2021.05.17

【プロ野球】川崎憲次郎 ×【Bリーグ】伊藤俊亮対談〜ポストシーズンを勝ち抜く秘訣を優勝経験者が語る!

プロ野球OBの川崎憲次郎氏とBリーグからは千葉ジェッツOBの伊藤俊亮氏がポストシーズンを勝ち抜く秘訣を語り合った
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Bリーグのチャンピオンシップがついに開幕した。リーグの頂点を目指す激しい戦いが繰り広げられることになるのだが、そこには経験したものしかわからない勝つための機微があるはず。今回、東芝(現川崎ブレイブサンダース)、リンク栃木(現宇都宮ブレックス)などで優勝経験を持つ伊藤俊亮氏に加え、ヤクルト・スワローズで日本一、MVPの実績を持つ川崎憲次郎氏に短期決戦の必勝法についてお話をうかがった。

聞き手=田中 大貴、構成=吉川哲彦

Bリーグのファイナルには魔物がいる魔物が住んでいる?!

田中 伊藤さん、いよいよBリーグのチャンピオンシップ(以下CS)が始まりました。

伊藤 本当に楽しみです。コロナ禍の中、無観客開催の対戦もありますが、こういう状況でもいろんな方に届けられるものがあると思うので、みんなで頑張ってほしいですね。

田中 川崎さんはBリーグ、バスケットボールとの関わりはいかがですか?

川崎 何年か前のオールスターを観戦したことがあります。雰囲気はとても良いですよね。臨場感がすごくありますね。

田中 それでは本題に入っていきたいと思いますが、Bリーグとプロ野球のポストシーズンについて似ているところと違いについて、お話をうかがいたいと思います。

伊藤 長いシーズンを戦った後にトーナメントが待っているのは同じだと思いますが、プロ野球に比べるとまだ試合数が少ないので、そこはプロ野球に追いつくべく頑張っていかないといけないと思います。

川崎 野球は試合数がたくさんありますからね。バスケットの場合はそんなに毎日毎日走れないですよね?

伊藤 Bリーグができる前からの流れで毎週土日に試合があって、今やっと平日にも試合が行われるようになってきているんですが、ケガのないように、疲弊しすぎないようにスケジューリングする体制をまだ整えられていないのが現状です。

田中 プロ野球のプレーオフとも言えるクライマックスシリーズ、セリーグ、パ・リーグの2位と3位チームで争われるファーストステージの勝利チームとセ・パ優勝チームで争われるファイナルステージは、リーグ優勝のチームに1勝のアドバンテージが与えられます。これはBリーグにはない仕組みですよね。

伊藤 ありません。レギュラーシーズンの結果が反映されていることはわかりやすいし、リーグ戦を戦ってきてそういう形で得られるものがあるのは良いなと思います。

川崎 短期決戦で1勝のアドバンテージがあるのは大きいですし、どれだけゲーム差が離れていても1勝なのはどうかなと思ってはいるんですが、アドバンテージがあるのは当たり前のことだなと思いますね。

何が起こるのか予測不能のファイナルには魔物が住んでいる!?[写真]=B.LEAGUE


田中 Bリーグファイナルを振り返ると、過去3回はレギュラーシーズンの成績下位のチームが勝って優勝しています。伊藤さんが所属した千葉も2シーズン続けて成績下位のアルバルク東京に敗れていますが、ファイナルにはやはり魔物がいるんでしょうか?

伊藤 リーグでどれだけ勝っても、ファイナルの勝ち方は全く別の勝ち方になってくる。千葉の場合はCSでホーム開催権を獲得するにはどれくらい勝たなきゃいけないのかということをやっていて、ファイナルまでは進めてもそこで勝つ準備ができていなかったというのが、私がいた時にはありました。

短期決戦には欠かせないリーダーの存在

田中 ありがとうございます。ちょっと話題を変えまして、ポストシーズンで勝てるチームにはこんなことが起きているという実体験をおうかがいしたいんですが、川崎さんは何かエピソードはありますか?

