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全米大学体育協会(NCAA)1部(DI)のラドフォード大でプレーする山﨑一渉が、大ケガを乗り越え今シーズンをまい進中だ。
1年生のシーズンを終え、8月に東京で行われた世界大学バスケットボール選手権大会(WUBS)出場を前にしたチーム練習中に負傷。検査の結果、右膝前十字靭帯断裂、内側側副靱帯損傷、半月板損傷と診断された。
本来2年生のシーズンだった昨シーズンはレッドシャツに立場を替えてリハビリに専念。そして復帰を果たした今シーズン、チームの主力として活躍している。
昨年12月、コロラド州立大での遠征試合に訪れた山﨑に話を聞いた。
取材・文=山脇明子
――1シーズンを経てようやく復帰しましたが、ここまでのところ、どうですか?
山﨑 (昨シーズン)1年間しっかりチームと一緒に同行させてもらって、ゲームを見たり、イメージを持って自主練したり、気持ちが(バスケットボールから)離れることなくリハビリを頑張ってこられたので、その成果が少しずつ出ていると感じます。
――こうやってプレーできるようになって、今はどんな気持ちですか?
山﨑 リハビリ中は「もと通りに戻れるのかな?」とか、不安もたくさんあったんですけど、信じてしっかりやってきて、今はケガをする前よりもバスケット選手としていい状態だと思うので、本当に頑張ってきて良かったです。
元に戻れるのかという不安の中、リハビリに励んだという [写真]=Dajah Berger of Dajah’s Digitals
――バスケットボール選手として高校のときより上手くなっていると感じますか?
山﨑 高校のときは、あまり困ることがなかったというか…。自分のやりたいようにやりたいプレーを選択するという感じだったんですけど、こっちに来てそういうわけにはいかなくて、やはりスキルの面とかでは伸びたと思います。僕は1年生のときに壁にぶち当たりました。日本ではずっとチームの中で自分が一番でやってきたけど、ここに来てプレータイムがもらえなくて。そういうときに、そこで折れるんじゃなくて、どうしたら出られるのか、どういうふうに練習に取り組んで、どういうふうに準備をすればいいのかっていうことを前向きにちゃんと考えられたから、今があると思います。
――チームの主力としてプレーするのも高校以来になりますね。
山﨑 試合にたくさん出るという感覚は、懐かしいですね。
――今シーズンに向けて、自分は中心選手になれるという実感はあったのですか?
山﨑 シーズンに向けて、みんなで練習していく中で、最初はスピード感に慣れなかったりしたんですけど、(戦線離脱した)1年間にやってきたことも徐々に出せるようになってきました。スピード感に慣れてきたころには、結構結果が出せていたので、スタートになれるかどうかはわかりませんでしたが、たぶん試合にはたくさん絡めるだろうなという感覚はありました。
――山﨑選手のシュートはどうですか? 今シーズンはスリーポイントが向上したようですが。
山﨑 ずっと1年間、それに取り組んできました。1年生のころよりは、確率は良くなっていると思います。(これからも)そこは伸ばしていきたいです。あまりシューターが多いチームじゃないので、自分がしっかりその役割をやりたいです。
――今後、どういうところを伸ばしていきたいですか?
山﨑 自分の中では、一貫性を持って1年間やり続けたいというのがあります。チームの中心で出ている以上、波が大きいとチームにも影響しちゃうと思うので、波をなくして、毎試合、一生懸命自分のやるべきことをやっていきたいです。
――昨シーズンのクリスマスにレイカーズの八村塁選手の試合を観戦しましたね。八村選手がチケットを用意してくれ、試合後には話もしました。
山﨑 そのあと、レイカーズがワシントンDCでウィザーズと対戦したときも塁さんにチケットを頂いて、見に行かせてもらいました。塁さんはアメリカでもすごく有名で、レイカーズという大きいチームで主力としてプレーしているので、すごく遠い存在なんですけど、何回も会って身近に感じている人が、ああやって活躍しているのを見ると、自分もいつかあんな風に活躍したいなと思いますし、それを目指して頑張りたいです。塁さんのプレーを生で見て、「ここでプレーしたい」という思いはすごく感じました。
――八村選手とは、どんな話をしたのですか?
山﨑 自分はケガをしていたので、それについて話したりしました。塁さんに「しっかり、焦らないで、一歩ずつ」と言ってもらえて、自分が(リハビリ中に考えて)やっていることは間違ってないと思えて。今シーズンに向けて、もっとリハビリとか自主練を頑張ろうとモチベーションが上がりました。
レイカーズでプレーする八村塁は仙台大明成高校の先輩 [写真]=Getty Images
――パリオリンピックは見ましたか? 日本代表を見て、どのように思いましたか?
