2022.06.09
秋田ノーザンハピネッツの保岡龍斗は3x3日本代表として東京2020オリンピック競技大会に参戦。そして2022年2月、「第19回アジア競技大会(2022/杭州)」に向けた強化合宿で初の5人制日本代表入りを果たした。そんな“二刀流”プレーヤーに、日本代表、3x3、Bリーグについて話を聞いた。
インタビュー=バスケットボールキング編集部
写真=秋田ノーザンハピネッツ、Getty Images、B.LEAGUE
ー「第19回アジア競技大会(2022/杭州)」に向けた日本代表候補に選出され、2月7日から10日にかけて強化合宿に参加しました。感想を聞かせてください。
保岡 若手選手中心のメンバーではありましたが、自身初となる5人制の日本代表だったので、自分の持ち味をしっかり出したいと思って合宿に臨みました。日本代表のアシスタントコーチも務めた(秋田の)前田顕蔵ヘッドコーチからチームのバスケットに似ていると聞き、ディフェンスでも、オフェンスでもアグレッシブにプレーしていこうと思っていました。また、エヴァンスルーク(ファイティングイーグルス名古屋)選手の次に年齢が高かったので、オンコートでもコミュニケーションを取り、リーダーシップを発揮していこうと。短期間の合宿ではありましたが、積極的に声を出し、プレー面でも持ち味をアピールできたと思っています。
ートム・ホーバスヘッドコーチからどのようなアドバイスをもらいましたか?
保岡 シュートを直してもらいました。あとは練習中、ミドルレンジのジャンパーを打って、入ったシーンがありました。トムさんはミドルジャンパーをあまり好まないので、自分から「このシュートはいいんですか? ダメなんですか?」と聞きにいきました。笑いながら「入りましたよね」と言ってくれて、「はい、入りました」と答えたところ、「じゃあOKです」と(笑)。戦術面についても何度か話をしたので、積極的にコミュニケーションを取ることができました。
ー「シュートを直してもらった」とは?
保岡 自分はボールを少し下げてしまう傾向があり、それでは上げるのに時間が掛かって、ディフェンスに寄せられてしまいます。国際大会では自分よりも背の高い選手が多いので、一瞬のシュートチャンスがなくなってしまう。「ボールをあまり下げず、もらった位置からシュートに持ち込んだほうがいい」とアドバイスしてもらいました。あとはアーチの部分。「もう少しだけ高くしたほうがいい」と指摘され、それらはチームに戻ってからも意識しながら練習しています。
ー改めてホーバスバスケの印象を聞かせてください。
保岡 トムさんのルールがある中、選手の判断を尊重してくれます。もちろん、オフェンスでのフォーメーションはありますが、自分がいけると思ったら、そのフォーメーションをやらないで崩してもいいと。ディフェンスは秋田のシステムと似ている部分があり、僕だけではなく、ほかの選手も同様にアグレッシブなディフェンスを求められていると思います。
ーホーバスバスケでの課題は見つかりましたか?
保岡 少ない日数だったので、トムさんのバスケに対する明確な課題は見つけづらかったかもしれません。ただ、練習前のミーティングで「今は特別なシューターを探している」と言っていました。自分はレンジ関係なくシュートを打てますが、その確率があまり高くありません。高確率で決めていければ、いいアピールになると思っています。3ポイントラインはもちろん、その後ろからでもしっかりとシュートを決められる力があれば、ワールドカップの予選に呼んでいただけるチャンスも出てくると思います。
ー今シーズン開幕前は3人制の日本代表として東京オリンピックに出場しました。チームに戻り、大舞台での経験がどのように生かされていると感じますか?
保岡 3x3はコーチがいないので、自分たちが試合の状況を読み、「ああしよう、こうしよう」とコミュニケーションを取りながら、短い時間でプレーします。秋田に戻ってきて、ゲーム中などで「今はこうしたほうがいいんじゃないですかね」と先輩方にも言えるようになりました。その中で古川(孝敏)選手なんかは「けど、こういう時はこうしたほうがいいと思う」と言ってくれたり、逆に「それでいいと思うからやってみな」と答えてくれたりします。3x3を通じてコミュニケーション能力がつき、今はそれがより発揮されていると思っています。
ー今後、3人制のキャリアについてどのような未来を描いていますか?