川崎 また93年の話になるんですが、第4戦の飯田哲也さんのスーパーバックホームと、第7戦の古田敦也さんの走塁。この2つに共通するのが「ベンチのサインを無視した」ということなんですよ。あれだけデータ野球と言っていた野村監督が、その2人には「直感を信じろ」と言っていたらしいんです。その2人がすごいプレーをして、それが日本一につながったと僕は思ってます。本当はダメなんですよ、サイン無視なんてしたら絶対に後で何か言われますから(笑)

伊藤 川崎さんのおっしゃる通りで、最後は個人の判断に委ねられるので、直感が勝ることはよくあると思います。細かいルールでチームを作り上げていくんですが、それだけでは勝てない。大逆転が起こる時、不利がひっくり返る時というのはコーチの指示以外のところでうまくいくことが多いですね。栃木時代のファイナルで延長にもつれこむ川村卓也(現シーホース三河)の3ポイントシュートがあったんですが、残り数秒のスローインでパスを受けるのが田臥勇太(現宇都宮ブレックス)か川村という話だったのに、パスを受けたのは私でしたから(笑)

田中 短期決戦で大切なことといえばリーダーの存在もあると思うんですが、「この人すごいな」と思ったリーダーはいましたか?

川崎 古田さんは非常に心強かったですし、守りの要のキャッチャーにああいう人がいるとチームがまとまりやすいですよね。古田さんが一言言えば「じゃあその方向でやっていこう」と決められるところはありましたね。

伊藤 千葉の大野篤史ヘッドコーチですね。僕とは歳も近いのですし、苦労してチームを作って結果を出したところを見ているので、リーダーとして素晴らしかったなと思います。あと、富樫勇樹千葉ジェッツ)はここでなんとかしなきゃいけないという時に本当になんとかしちゃうんですよ。頼もしかったですし、こんな人間がいるんだと思ったのを覚えてますね。

田中 では最後に、ご自身がチームの優勝のためにやってきたこと、果たしてきたことを教えてください。

川崎 自分のためでもあるんだけど、でもやっぱりチームプレーなので、自分の存在をわきまえないとダメですよね。僕も93年はケガあがりで何の実績もない選手だったので、とにかくもうチームのために一生懸命働くんだと。それ以外は一切考えなかったですね。

田中 ちなみに勝負の時のルーティーンは何かありました?

川崎 はい。球場に行く時に同じ道を通るとか、同じ下着を穿くとか、たくさんありますよ。で、負けたら全部変えるんです。野球選手はゲン担ぎがめちゃめちゃあります。

伊藤 私も同じで、チームのために働けるかどうかだと思います。個人的にやっていたのはずっとエネルギーを出し続けること。声をかけ続けることでもいいし、そういう小さなことからやっていく。ルーティーンとかゲン担ぎもその一環だと思っていて、勝つために何をすればいいかとなった時に、「この間勝った時は何が原因で勝てたのか」と考えて、細かいことや一見関係ないことでもかき集めて、この一戦に絶対に勝つんだという気持ちでいられること。それが短期決戦や大事な一戦の勝利につながるんじゃないかと思います。

田中 身近な一つひとつのことが大事なんですね。お二方、今日はありがとうございました!

「チームのために働けるかどうか」、伊藤俊亮氏はそれを常に心に刻んでいたという [写真]=B.LEAGUE

川崎憲次郎
1971年、大分県生まれ。津久見高校から1988年ドラフト1位でヤクルトスワローズ入団。プロ1年目から一軍で活躍し、90年から2年連続2桁勝利を挙げた。93年の日本シリーズではMVPを獲得するなどの活躍で日本一に貢献。
98年には17勝を挙げて最多勝利投手と沢村賞を獲得した。2000年のシーズンオフに中日ドラゴンズにFA移籍したが、肩の故障のため1勝もできず、2004年限りで引退した。
現在は野球解説者として活躍している。また地方再生のプロデューサーとしても活動中。
伊藤俊亮
神奈川県立大和高校を経て、2002年中央大学卒業。
現役時代は強靭な肉体と204センチの長身に走力を兼ね備えたフィジカルプレイヤーとして日本代表でも長きに渡って活躍。2018年5月、千葉ジェッツでのシーズンを最後に16年間に渡る現役生活に幕を下ろした。引退後、千葉ジェッツのフロントスタッフとして職務に就いていたが2019年に退職。現在はその豊富な経験を生かし、バスケットボールの普及に努めている。

日本生命 B.LEAGUE FINALS 2020-21
GAME 1:5月29日(土)15:05
GAME 2:5月30日(日)15:00
GAME 3:6月1日(火)19:05
※2戦先勝方式、GAME 2で優勝決定の場合はGAME 3の実施なし
【試合会場】横浜アリーナ

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