドバイスとは?

カイリーをスランプから救ったコービーの言葉とは [写真]=Getty Images(写真はプレシーズンのもの)
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 ダラス・マーベリックスはシーズン開幕後、8勝2敗の好成績を収め、スタートダッシュに成功している。

 エースのルカ・ドンチッチは、高校時代に全米ナンバー1の評価を受けたこともあるルーキーのデレック・ライブリー2世と抜群のコンビネーションを披露し、コートを躍動。また、タフネスに定評のある新加入の3&D、グラント・ウィリアムズもスタッツ面でキャリアハイの成績を残すなど、ジェイソン・キッド監督の策略は功を奏している。

 何より、昨シーズン途中からロスターに加わったカイリー・アービングが、セカンドエースの役割を担っている心強さは計り知れない。1人で敵陣を打開できるショットメイキングのスキルはリーグでも指折りであり、“アンクル・ドリュー(アービングの愛称)”の存在はドンチッチ不在時にも対戦相手の大きなプレッシャーとなっている。

 そのアービングは開幕からしばらく、3ポイントシュートが安定しなかった。最初の5試合の平均成功率は、わずか24.8パーセント。ここ数年、4割近くのショットを成功させていたアービングにとっては明らかに物足りない数字だった。

 しかし、11月9日(現地時間8日)のトロント・ラプターズ戦で成功率42.9パーセントをマークすると、続く11日(同10日)のロサンゼルス・クリッパーズ戦では9本試投のうち5本を沈め、成功率55.6パーセントを記録。スランプに陥ることなく、わずか数試合で立て直してしまうアービングの修正力には、思わず脱帽してしまう。

 アーク外からのショット改善について問われたアービングは、父と偉大なレジェンドからの教えを思い出し、繊細なポイントに着目したという。

「とにかく、右肘を尖らせること。数日前に父と話しましたが、父はいつも僕に対して右肘を尖らせておくように口酸っぱく言い聞かせてきました。それはコービー(・ブライアント)も僕によく言ってくれたことで、念押しされましたね。そして、ゆっくり時間をかけて、しっかりと踏み込むことも大切です」

「バランスが取れていないときがありました。ファンは見逃してしまいがちな小さなところですが、バスケットボールをよく理解している人や、僕のプレーを評価してくれる人は、若干リズムが狂っていたように見えたでしょう。ガイドハンドの位置が少し高かったり、左右にずれていたこともあります」

 また、マーベリックスの背番号11は、シューターはショットが決まるか否かに問わず、自身を信頼することが重要だと続けた。

「このリーグで偉大なシューターになるためには、自信がすべてであり、そのすべては費やした努力と時間に比例します。僕は一貫性を保っています。良いモチベーションで準備し、チームメートが僕を見つけ続けてくれることを信じ、そのときが訪れたらシュートを決めるだけです」

 そして、現在は選手としてのモチベーションにも大きな変化があるようだ。今シーズン、8度のオールスターは“チームプレーヤー”としての価値向上にコミットしていると語る。

「このリーグの競技者であれば、オールスターやオールNBAなど個人の栄誉に集中するのは当然です。しかし、僕はそれらすべてを隅に追いやりました。今シーズンの僕にとって、それらの優先度は高くありません。僕はより良いチームメートになること、より良いリーダーになることに本気で取り組み、さまざまな形で犠牲を払う方法を示したい。ただし、シーズン後半には何度も僕の出番が待っているはずなので、準備は怠りません」

 これまで、選手としてのエゴで度々問題に直面していたアービングだが、冷静な判断と心境の変化は同選手をさらなる次元に押し上げることだろう。

 マブスに誕生した脅威の2番手。2023-24シーズンのダークホースは、テキサスを駆ける白馬かもしれない。

文=Meiji

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