2021.05.29
「第96回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会 ファイナルラウンド 」は、川崎ブレイブサンダースの7年ぶり4度目の優勝で幕を閉じた。
佐藤賢次ヘッドコーチが「最高の相手と最高の試合」と表現したように、宇都宮ブレックスとの決勝戦はどちらに転んでもおかしくない好ゲームに。それでも川崎は、この大一番でも一人ひとりが自らの役目を果たし、76−60で長年のライバルを撃破した。
「去年の悔しい敗戦というのは、ここ(さいたまスーパーアリーナ)に来たら思い出すんですけど、こうして1年越しにリベンジできたというのは本当に最高です。本当にこのメンバー、このチームで優勝したかったので、それがまずこの天皇杯で達成できたのはうれしく思います」
試合後の記者会見でそう優勝の喜びを語ったのは、第3クォーターにリードを広げる連続3ポイントを突き刺した辻直人だ。
「前半は最近のリーグ戦のようにシュートへの迷いが出てしまいました。自分の流れでシュートが打ち切れなくて、中々自分のプレーができなかったです」と、計4本のシュートを放つも、辻は前半を無得点で終えた。それでも、後半はチームメートが発破をかけてくれたお陰で本来の姿を取り戻した。
「ベンチにいた (大塚)裕土さん、熊谷(尚也)、長谷川 (技) が声をかけてくれて『今日試合出てんのか?』と。それで気持ちが楽になって、後半のあのシュートにつながりました」
第3クォーター開始3分52秒、篠山竜青のパスを受けコーナーの位置からこの日1本目を沈めた辻。次のポゼッションではポンプフェイクで相手を先に飛ばせ、左45度の位置から落ち着いて長距離砲を射抜いた。辻の得意とするパターンで初めて点差を2ケタとした川崎は、このリードを最後まで守り切った。
今回の決勝戦を振り返ると、両チームの3ポイント成功率が勝敗を分けた1つの要因と言える。この試合、宇都宮の29本中8本成功(27.6パーセント)という確率に対し、川崎は26本中11本(42.3パーセント)の3ポイントを沈め相手から76得点を奪ってみせた。
珍しく雄叫びを上げ、会場を煽った大塚裕土の3ポイントにファンは酔いしれたことだろう。勝利の立役者の1人である増田啓介も両チーム最多の3本成功させた。第4クォーター終盤に決めたニック・ファジーカスの一発も勝利を大きく近づけるものだった。
辻の他にもこの日の川崎の3ポイントはいくつもハイライトがあったが、辻は自らのシュートを自画自賛した。
「みんな言ってくれないですけど、我ながらええとこで決めたなと。またおいしいところを持っていったなって感じています」
今回の天皇杯制覇は川崎にとっても、辻にとっても1年越しのリベンジだった。
昨年の天皇杯ではアクシデントが重なったチームを懸命なプレーで引っ張り続けたが、惜しくも準優勝チームとして会見場に現れた辻。当時はあまりの悔しさから涙をこらえる場面もあった。しかし今年は、見事にその雪辱を果たし笑顔で大会を終えた。
生え抜き選手としてチームに多くのタイトルをもたらしてきた辻は、7年前の天皇杯優勝も経験している。「7年前のことは覚えてないです(笑)」と笑いを誘ったが、昨年の悔しさを誰よりも知る辻だからこそ、人一倍優勝への想いは強かったはずだ。辻は現在のチームにも自信を持っており、「去年の悔しさを知っているメンバー」でもう一度頂点へのチャレンジがしたかったと明かす。
「去年はコロナ(新型コロナウイルス)の影響でシーズンが終わってしまって、チャンピオンシップをやっていたら僕たちが優勝できた自信もありました。今シーズン始まってからなかなかうまくいかずにチームが少し落ちてしまった時期もありましたが、みんなで話し合った結果、チームが1つになって川崎ブレイブサンダースらしくなってきました。本当にこのメンバーはすごく大事な存在です。仲がいいだけではなく切磋琢磨していますし、このチームで目標を達成したいと思っていました」
「このファイナルの舞台で、それぞれがやるべきことを果たせたというのは自信につながります。この経験はそう簡単にはできないですし、今後のリーグ戦やチャンピオンシップにつながると思っています」
目標は1つ達成した。次はBリーグ初年度にあと一歩のところで成し得なかったものを、全力で獲りにいく。
文=小沼克年
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