2020.03.13
「最大限の努力」――これは、アイラ・ブラウンを語る上で欠かせないキーワードと言って良さそうだ。
昨年8月の3x3男子日本代表第2次合宿から代表候補メンバーに名を連ねているブラウンは、同11月の第3次合宿に続いて1月6日からの第4次合宿にも参加。もちろん、強靭なフィジカルを含めた高い身体能力とプレースタイルの幅広さを必要とされての招集であり、加えてブラウンには2012年にアメリカ代表としてFIBA 3x3世界選手権(現FIBA 3x3ワールドカップ)に出場した経歴もある。経験が重要とされる3x3において、その点が大きなアドバンテージになることも見込んでいたに違いない。
しかしながら、ブラウンがプレーした当時は3x3が競技として成立したばかりの時期。その後日本で5人制の選手として成功を収めてきたブラウンは、今回の代表候補入りまで3x3の選手としては長いブランクがあった。
その上で、ブラウンは自身の適応能力に自信をのぞかせる。
「日本で初めて3x3をプレーするにあたって、非常に有効に使えるセットプレーが日本にはあるので、それを覚えること。すごく速いゲーム展開だということもわかっているし、それはすぐに身につくと思う」
日本代表については、「昨年のワールドカップでポーランドに勝った試合を見た。世界3位の国に勝ったのだから、うまくやれば日本は十分に勝てる。金メダルのチャンスもまったくないわけではないと思う」と可能性を感じている様子。その中で自身が果たすべき役割についても、「自分はオールラウンダーだと思っている。チームとしてはポストプレーが足りないので、自分がポストに立ってそこからスクリーンをかける、ポップする、スリップするといったプレーを意識して、慣れていく必要がある。それがうまくできるようになると、チームも活性化されていい結果につながっていくと思う」としっかり見定めている。
そして何よりも、ブラウンが持つ最大の武器は高いモチベーション。日本国籍を選んだ誇りと、最高峰の舞台に立ちたいというアスリートとしての本能が、そのモチベーションの高さを生んでいる。
「5人制でもそうであったように、3x3でも自分の最大限の努力をしたい。日本の国民として、オリンピックに選ばれることをいかに誇りに思えるかということを考えると、こんなに夢みたいなことはない。子どもの頃は誰もがオリンピアンになりたいと一度は思っただろう。今はそれが現実になりつつある。だから僕は、その機会が与えられるのであれば、自分が持っているものを最大限に発揮して貢献したいと思う。5人制の代表から外れて仕方なく3x3をやっているわけではない。こういう機会を与えられたことに感謝しているんです」
ブラウンは現在37歳。決して若いとは言えない年齢だが、現在B1西地区で首位争いを演じる大阪エヴェッサの躍進の原動力となっていることは誰の目にも明らか。当の本人も「自分は熟成したワインのような感じ。歳を取れば取るほどうまくなっていると思う」と胸を張る。高いモチベーションで「最大限の努力」を重ねていくブラウンが、38歳の誕生日を迎える今夏に日本代表を引っ張っている姿を見る可能性は決して低くない。
文=吉川哲彦
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