2017.03.07

プロバスケチームのマネージャーって何するの? 名古屋Dの成田明香さんに聞いてきた

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Bリーグが開幕し、選手はもちろん、ヘッドコーチ、アシスタントコーチ、フィジカルコーチなどチームスタッフのがんばりもあって、日本のバスケットボール界はこれまでにない盛りあがりを見せている。興行面においてもフロントスタッフが様々なイベントやSNSの運用など、これまで以上に多角的な方法で、バスケットの魅力を発信することに力を注いでいる。ここで素朴な疑問が一つ。チームに欠かせないスタッフとしてチームを支えているマネージャーはどんな仕事をしているのか。何となくのイメージはあるが、実のところ何をしているのかわからない。チームを陰で支えるその様子に迫るべく、今回は名古屋ダイヤモンドドルフィンズの成田明香マネージャーに話を聞いた

インタビュー=村上成

――まずは経歴をお聞かせください。
成田 マネージャー歴は今年で9年目になります。もともとスポーツメーカーで営業をしていました。「バスケットボールチームのマネージャーをやってみない?」と声が掛かった時には、営業にもやりがいを感じていたので、最初は悩みました。ただ、悩んだということは、やはりやってみたいということだろうと思い、この仕事に飛びこんでみました。

――不安はありませんでしたか?
成田 出身地である関東から離れたことがなかったため、名古屋のチームであることには唯一不安はありました。けれど、学生時代に関東大学女子バスケットボール連盟の仕事をやっていたので、チーム運営なども含めて、割とすんなりなじむことができたため、仕事内容などへの不安はありませんでした。

――素朴な疑問なのですが、プロチームのマネージャーってどんなことをやるんですか?
成田 よくいろいろな人から「華がある世界でうらやましい」と言われるんですよ。でも、汗だくの洗濯物をたくさん洗うし、荷物をたくさん運ぶし、移動や取材のスケジュール調整から、外国籍選手の保険の申請、住居移転に伴う手続き、弁当の手配など、力仕事もあればチームと外部との調整など本当に様々な仕事があって、いつでも半袖で走り回ってますね(笑)。

――かなり大変そうですね……。
成田 はい。練習の準備や、シュート練習のリバウンドなどももちろんですけど、トレーナーさんが忙しい時にも手伝うし、朝から晩まで自分の仕事以外の手伝いをしている気がします。「マネージャーってどんな仕事ですか?」とよく聞かれますが、一言で言えば何でも屋さんです(笑)。

――少し聞いただけで、すごく大変そうですが、この仕事の難しさはどんなところでしょうか?
成田 マネージャーの仕事はどこからどこまでといった範囲がなく、チームの環境、その時々の状況によって変わるためマニュアルもありません。例えば、選手個々によって、どこまで担えば、より練習や試合に集中できるのかは異なりますし、自分よりも年上であったり移籍してきたりした選手の場合、「何でこれをやらないの!」と怒られることもあります(苦笑)。人を相手にしている仕事なため、正解はありませんし、自分で模索しながら最適なことを行っていかなければならないところが難しいところです。常にさまざまな選手と関わる日本代表チームのマネージャーさんにも話を聞いたりして、参考にしています。

――現在のチームや、役回りの中で難しいことはどんなことですか?
成田 今年のチームは若い選手が多く、チームの規律やルールなどについて教えていくときに、できる限り感情的に怒らないように心掛けています。感情的になってしまっては「何、怒ってるの?」と、そっぽを向かれてしまいますので。よくいろいろな場面で「学校の先生みたいですね」とか「お母さんみたいですね」と言われることが多いです。「せめてお姉さんにしてください」と言っています(笑)。

――仕事をしていてつらいことや大変なことはありますか?
成田 この仕事を大変だと思うことはありません。もちろん、遅くまで仕事をすることも多いし、試合が続くと体力的にキツいこともありますが、それでも大変だと思うことはないですね。

――力強い言葉ですね。
成田 ただ、この仕事に就いた当初は外国籍選手とのコミュニケーションなどで困ることはありました。でも、コミュニケーションを取らないと一対一の付き合いができないため、努力して彼らとの会話を増やしていくうちに英語が話せるようになっていきました。外国籍選手は文化や考え方も異なるため、彼ら一人ひとりのことを理解しようと意識しているうちに自然と身についてきました。また、この例のように、外国籍選手とのコミュニケーションの機会などをはじめ、いろいろなことを学べる機会が多いことは、この仕事の魅力かもしれないですね。

――なるほど。英語も話せるようになるのは良いですね。では、仕事のやりがいは?
成田 チームを応援するファンの皆さんの反応を見ることに、やはり一番のやりがいを感じます。私はアリーナに来たお客様の一言やSNSの反応を見るだけで、楽しいと感じてしまいます(笑)。あとはやはりチームが勝ってくれたり、選手が活躍をしてくれたりすると、自分の働きが何かの役に立ったのかなと感じることができ、やりがいがある仕事だなと実感しますね。

――Bリーグが開幕して、お客様が求めることも変わったのではないですか?
成田 そうですね。Bリーグが始まる前までは、事故なく試合を終えることを第一に考えていたので1試合1試合を淡々と行っていた部分が少なからずあったように思います。Bリーグが始まり、プロクラブとなった今は、「選手も積極的にメディアに出ましょう」、「お客様に試合以外でも楽しんでもらい、より喜んでもらいましょう」と見ている先がチームからお客様へと180度変わりました。チームマネージャーの立場としても、たくさんのメディアに取りあげてもらい、たくさんの人にアリーナに来てもらえるような取り組みをチーム側の目線から考え、フロントとコミュニケーションを図っていっています。

――ガラッと環境も変化したわけですね。
成田 新しいリーグとして開幕して、今までよりもとてもたくさんのお客様に来場していただけるようになりました。また、選手たちも音響や暗転演出など雰囲気も全く変わったと言っています。チームとしても個人としても、目標は常に3000名台後半、できれば5000名のお客様を常時ご来場いただけるようにしていきたいと思っています。各クラブ単位でしっかりとお客様をもてなせる環境づくりを行っていくことが、チームを影からサポートする私個人の励みにもなりますし、ビジネス面から考えても、チームのため、そして日本代表のためへとつながっていくと考えています。

――確かにお客様が増えること、楽しんでくれることはチーム強化、日本のバスケットボールの強化にもつながりますね。名古屋Dのどこを見てもらいたいですか?
成田 何と言っても仲の良さです。コートの外でもコミュニケーションが図れているからこそ、試合の中でも高いパフォーマンスを発揮できていると思います。例えば、ポイントガードが周囲もビックリするようなパスを出しても、受け手はそれをしっかりと受けて得点する。互いのことを理解し合えるだけのこのコミュニケーションの良さが、ファンにも伝わり、より応援してもらえ、選手たちもその声援を力に変えられるという相乗効果がもたらされ、勝利へとつながる流れになると思います。

――最後に、これからプロクラブでマネージャーになってみたいと思っている方へアドバイスなどありますか?
成田 最初に言ったとおり、華やかな世界ではありません。でも、このポジションでやっていくには、資格は必要ありません。この仕事で認めてもらって、チームの役に立って、そして生き抜いていくために必要なのは“人間力”だと思います。人のために尽くせるか、困っている人に手を差し伸べることができるか。忙しいですけど、いろいろと学ぶ機会も多いので、そういう素養は、この仕事を続けていくのに必要かもしれませんね。でも、この仕事で身につけた語学力で、困っている外国人観光客の食事のオーダーをしてあげたりと、学んだことを使う機会も多いんですよ。

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