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「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2022予選」で、日本代表が大会最終日の2月13日に対戦するのは、FIBAランキング27位ながらも、要注意国に挙げられるボスニア・ヘルツェゴビナ代表だ。
「ユーロバスケット2021」(ヨーロッパ選手権の名称でアジアカップと同様の大会)で5位の成績を収め、今予選への切符をつかみ取った。これまで一度もワールドカップやオリンピックに出場したことがない国でありながらも注目されている理由は、『女性版KD(ケビン・デュラント/ブルックリン・ネッツ)』と呼ばれる“JJ”ことジョンケル・ジョーンズ(コネチカット・サン/28歳)を擁しているからだ。198センチのサイズとフィジカルの強さを生かして驚異的なスタッツを叩き出す姿はまさしくKDそのもの。インサイドプレーをメインとしながらも、柔らかいシュートタッチで3ポイントを放ち、リバウンドやブロックショットに跳び、ボール運びまでするオールラウンドプレーヤーなのだ。
経歴は渡邊雄太(トロント・ラプターズ)と同じジョージワシントン大学出身。2016年よりWNBAのサンでプレーし、2021年にはWNBAのシーズンMVPを受賞した。WNBAのシーズンオフには、2016-17シーズンに韓国WKBLのウリ銀行、2017-18に中国WCBAの山西でのプレー歴があり、現在は世界中の名だたる選手が集結するロシアのUMMC エカテリンブルグに所属している。ブリアナ・スチュアート、ブリトニー・グライナー(ともにアメリカ)、エマ・ミーセマン(ベルギー)、アルバ・トーレンス(スペイン)ら強豪国のエースがそろうチームの中で存在感を示していることからも、今、世界の中で最も注目を集めている驚異的な選手と言っていいだろう。
さらに、ジョーンズの名を知らしめたのは、ここ数年の代表活動だ。バハマ出身の彼女が2018年にボスニア・ヘルツェゴビナの国籍を取得すると、ヨーロッパのダークホースとして一気に浮上した。代表デビュー戦となった2019年11月の「ユーロバスケット2021予選」のロシア代表戦では29得点16リバウンドをマーク。強豪ロシアを相手に1点差で勝利し、ヨーロッパ中を震撼させた。
2021年6月に開催された「ユーロバスケット2021」では、これまた開幕ゲームでベルギー代表を70-55で破る金星。準々決勝ではフランス代表に67-80で敗れたものの、スウェーデン代表に82-63と快勝して5位入賞を果たし、ヨーロッパ6位までに与えられるワールドカップ予選の出場権をつかみ取った。この大会でジョーンズは得点王(1試合平均24.3得点)とリバウンド王(同16.8リバウンド)に輝き、ブロックショットでも2位(同1.5ブロック)にランクインしている。
ジョーンズの猛威はさらに続く。2021年11月に開催された「ユーロバスケット2023予選」では、東京オリンピック後にヘッドコーチが変わったベルギー代表に87-81で勝利。44得点22リバウンドに、3ポイント成功率42.9パーセント(3/7本)というモンスタースタッツを叩き出した。ジョーンズ加入前のボスニア・ヘルツェゴビナは、過去にユーロバスケットに出場したのが1997年と1999年の2回しかないことからも、いかにその存在が大きいかわかるだろう。
ジョーンズ以外で飛び抜けた大型選手は不在だが、“クセ者”がそろう。「ユーロバスケット2021」で、ジョーンズに次ぐリバウンド2位(同10.3リバウンド)にランクインした185センチのマリカ・ガイッチ(26歳)、同大会のベルギー戦で3ポイントを6本中5本決めるなど23得点をマークした177センチのニコリーナ・バビッチ(26歳)らが脇を固めている。
ヨーロッパの要注意国ではあるが、懸念要素もある。まず、今予選のような世界規模の大会は初出場であり、日本のようなスピードと足を使った攻防のチームとの対戦が初であること。また、ジョーンズは来日直前までユーロリーグの試合をこなしていることから、コンディションやチームケミストリーの面では不安材料もある。いかにしてスーパースターを抑えるか。恩塚亨HCは「40分とおして戦えることが日本の武器。チーム力で戦うビジョンを持って挑む」と抱負を語った。そして、WNBAでマッチアップ経験がある渡嘉敷来夢(ENEOSサンフラワーズ)の言葉こそが、ジョーンズ攻略のカギとなるだろう。
「この予選でいちばん楽しみなのはジョーンズと対戦すること。WNBAでマッチアップした時よりも一つひとつのプレーの精度がはるかに上がっています。そういうすごい選手と同じコートに立てるのは楽しみで、一生懸命に膝のリハビリをしてきて良かったなと思います。ただ、彼女はプレッシャーディフェンスを好まないタイプ。オフェンスは積極的に走るけれど、戻りは遅いところがある。チームディフェンスでも1対1でもしっかり守り、彼女のフラストレーションが溜まったところで走って粘り勝ちしたい」(渡嘉敷)
初顔合わせとなるボスニア・ヘルツェゴビナ代表との決戦は、間違いなく大注目の試合になる。
文=小永吉陽子
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