2025.04.15

宇都宮の地区優勝を支えた「若手の成長」…22歳の小川敦也へ、亡き指揮官が送った言葉

宇都宮の東地区優勝を支えた「若手の成長」の象徴とも言える小川敦也 [写真]=B.LEAGUE
フリーライター

■初のホーム地区優勝でMVPを受賞

 宇都宮ブレックスがレギュラーシーズン8試合を残して東地区優勝を決めた。

 4月13日、地区優勝マジック「1」の状況で臨んだ京都ハンナリーズとの第31節第2戦は、最終スコア89-69で快勝。GAME1と同様に序盤から試合を優位に進め、全員出場で2年連続の地区優勝に華を添えた。

4度目の地区優勝ながら、ホームで初めて受賞セレモニーを実施 [写真]=B.LEAGUE

 過去に3度の地区優勝を成し遂げている宇都宮だが、ホームで優勝セレモニーを行ったのは今回が初。そんな記念すべき日にMVPに選ばれたのは、背番号7の小川敦也だった。

 22歳のポイントガードは第1クォーター残り5分30秒にコートイン。同4分22秒にD.J・ニュービルのキックアウトから3ポイントを沈めると、試合を通して12得点をマーク。17分56秒のプレータイムでターンオーバーも「0」に抑えた。

 この日の小川は、5本のフィールドゴールを100パーセントの確率で決めた。しかし、コート上で行われたヒーローインタビュー、記者会見でも「シュートは波がある」と控えめな言葉を発し、話の方向を“ディフェンス”へと向けた。

 記者会見では、「今日はディフェンスで守り切るという気持ちで試合に入ったので、それを遂行できてよかったと思います」と総括。自身のプレーに関しては3ポイント成功率が6分の1と精度を欠いた第30節の越谷アルファーズ戦を引き合いに出し、こう振り返った。

「シュートは水物なので、どうしても波があるものだと思っています。越谷戦ではシュートミスを引きずってディフェンスで貢献できずにヘッドコーチからも指摘を受けました。(京都戦では)まずはディフェンスから入って自分のプレーをしようと思っていましたし、この土日は前からプレッシャーをかけることができたと思っています」

■亡き指揮官からの言葉を胸に、CSでも「先輩方の力になりたい」

 小川は筑波大学3年目のシーズン終了後、バスケ部を退部してプロ入りを決断。今シーズンは自身初めての経験となる開幕から60試合に及ぶレギュラーシーズン、その先のチャンピオンシップを戦い抜く長いシーズンを過ごしている。

「今は試合に出られるようになりましたけど、いいときも悪いときもありますし、プレータイムが少ないときもあります。でも、こういう経験できていることは自分の中ですごく成長につながっていると思うのでポジティブに捉えています。自分として初めての経験をしている中で、ブレックスという素晴らしいチームでたくさんのことを学ばせてもらっていることは、これからのバスケットボールキャリアにおいてもすごく大切な時間だなと感じています」

 小川の魅力は、190センチの長身とスピード、そして軽々とダンクをかます身体能力の高さだと言える。今シーズンはその非凡な才能を、よりディフェンス面で発揮しようとプレシーズンの時期から意識を高め、「自分が前からプレッシャーをかけて速い展開に持ち込みたい」とビジョンを描いてきた。

「彼は本当に素晴らしい身体能力を持っています」。2月に天国へ旅立ったケビン・ブラスウェルHCも小川を評価し、開幕前は「ある程度プレータイムを与えてミスを経験させることも重要」と若き司令塔に経験を積ませた。

「ケビンにはずっと『自信を持て』と言われてきました。今は自信を持ってプレーできていますし、それが結果にも繋がっていると思っています」と小川は思いをはせる。東地区優勝については、「チームに貢献して優勝できたことはすごくうれしいです」と語り、「シーズンの初めからCSで優勝するために準備してきました。CSでもコート上でチームに貢献したい」と、この先を見据えた。

ケビン・ブラスウェルHCは小川敦也の成長を期待していたという [写真]=B.LEAGUE

 この日の小川は、記者会見の最後に現れたにも関わらずユニフォーム姿のままだった。聞けば、「ウエイトトレーニングとシューティングをしていました」と明かし、ホーム・アウェーに関係なく試合後でも可能な限りワークアウトに励んでいるという。

 比江島慎は、今シーズンの強さを語る上で「若手の成長」をポイントに挙げた。その言葉に応えるように小川は言う。「先輩方の力になりたい」

 自分が成長した分だけ、チームがリーグ優勝に近づく。そう信じて、小川敦也は静かに牙を研ぎ続ける。

文=小沼克年

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