2020.03.17
再開初戦で対戦した東地区のライバル同士の一戦は、非常に緊迫した見応えのあるゲームだったことは、まずここに記しておきたい。3月15日に行われた、サンロッカーズ渋谷がホームの青山学院記念館に秋田ノーザンハピネッツを迎えた一戦。アリーナの外には「本日は無観客試合です」という張り紙が貼られ、入場時には検温と消毒、さらに取材陣はマスクを着用するなど厳戒態勢の中でゲームはスタートした。
試合が始まっても、みんなから愛されているサンディーやサンロッカーガールズによるパフォーマンスは感染拡大予防の観点から行われず、音楽とMCの声が会場内を包み込んだ。逆に今まではなかなか聞き取れなかったベンチからの指示や選手同士の会話、選手の心の叫び声、レフェリーのコールや会話などがハッキリと聞こえるような状況。ある選手は「まるでスクリメージ(練習試合)のようだった」と試合後に話すほど、すべてが初めてで、「通常開催」がどれだけ幸せなことなのかを感じ取れるゲームでもあった。
第1クォーターは秋田がボールマンに対して激しくプレッシャーを掛けるスタイルが功を奏し、ロースコアながらリードを手にする。第2クォーターに入ると、渋谷もリングに積極的にアタックする姿勢でリズムを取り戻し、逆転に成功。それでも、中山拓哉や細谷将司の躍動感溢れるドライブで秋田が終盤に再逆転し、35-37の接戦でハーフタイムを迎えた。
第3クォーターに入っても一進一退の攻防が繰り広げられる。渋谷が持ち味であるオールコートディフェンスでプレッシャーをかけ続け、相手に気持ち良くプレーさせない。しかし、秋田は外れたシュートに対して何度もオフェンスリバウンドを奪取して、セカンドチャンスを作ってスコアにつなげる。お互いに我慢の展開が続いた。
第4クォーター残り3分13秒、秋田は小気味よいボール回しから最後は古川孝敏が3ポイントを沈めて、勝利を手繰り寄せたかに見えた。しかし、渋谷も負けてはいない。広瀬健太が3ポイントシュートを2本連続で沈め、息を吹き返す。残り1分40秒に2本目の3ポイントを決めた際には、コーナーにいた石井講祐に対して「ワンパス!」と叫んでボールを呼び込み、確実にシュートを沈めた。SR渋谷のチームケミストリーの高さを感じる場面だった。このプレーでSR渋谷が完全にゲームの流れを握ったように見えた。その前からいいディフェンスを見せていたが、広瀬の3ポイントの後には秋田から2本のターンオーバーを誘い、最後は山内盛久がスティールからファストブレイクを決めて勝負あり。84-79でSR渋谷が勝利を収めた。
「第4クォーターにリードしてから相手に追いつかれてしまった弱さ、そしてラスト2分間のゲームの組み立て方がポイントでした。渋谷さんのプレッシャーを受けてターンオーバーをしてしまった。非常に苦しい試合だったし、課題がよく見えたゲームでした。その中でも収穫はたくさんあったと思います。一番嫌だったのは相手に対して嫌な印象や弱気な印象を思ってしまうことでした。その中で昨日勝てて、そして今日も終盤までリードを作れたのは大きな収穫でした」
一方、SR渋谷の伊佐勉HCは前日の敗戦に危機感を抱き、その思いをストレートに選手たちに伝えていたという。
「昨日は終盤まで勝っていたけれど勝ち星が付かなくて……、総合的に相手よりもファイトする気持ちが負けていて、今日もし負ければチャンピオンシップには行けないという旨を選手たちに伝えました。試合前には戦術的な話もしましたが、実際はバスケットの指示よりも、どれだけ勝ちたいのかを話しましたね。試合中も同じことを話しましたし、その中で今日勝てて、選手たちには最後にお礼を伝えました。今日は秋田さんというCSを狙う同地区直接対決でもありましたし、西地区の滋賀さんや京都さんも追いついてきていて、危機感しかない。その中で欲をいうと連勝したかったけれど、まずは今日勝てて良かったと思います」
このライバル対決は、あと4戦続く。お互い手の内を充分理解している中でポイントとなるのは、負けたくない気持ちを全面的に出すことなのかもしれない。まさしく意地を懸けて、両者は今後もぶつかり合うだろう。そんなことが見えた一戦であった。
文・写真=鳴神富一
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