2022.12.11

【トッププレーヤーの高校時代】モリス・ンドゥール(後編)「努力と我慢が大事」

名古屋Dのモリス・ンドゥールに学生時代の話を聞いた[写真]=B.LEAGUE
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 BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代のことを振り返ってもらうインタビュー企画「トッププレーヤーの高校時代」。今回は岡山県・岡山学芸館高校出身のモリス・ンドゥールだ。

 異国の地へやってきたンドゥールは、高校3年間でどのような成長曲線を描いたのか。今回は後編をお届けする。

インタビュー・文=岡本亮
写真=B.LEAGUE

――入学当初、日本のバスケのレベルはどのように感じましたか?
ンドゥール みんなスキルがあって上手だと思いましたが、バスケットIQはそんなに高くないな、と。練習ではうまいけど、試合になると自分の持っているスキルを発揮できない選手が多かった印象です。

――高校の練習はセネガルにいた時と比べてどうでしたか?
ンドゥール キツかったです。「走り過ぎだ」と思いました。セネガルでも走る時は走るけど、ひたすら走る練習はなかった。スキルやファンダメンタルの練習が多かったので、日本の練習は変わっていると思います。でも、当時は走らないと勝てないという考えだったので、ずっと走っていました。

――厳しい練習を乗り越え、1年次のウインターカップで全国デビューを果たしました。
ンドゥール 1年生の時のことはあまり覚えていないですね。セネガル人の先輩がずっと試合に出ていたので、試合に出る機会はあまりありませんでした。

――2年次からは主力として活躍し、インターハイ出場は逃したもののウインターカップへ出場。1回戦は勝利するも、2回戦で強豪・北陸高校と対戦し、75-88で敗れました。
ンドゥール その試合は覚えています。絶対に北陸に負けたくなかったですし、絶対に倒したいと思っていたので。相手の中国人留学生がうまくて結果的に負けてしまいましたが、岡山学芸館に入って本当に良かったと思いました。

――3年次のインターハイでは3回戦の新潟商業高校戦で70-78と惜しくも敗れました。
ンドゥール 私個人の力だけで全国大会を勝ち抜くのは難しいと思いましたね。チームメートがステップアップしないといけなかった。相手は私にダブルチームやトリプルチームを仕掛けてきて、そういう時でも「頑張って何とかしないといけない」と思っていましたが、それでは試合には勝てません。

――そのようなディフェンスを仕掛けられるのは初めてだったのですか?
ンドゥール セネガルではずっとガードをやっていたので。日本に来て「背が高いから」という理由でセンターをやることになったんです。

――チームとしてはどういうオフェンスシステムを組んでいたのですか?
ンドゥール 私がパスを受け取って、相手がダブルチームを仕掛けてきたらパスを捌いて、という感じでした。ですが、先ほども言ったとおりバスケットIQがそんなになかったので、試合ではなかなかうまくいきませんでした。

――3年次のウインターカップではベスト8へ進出。準々決勝で北陸高校と対戦するも、74-94で敗れました。
ンドゥール この試合のこともはっきり覚えています。2年生の時に負けていたのでリベンジしたいと思っていましたが、チームメートが北陸の選手にビビってしまっていて。試合中に話をしても、絶対誰かがビビっている感じがあったんです。

 試合が終わった時は「なんで負けてしまったんだろう」と思いましたが、後で見返すとその理由が分かって。北陸はどの選手もスキルとバスケットIQがあって、チームケミストリーもしっかりしていたので、この結果になりました。でも、岡山学芸館として初めてベスト8まで行けたのは良かったと思います。

――試合が終わった瞬間、どんな感情になりましたか?
ンドゥール その瞬間は寂しい気持ちになりましたが、翌日には次のプランを考えていました。日本の大学やプロへ進むチャンスがありましたが、アメリカへ行きたかったので学校を探していました。

――すぐに切り替えられるタイプなんですね。
ンドゥール そうですね。その日と寝る前は試合のことを考えますが、次の日にはもう考えません。

――高校3年間で印象に残っている選手は?
ンドゥール 北陸高校の中国人留学生・リュウ孟涛選手と、明成高校(現仙台大附属明成高校)の安藤誓哉選手。安藤選手は高校時代ものすごい選手でした。自信満々でプレーしている姿がとても印象的でしたね。

――高校3年間で最も成長できた部分は?
ンドゥール 努力すること。日本へ留学したからこそ培うことができたスキルです。技術的な部分では、センターながらボールを運んだり、3ポイントシュートを打ったりしていたのでさまざまなスキルを伸ばせたと思います。

――高校3年間で日本のどういうところが好きになりましたか?
ンドゥール 自分の身の回りをキレイにするところや、物を大事にするところ。例えば日本人はゴミを見つけたらゴミ箱まで持っていきますが、セネガル人はそういうことはしないので。日本に来て新たな文化を学ぶことができました。

――では、今日本へ来ている留学生や留学を考えている選手へアドバイスをお願いします。
ンドゥール まずは努力が一番。家族や友だちと離れ離れになるのはとても難しいことですし、アフリカと異なる文化がたくさんありますが、とにかく我慢しないといけません。現在日本に来ているアフリカ人留学生はなかなか我慢できないと聞いたことがあるので、「我慢」はとても重要なことだと思います。

――今の留学生が我慢できなくなった要因はどこにあると思いますか?
ンドゥール はっきりとした理由を言うのは難しいですが、メンタル的な強さがないこと、夢を持っていないことが要因の一つだと思います。今の留学生は努力や日本語の勉強を怠っていると聞くので、そこは学校がしっかりとサポートしてほしいですね。

ンドゥールは留学生へ努力や我慢の重要性を説いた[写真]=B.LEAGUE

PROFILE
モリス・ンドゥール名古屋ダイヤモンドドルフィンズ
セネガル共和国出身。岡山県の岡山学芸館高校へ留学し、1年次からベンチ入り。2年次からは主力となり、持ち味の長身を生かして得点、リバウンドを量産し、3年次のウインターカップではチームをベスト8へ導いた。高校卒業後アメリカの大学へ入学し、卒業後の2015年にスペインの強豪であるレアル・マドリードへ入団。2016年にはニューヨーク・ニックスと契約するも1シーズンで退団し、リトアニアや中国などを経て今シーズンから名古屋Dでプレーする。

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