2018.04.15

伊藤俊亮…最高のエンディングへ向け、残り試合もすべてを千葉ジェッツに捧く

12日、今シーズン限りで引退することを発表した千葉の伊藤[写真]=B.LEAGUE
2000年より、バスケットボール専門で取材活動中

 Bリーグ第28節、東地区首位を走る千葉ジェッツが船橋アリーナに西宮ストークスを迎え撃った第1戦は、106-76で千葉が圧勝。アグレッシブなディフェンスから速攻を連発し、残留プレーオフ出場が決まっている西宮に地力を見せつけた。

 この試合、通常であれば通算3000得点に到達した小野龍猛、あるいはそろってチーム最多23得点のマイケル・パーカーギャビン・エドワーズにスポットライトが当たるところ。しかし、試合開始前からブースターの視線を一身に浴びていたのは、2日前の4月12日に今季限りでの現役引退を表明したばかりの伊藤俊亮だ。

 選手入場の時点から、その名前をコールされる度にアリーナは一際大きな歓声に包まれた。引退発表後の試合という今までに経験のない状況でも、伊藤自身は「見える景色みたいなものはまだそんなに変わっていないかな」と試合に臨む意識の変化は感じていない様子だが、「みんな優しくしてくれる(笑)。チームメートは変わらないですが、ブースターの方やスタッフの皆さん、メディアの皆さんもこうして優しくしてくれるのはありがたいことです」と伊藤らしく報道陣を笑わせつつ、周囲の温かさに感謝の意を表した。

 試合では第3クォーターまで出番はなく、第4クォーター残り7分余りというタイミングで大野篤史ヘッドコーチが「7分もつ?」と声をかけてスタンバイを指示した。「本当はもうちょっと早く出したかったんですが、最後にへばってコートに立っていないのはかわいそうというか、試合の最後までコートに残っている姿をブースターの皆さんに見せてあげられればと思ったので、バテないかなということだけが心配でした(笑)」(大野HC)

 残り6分35秒でコートに立った伊藤は、普段と変わることなく外国籍選手へのディフェンスや味方をフリーにするスクリーンで体を張り続けた。試合終了まであと10秒というところでようやくシュートを打ったが惜しくもリングに弾かれ、チームでは故障欠場中の西村文男を除いて伊藤だけが無得点に終わっている。

第4クォーターに出番が回ってきた伊藤は、普段どおり体を張ったプレーを見せた[写真]=B.LEAGUE

「あまり得点は意識していないので(笑)。今日は荒尾(岳)が入ってすぐに得点するなど調子も良かったですし、しばらくリズムに乗れていなかった原(修太)も今日は積極的にアタックするところを見せられた。チームメートが生き生きと仕事しているのを見られたのは良かったですし、プレーの中でその手伝いができたんじゃないかと思います。自分だけ得点していないと言われると『得点しとけば良かった』とは思いますけど(笑)」

 この日の試合を終えた時点でレギュラーシーズンはまだ8試合残っており、その先には「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017-18」も控えている。引退を発表したとはいえ、伊藤も昨季悔しい思いを味わったことに変わりはなく、意識は自身のことよりチームの勝利に向けられている。

「昨季は最後で何か足りなかったものがあったと思います。それを意識しながらチーム作りをしてきて、我慢できるチームになってきている。1勝足りなくてホーム開催ができなかったので、『1勝でも多くしないといけない』というマインドにはなっています。今東地区1位で来ていますが、守りに入ってしまうと良い結果にはならない。しっかり最後まで攻め続けて、目の前の試合を片づけていこうという気持ちでいます」

 チームメートに引退を報告した際は「やりきったみたいな顔をするな」といつものようにイジられ、実父から「長いことよくがんばったな」と言葉をかけられた時は「いや、まだ終わってねーから」と返したという伊藤。リーグ制覇という最高のエンディングを迎えるため、残る試合も伊藤は自らが持つものすべてをチームに捧げ続ける。

文=吉川哲彦

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