保岡 オリンピックはメダルまでもうひと踏ん張りだったので、すごくチャンスが見られて、次につながる大会でした。アイラ(ブラウン/大阪エヴェッサ)選手と富永(啓生/ネブラスカ大学)選手の合流が遅れた中、短い期間の練習でも6位までいけました。4人で1年、2年と時間を掛けていろいろな大会に出場すれば、海外の選手を相手にしても、もっと戦えるようになると思います。そういった手応えを感じたので、2024年のパリオリンピックも目指していきたいです。3x3を挑戦し続けたい一方、高校生の時から目標としていた5人制の日本代表に初めて選んでいただき、こちらで結果を残したい気持ちもあります。3x3はポイントに加えて経験も必要になってきます。Bリーグのシーズン中はなかなか難しいですが、シーズンオフには6月にベルギーでワールドカップが開催される予定なので、日本代表として出場し、まずは初の予選突破を果たして2年前の14位を上回りたい。9月には5人制のアジア競技大会も控えているので、オフシーズンのすべてを3x3に捧げるわけにはいきませんけどね。
ー贅沢な悩みですよね。
保岡 本当です(笑)。今では“二刀流”なんて呼ばれることもあります。どちらに選ばれたとしても手を抜くことなく、全力でプレーしていきたいです。
ー秋田での今シーズンについても話を聞いていきます。シーズンは折り返し地点に差し掛かりましたが、前半戦の戦いぶりを振り返ってください。
保岡 チームとしては上位陣相手に勝つことができていて、まずまずかなと思います。ただ、チャンピオンシップの出場圏(地区3位以内)に入っていないので、後半戦で巻き返さなければいけません。上位陣とは僅差で負ける試合も多かったので、どうすればそういった試合に勝てるのかをしっかりと話し合って取り組んでいけば、勝つチャンスが生まれるのかなと思います。個人としては序盤の10数試合がひどく、スタッツがあまり伸びていませんが、アルバルク東京戦以来はそこまで悪くないと思います。この調子でスタッツを上げていけば、自分もチームを手助けでき、チームがもっと良くなると思います。自分の持ち味のシュートやドライブ、激しいディフェンスを見せていきたいです。
ーお話にあった12月のA東京戦では第1戦で18得点、第2戦で12得点と、2試合連続で2ケタ得点をマークしました。前半戦のポイントになった試合なのでは?
保岡 昨シーズン(※2020年12月のA東京戦でチーム最多24得点を記録)といい、今シーズンといい、A東京戦で活躍できて、印象深いですね。後半戦もあの試合のようなプレーを続けていけば、チームにとっても、自分にとってもプラスになると思います。あのようなパフォーマンスをどの試合でも見せられるようにしたいですね。
ー東地区上位陣との対戦ではA東京から2勝を挙げている一方、千葉ジェッツとは3戦3敗、宇都宮ブレックスとは1戦1敗。後半戦において上位陣から白星を奪うにはどういったことが必要だと感じますか?
保岡 チームとしてターンオーバーがすごく多いので、まずはそこを減らさなければいけません。例えば、千葉はトランジションオフェンスの確率がものすごくいいので、自分たちがターンオーバーを多く犯してしまうと、その分をすべて得点につなげられ、自分たちの勝つ確率が低くなってしまいます。なので、まずはターンオーバーを減らすこと。オフェンスに関しては3ポイント成功率がリーグで1位。ディフェンスの効率も悪くないと思います。チーム全員がコミュニケーションを取って、意思疎通していけば、ターンオーバーの問題も改善できると思います。今後は同地区上位の川崎ブレイブサンダース戦も控えていて、そういった試合に勝たなければチャンピオンシップ出場はもちろん、クラブが掲げる日本一の目標にも届きません。上位チームに勝って、まずはチャンピオンシップ出場に向けて取り組んでいきたいです。
ーBリーグではアジア特別枠の選手を含め、ガードを本職とする外国籍選手が増えてきて、実際に試合でマッチアップする機会もあると思います。いい経験になっていると感じますか?
保岡 そうですね。3x3で自分よりも大きな選手、パワーのある選手、クイックネスのある選手を相手に戦ってきたことが自信につながっています。ここ最近、外国籍選手とマッチアップしても動じないというか。数年前までは「外国籍選手とマッチアップするのか」という思いもありましたけど、今はそういったことが全くなく、むしろ「外国籍選手相手にやってやろう」という気持ちのほうが強いです。
ー今シーズンも新型コロナウイルスの影響を受け、試合中止が相次いでいます。難しいシーズンを送る上で気をつけていることはありますか?
保岡 まずは手洗い、うがい。ケガをしないことも大事ですけど、やはり健康でいることが一番だと思います。自分は姿勢が悪く、肩が丸くなってきたり、骨盤が悪くなってしまうので、練習前の準備を怠らずにしています。
ー特別指定選手の期間も含め、秋田一筋でプレーしています。改めて、クラブへの思いを聞かせてください。
保岡 秋田には優しくて、熱いブースターが多いと感じています。大敗しようが、次の試合になったら変わらずに応援してくれますし、アウェイゲームでもピンクのシャツを着て観戦している方がすごく多い。自分たちは愛されているなと感じます。その思いを勝利、チャンピオンシップ出場などで恩返ししなければいけないと思います。個人としては秋田からオリンピアンを輩出するということを果たせましたけど、結果を出すことはできませんでした。秋田ブースターが望んでいるのは、秋田ノーザンハピネッツとして日本一になること。獲得ファイア(※バスケットLIVEの応援機能)は毎回のように1位ですし、そういった愛を結果で返していかなければいけないと思います。
ー秋田の生活はいかがですか?
保岡 雪はもう見たくないですね(笑)。僕はご飯を食べることが好きで、秋田はお米がすごく美味しいです。自然も多く、生活面でも好きな街ですよ。
ー最後に後半戦への意気込み、ファン・ブースターへのメッセージをお願いします。
保岡 自分たちが目指しているのは日本一。日本一になるためには、チームとしてもっと良くなっていかなければいけないですし、個人としてももっと成長していかなければいけません。まずはチャンピオンシップ出場を目指して、チーム一丸となって戦っていきたいです。ブースターの皆さんの応援は僕たちの後押しになっています。声を出すことはできませんが、皆さんの応援は僕たちのパワーになっています。前半戦以上に応援してくれればうれしいです。後半戦もともに戦いましょう。
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