2025.10.30

“ミスター・アルティーリ”大塚裕土が今季限りの引退を表明「このクラブを成長させる人材になっていきたい」

今季限りの引退と今後について語ったA千葉の大塚裕土 [写真]=B.LEAGUE
フリーのスポーツ専門編集者&ライター

 10月29日、アルティーリ千葉大塚裕土が2025-26シーズンをもって現役を引退することを発表した。レギュラーシーズン10試合目のアルバルク東京との一戦後(B1第6節)に記者会見が行われ、その心境と経緯を語った。

「クラブ創設から関わらせていただき、きっとアルティーリで引退するのだろうなと常々思ってきました。日本で人々を魅了できる素晴らしいクラブになれるよう、自分なりに毎年貢献してきたつもりです。まだシーズンは始まったばかりなので、チームをステップアップさせられるよう、自分ができることを全力で頑張っていきたいです」

 今シーズンでプロ16年目、現在38歳の大塚は、アルティーリ千葉が創設された2021-22シーズンから主将を務めてきた選手。チームは創設5年目にB1にたどり着き、その歩みは一見順調に見えるが、「3年目でB1」という目標に照らし合わせれば、草創期のメンバーの意識の共有、初年度でB2昇格を果たしたもののその後2年連続でB1昇格を阻まれるなど、産みの苦しみも経験してきた。大塚はその中心で常にリーダーシップを発揮し、チームを良い方向へと導いてきた。

 記者会見に同席したクラブの新居佳英代表取締役CEOからは「経営者と選手という関係を超えて、ともにチームを作ってきた同志であり、“ミスター・アルティーリ”のような存在。残念で寂しいが、本人の決断を尊重したい。今後も何かしらの形でクラブに関わってもらいたい」と最大級の労いの言葉をかけられた。

新居佳英CEO(左)は「ともにチームを作ってきた同志」と労った [写真]=B.LEAGUE

 一方で、その決断とタイミングには、プロとしての矜持(きょうじ)と厳しさが入り混じっていた。大塚は過去2シーズン連続でB2の3ポイント成功率リーダーに輝いているが、プレータイムは減少。昨シーズンは1試合平均14分11秒、今シーズンはここまで3分47秒に止まっていた。

「引退については、アルティーリ千葉に来る以前から考えていたことです。プロ選手として結果を残せなかったらいつユニホームを着られなくなってもおかしくないという危機感を持っていたので、年齢を言い訳にせず頑張ってきました。

 ただ、コートに立てなければ、それも叶わなくなってしまうので。昨シーズンからプレータイムが減り、今シーズンもコートに立つ機会が少なくなるなか、タイミング的には“もしかしたら今なのかな”と。プレシーズンゲームのころから考えていたので、その辺りでクラブに相談させていただいたのが(決断する)始まりでした」

 大塚は「体はまだまだ動く」と言い、「正直、もしかしたら他のクラブに行けば、もっと出させてもらえるのかなと思ったこともありました」と複雑な思いも吐露した。

「正直、あと1年、Bプレミアに挑戦したい気持ちはありました。でもチームから求められることと自分のパフォーマンスが噛み合うことは難しい状況ですし、その部分は自分にはどうすることもできません。ただ、シーズンが終わって、チームが編成を決めるときに、Bプレミアでは(編成の)ルールがどうなるかわからない中、『アルティーリでは』と言われて、“あ、今シーズンが最後だったのか”とは正直、(あとから)思いたくはなかった。

 いい状態のまま辞めること、メディアの方やファンの皆様もそういう目で見られるのは違うと考え、新居CEOはじめいろんな方と相談して決めました。違う形でこのクラブを成長させる人材になっていきたいと思います」

 アルティーリはこの日、アルバルク東京相手に延長にもつれ込む接戦を演じたものの、惜敗。それでも初のB1シーズンでその強度に慣れながら、強豪チーム相手に渡りあったゲーム内容は、着実に自分たちの成長の証となったことは間違いない。

 19得点をマークしたチーム在籍3年目の黒川虎徹は大塚の存在について問われると、次のように答えた。

「チームにとっては精神的支柱です。チームが大崩れしないのは、やっぱり裕土さんがいるからだと思います」

 アルティーリ千葉は、4勝6敗の東地区6位。残りのレギュラーシーズン50試合でどのような戦いを見せるのか。大塚はコート内外でチームに自身の経験を還元していくつもりだ。

取材・文=牧野豊

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