2018.11.03
西の雄が優勝候補の一角と激突、まさしく“大阪秋の陣”という言葉が似合う一戦。10月27日に行われた大阪エヴェッサと千葉ジェッツの戦い、大阪はエグゼビア・ギブソンと熊谷尚也のケガ人に加えて、木下博之と今野翔太が体調不良による欠場となり、8人で戦うことになった。まさしくスクランブル状態で強豪との対戦を迎えた。
そんな大阪の前に日本を代表する司令塔の富樫勇樹が立ちはだかる。得意の形から3ポイントシュートなど第1クォーターだけで13得点を与え、自分たちの思うような展開にならない。穂坂健祐ヘッドコーチは試合後に「富樫選手のところで、一番やられてはいけない3ポイントシュートやピック&ロールからのスコアを与えてしまった。富樫選手にやられたとしても、周りをどれだけ抑えられるかをポイントにゲームに入ったが、逆に彼に対してのプレッシャーが足りなかった」と悔やだ。それでも前節の琉球ゴールデンキングス戦での反省を活かし、チームが一つとなってフィジカルを活かしてタフに戦い続けた。千葉の大野篤史HCが事前に警戒していた、大きさと強さでリバウンドを確保し、ペイントエリア内で次々と得点を重ねていく。前半だけでペイントエリア内の得点が24得点とインサイドが機能し、3点リードで前半を終えた。
後半に入って一進一退の攻防が続いたが、ゲームの重要なところで千葉が本来の激しいディフェンスから早い展開のバスケットを披露し、徐々にリードを広げていく。大野HCが「出だしが酷く、前半は焦ってオフェンスが停滞して悪循環に陥った。後半はしっかりと自分たちの早い展開のバスケットができた」と振り返ったように、本来の千葉の動きに対して、大阪は徐々に疲労の色が見え、重要な局面で判断ミスなどが起こったことが最終的な勝負の分かれ目となった。我慢し続け、懸命に40分間戦ったが、大阪は敗戦を喫した。
あともう一歩といったゲームであったが、口々にする課題は明確であった。それは「勝負所で我慢して戦い続けるということ」。試合後の畠山俊樹は「勝つチャンスはあったと思うけど、やっぱり我慢しきれなかったところがあった。オフェンスリバウンドの指示で、ある程度飛びこみすぎずに相手の攻守の切り替えの早さを警戒していたが、我慢できずに飛びこんでしまって結果的に相手のバスケットをさせてしまった」と振り返った。穂坂HCも「後半一気に疲れが出てからの判断ミスなどでいいオフェンスで終われず、相手のバスケットをさせてしまった。40分間、戦い続けることの難しさを感じた」とコメント。強豪との戦いで感じた、ほんの少しの差をどう埋めていくかでシーズンの行方は変わってくるのかもしれない。
一方でルーキーの長野誠史が22分出場し、攻守にわたって躍動。富樫への激しいディフェンスなどチームに貢献した。穂坂HCも収穫と捉えており、「毎日誰よりも練習をして着実に力をつけてきている。今日は気持ち良く思いきりプレーしていたし、今後のチームのラインナップの幅を広げてくれた」と話した。合田怜も含め、若手の躍動は非常にチームにとってはうれしいだろう。
さらに全員がこの状況でも下を向かず、懸命にチームとして一つになって戦っていることを再確認できたゲームであったことも収穫の一つと言っていいだろう。「勝負所での部分が最後まで響いてしまったが、最初から最後まで全員がよく戦えた。琉球戦で大敗して少し気持ちが落ちこんでしまったけど、それでもみんなが気持ちを前向きに戦っている」とインサイドで躍動したファイ・パプ月瑠が言えば、畠山も「チームは苦しかったりしますが、全員がポジティブに気持ちを切り替えて、顔を下に向けずに、目の前のことを一生懸命に取り組んでいる」。そして、“ルーキー”として初めてチームの指揮を執る穂坂HCは「今いる選手たちをリスペクトしているし、チームの中でポジティブな言葉が出ている。自分たちのバスケットを今日は40分間見せようとしてくれていた。素晴らしいチームスタッフと仕事ができるのは光栄だし、チーム全員でいいシーズンを作りあげていきたい」と締めくくった。
いいシーズンを作りあげるには、まず第2戦で自分たちのバスケットを展開し、チーム一丸となって我慢し続けた上で勝利をつかみ取らないといけない。千葉の西村文男が「明日は一つひとつ相手の得意なところをしっかり潰していきたい」と意気込んでいるように、意地と意地のぶつかり合いが大阪で繰り広げられることは間違いない。
文・写真=鳴神富一
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