2021.06.04
「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2020-21」で琉球ゴールデンキングスと対戦する富山グラウジーズ。シーズン開幕前の下馬評は決して高くなかった富山を、CSの舞台へと引き上げた立役者はジュリアン・マブンガだろう。アシスト王を獲得するなど、富山移籍1年目からチームの中心として躍動したマブンガは、「CSではエナジーをセーブすることなく思い切りぶつかりたい」と最後まで全力を尽くす構えだ。
文=横田直
今シーズンマブンガは53試合に出場し、平均出場時間34分34秒でリーグ1位のタフネスさを発揮した。平均7.4アシストはリーグ1位、平均20.7得点もリーグ3位タイと、オフェンス面の貢献度は突出している。「アシスト王を獲得できたのは自分の力というより、他の選手によるところが大きい。富山にはタレントがそろっている」と、マブンガはチームメートを讃えた。
マブンガは京都ハンナリーズ時代の2018-19シーズンにもアシスト王に輝いており、この際はデイヴィッド・サイモンとの2メンゲームが冴え渡っていた。今シーズン、新たなチームで関係性を築き直す中で、マブンガが例に挙げたのは宇都直輝、ジョシュア・スミスとのコミュニケーションだ。
ともにハンドラーを務めるマブンガと宇都が同時に出場することで相乗効果を生み出せるのかは、多くのバスケファンが注目していた点だろう。富山在籍5シーズン目の宇都は、これまでおおむね30分前後のプレータイムを得てきた。今シーズンの平均出場時間は23分13秒と過去最短で、ベンチを温める時間が長かったように感じる。それでも、マブンガと共闘する場面は毎試合あり、マブンガは「ナオキとはカッティングやポストのタイミングについて、要望などを話し合ってきた」とし、互いのスペースを生み出せるようになったことを喜んだ。
マブンガとスミスは2017-18シーズン、京都で一緒にプレーしている。しかし、このシーズンは外国籍選手の同時起用が各クオーター最大2人までで、合計6人となるよう「オン・ザ・コート」の数を割り振るレギュレーションだった。さほど長い時間同時出場していたわけではなく、むしろ今シーズン終盤に富山が外国籍選手2人体制で臨んでいた約20試合で、両者の関係性がより深まった印象だ。
この時期、スミスはハイポストからダイブし、得点を量産するようになっていた。昨シーズン序盤右ひざに大けがを負い、1年がかりで復帰したスミスは、序盤戦はプレータイムを制限したうえで、リング下でのプレーを主体としていた。スミスのコンディションが向上し、より動きのあるプレーを行えるようになったことは、相手にダブルチームを仕掛ける間を与えない点でも有益だった。「ジョシュ(スミス)にどのようなパスを出せばいいか。どの高さ、どこでボールを受けると彼は力強くプレーできるのか。それらを要因とし、私のアシストも増えた」とマブンガは手応えを感じている。
マブンガは西地区の滋賀レイクスターズ、京都でプレーし、琉球との対戦経験を豊富に持つ。Bリーグ開幕以降の3シーズンはそれぞれ6度対戦しており、琉球がすべて4勝2敗で勝ち越した(中止の昨シーズンは琉球の3勝1敗)。ただし、マブンガ個人でいえば琉球と4シーズン21試合を戦い、18試合で2桁得点、うち9試合で20点以上を挙げる「琉球キラー」ぶりを発揮している。
「私の仕事は、スコアでなくプレーメーク」と強調するマブンガは、得点数と同様にアシスト数を調子のバロメーターとする。対琉球という点でも、滋賀時代や京都でのキャリア前半は、アシスト数が伸びていない。しかし、2018-19シーズンの後半3試合と、2019-20シーズンの4試合は味方との関係も醸成されてきたのだろう、マブンガは7試合中5試合で得点とアシストのダブルダブルを達成している。今年2月、琉球と2試合を戦った際のマブンガは、負傷明けで調子は回復途上だった。第1戦は10得点2アシスト、第2戦が26得点5アシストという成績は本人とすれば不本意なものだっただろう。
富山のレギュラーシーズン最終節、レバンガ北海道との第1戦でマブンガは8得点に終わったものの、今シーズン最多の15アシストを挙げ99-68の勝利に貢献した。「インパクトを与えることができた試合」と、マブンガは自らの完全復調と、チームメイトとの連動性に自信を深めている。
琉球との決戦で、マブンガはドウェイン・エバンスとのマッチアップ、あるいは互いに攻撃を司る存在としての争いが勝敗のカギを握りそうだ。また、ジャック・クーリーとは米国で一緒にワークアウトした旧知の間柄だという。「クーリーは試合中もしゃべることが好きな選手。そういったことに惑わされず、自分たちのバスケをしたい。エバンスは攻守ともに素晴らしい選手であり、マッチアップすることにエキサイトしている」。楽しげに語るマブンガだが、富山と同様、自らもCSでの勝利経験はなく「生き残るか、家に帰るかの戦い」と闘志を燃やしている。
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