2022.03.16
2年ぶりのインターハイが北信越地域地区を舞台にまもなく幕を開ける。昨年の大会は新型コロナウイルスの影響により中止を余儀なくされ、今年の高校生プレーヤーのなかには夏の全国を知らない選手も、数多くいるだろう。そこでバスケットボールキングでは、かつてインターハイで激闘を繰り広げたBリーガーにインタビューを実施。当時の思い出とともに、彼らにとってインターハイがどのような舞台だったのかを伺った。
第三弾は琉球ゴールデンキングスの牧隼利。小学校1年次にバスケットボールを始め、高校は全国でも名だたる強豪の福岡大学附属大濠高校へ進学し、3年連続で夏の全国の舞台に立った。後編では高校3年次のインターハイや母校への思いなどを聞いた。
インタビュー・文=岡本亮
――高校3年次はキャプテンに就任します。それまでキャプテンを務めた経験はあったのですか?
牧 小学校・中学校と一応チームのキャプテンみたいな感じでしたが、(大濠では)またレベルの違うところでのキャプテンだったので。しかも僕は高校1・2年生の時の学年代表になっていなかったこともあり、自分でもキャプテンになるとは思っていませんでした。
――では、キャプテンに任命された時は驚きがあったということですね。
牧 そうですね。びっくり半分、やるしかないという覚悟半分でしたね。
――その当時キャプテンとしてチームをまとめる上でどのようなことが必要だと思っていたのですか?
牧 その後の結果を見てもらえれば分かるんですけど、自分にはできなかったというのがありますね。
――キャプテンとして臨んだインターハイは、2回戦で北陸高校に76−85で敗戦。牧選手はスタメン出場で20得点を挙げましたが、第4クォーターに逆転を許して敗れました。
牧 2回戦といっても僕たちはシードだったので。最後のウインターカップでも初戦で敗れましたし、僕たちはその年全国で一度も勝てていないんですよね。その試合というよりかはその1年がすごく鮮明に残っていますし、自分にとっていいきっかけや学びがあった1年だったと思います。
――学びを具体的に言葉にするなら?
牧 やっぱりそんなに甘くないということですよね。1・2年生の時は先輩たちがいてこその自分だっただけで、個で出された舞台で活躍できる力があったとしても、チームを勝たせられる力が僕には無かったっていうのを痛感させられました。
――その先輩という意味では、現在Bリーグで活躍する青木保憲選手(広島ドラゴンフライズ)や杉浦佑成選手(三遠ネオフェニックス)など錚々たる方たちがいましたが、練習からトップレベルの選手とできるのは大きかったのではないでしょうか。
牧 そうですね。もちろんプレー面でもそうですし、気の持ちようだったり自主練をどうするのか、どうトレーニングするのかというのが勉強になりました。
――技術面のほかにも精神面でのアドバイスをもらっていたということですか?
牧 言葉でもらったというより、先輩たちは「本当に勝ちたい」という気持ちが日々の練習から前面に出ていました。特にヤスさん(青木保憲)はキャプテンとして厳しくひっぱって、でも時にはお尻を叩いてくれたりした。勝ちたいっていう思いに対するメンタリティーの部分で刺激になることが多かったです。
――雰囲気づくりという面で片峯聡太先生や田中國明先生からアドバイスはあったのですか?
牧 大濠は自主性が重んじられているので、キャプテンのことに関しては最高学年でどうするかというのが求められていました。
――先ほどもおっしゃられたように、3年次は全国で勝利することができませんでした。今振り返ってみて、何が足りなかったと思いますか?
牧 まずは僕ですよね。キャプテンの僕がチームを締められていなかった。そこは非常に感じていますし、3年次の悔しさは学生バスケでしか取り返せないと思っていたので、筑波大学でキャプテンとして最後優勝することができたのは大きな自信になりました。キャプテン、リーダーというのは大事だと思います。
――特に3年次のインターハイは連覇がかかっていたこともあり、プレッシャーを感じていた部分もありましたか?
牧 プレッシャー半分、そして変な驕りが半分あったのかなと思います。
――「変な驕り」というのは具体的にどういうことですか?
牧 ちょっとした過信なのか、展開が悪くても持っていけるだろうという気持ちがあったのかなと。そういう気持ちが少しでもあれば相手に(流れを)もっていかれる。インターハイもウインターカップもそういうシビアな大会でした。
――インターハイには3年連続で出場しましたが、改めて牧選手にとってインターハイとはどんな舞台ですか?
牧 下馬評がどうだとか、相手チームがどうだとかいろいろあるとは思うんですけど、数少ない全国大会で結果を残すチームが本当に強いんです。インターハイはその年初めての全国大会で腕試し的な大会でもあると思うので、そういった意味では高校バスケの勢力図を作るというか、いろいろな意味で見られている大会だと思います。
――片峯先生や田中先生の指導や言葉で印象に残っているものはありますか?
牧 片峯先生がよく仰っていたのは、『目標は全国制覇、目的は人間教育』。バスケットだけじゃなくて、人間的にもすごく成長させてもらった大濠高校での3年間でした。結果は出なかったですけど、人間教育という面では自分の今の糧になっているかなと思います。
――人間性という部分で3年間一番伸びたところはどんなところですか?
牧 バスケだけじゃダメだよねっていうところで、学校で提出物を出さなかったら練習に参加できなかったし、あとは感謝ですかね。はじめて親元を離れて、周りの大人に支えてもらったと思っているので、そういった面で感謝の気持ち、このふたつが自分にとって大きいかなと思います。
――大濠高校は今年のインターハイへ出場しますが、今でも成績は気にされていますか?
牧 はい、もちろん。時間がある時にハイライトをYouTubeで見たりしています。
――後輩たちにどこまで行ってほしいですか?
牧 もちろん日本一です。
――では、最後にイレギュラーな状況でインターハイへ出場する選手たちへメッセージをお願いします。
牧 母校の頑張る姿を見て刺激を受けていますし、たくさんの方が高校バスケを見てパワーをもらっていると思います。僕もインターハイを見て高校バスケから力をもらってさらに頑張っていきたいなと思っているので、頑張ってほしいです。
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