山﨑 やはり悔しい部分もあるんですけど、少し前の時代からしたら考えられないような偉業を達成して…。今、自分も含めてアメリカでプレーしている大学生も多いし、Bリーグのレベルがすごく上がっていて、日本でプレーしてる人たちの将来もとても楽しみだし、自分もそこに食い込んでいけるように頑張りたいです。
――日本代表になるためには、かなりの競争になると感じますか?
山﨑 そうですね。若くていい選手がすごくたくさんいるけど、ベテランの選手でもまだまだすごくいい選手がいるので、そこに食い込むのは全然簡単なことではありません。
――同年代で、同じようにDIでプレーするジェイコブス晶選手(ハワイ大学)を見てどのように思いましたか?
山﨑 自分より(1歳)年下だけど、ああいう大きな舞台でしっかり度胸を持ってプレーできるというのはすごいですし、自分も負けてられないなと思います。
――故障の話に戻りますが、故障したからこそ得たものはありますか?
山﨑 やはり故障しなかったら自分と向き合う時間もなかったし、ベンチからしっかり試合を見れるという機会もなかったし、ちゃんとリハビリとか自主練に時間をかけられるということもなかったと思います。故障したからといって、そこで悲しいとか、そういう落ち込む期間にするんじゃなくて、自分に向き合えたことが今の自分にとってすごくプラスになっています。
――バスケをしていたら辛いことも多いですし、試合でのプレッシャーもあります。でもケガをしている間は、それさえも感じることができません。それだけにプレッシャーを感じることも今はうれしいというようなことはあるのでしょうか?
山﨑 シーズンが始まって、自分が(故障を)乗り越えて戻ってきたんだという感覚がすごくあって、そこは本当に自信持ってやれてるし、たくさん試合に出てヒザが痛くなったりもするんですけど、でも、それも幸せだなって思って。ここにいたくてもいられない人もたくさんいるし、自分が辛かったときに支えてくれた人たちもたくさんいるので、たとえミスしても一生懸命やることだけは忘れずにやろうと思っています。
――日本にも大ケガをして治療中の選手がいると思いますが、そういう選手たちにどんなメッセージを送りますか?
山﨑 大きなケガで長期離脱となると、そこから復帰した選手もいれば、思うように復帰できなかった選手もいるのが正直なところで、自分がどういうふうになるかわからないし、「思うように復帰できなかったらどうしよう」とか、そういう不安もあります。でも応援してくれる人たちのためにも、自分がやっていることを信じて、やるべきことを一つずつ、コツコツやっていくことが大事だと思います。
リハビリに励む人たちに「やるべきことを一つずつ、コツコツやっていくことが大事」とメッセージを送った [写真]=Dajah Berger of Dajah’s Digitals
――山崎選手の場合はリハビリしている間、何が励みになりましたか?
山﨑 僕は、ケガして手術する前から「ケガする前よりもいい選手になって復帰する」ということが、ずっと目標でした。暇になるとどんどん不安になってしまうので、毎日自分のスケジュールを目いっぱい組んで忙しくしていました。ヨガは体にいいと思いますし、バランスとか柔軟性とかも大事だと思うので、朝7時からヨガのクラスを受けて、授業に行って、リハビリをやって、ウエイトをやって、みんなが練習中に走って、ご飯食べて、また戻ってきてシューティングして、というのをずっと繰り返していました。
――仲が良かったケニヨン・ジャイルズ選手がノースカロライナ大グリーンボロ校へ転校してしまいましたが。
山﨑 彼とは今でも毎日のように連絡を取り合っています。自分も彼の試合を見たり、彼も自分の試合を見てくれていて、お互いに切磋琢磨しながら、励まし合いながらやってます。
――今シーズンはどれくらいメンバーが変わったのですか?
山﨑 4年生が卒業して、転校した選手もいて、自分を含めて(昨シーズンから)4人しか戻っていません。今年のチームは、ハイメジャーに行ったけど全然出られなかった選手が多くて、すごく面白いチームだと思います。セルフィッシュな選手が全然いなくて、みんな実力もあるけど、チームのためにっていうのを一番に考えてやっていて、そこでうまくいってるから、今勝ててるのかなっていうふうに思います。今シーズンのビッグサウスカンファレンスはどの大学もいいのですけど、カンファレンスゲームでしっかり勝って、カンファレンストーナメントでも勝ち進んで、マーチマッドネス(NCAAトーナメント)に行きたいです。