2023.07.18
BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代のことを振り返ってもらうインタビュー企画「トッププレーヤーの高校時代」。今回は岡山県・岡山学芸館高校出身のモリス・ンドゥールだ。
アフリカ西部にあるセネガル共和国で生まれ育ったンドゥールが、なぜ日本の高校へ留学することになったのか。今回は前編をお届けする。
インタビュー・文=岡本亮
写真=B.LEAGUE
――まずはバスケットを始めたきっかけを聞かせてください。
ンドゥール 始めたのは8歳から。それまではサッカーをしたり、友だちと遊んだりしていたのですが、母に勧められたので始めました。
――セネガルはサッカーが人気というイメージがありますが、バスケットボールの人気度は?
ンドゥール 昔は有名な選手がいなかったので、そんなに人気はありませんでしたが、今はみんなバスケをしています。代表チームがワールドカップへ出場するなど強くなって、注目度が上がったことが大きいですね。
――バスケを始めた当初、プレーする環境はどれほど整っていたのですか?
ンドゥール バスケットコートはそんなになかったですね。ボールを手に入れることすら難しかったので、自宅の前でサッカーボールでドリブル練習をしてみたり。でも、今では人気が上がったこともあって環境は良くなってきていますよ。
――モリス選手はどのチームに所属していたのですか?
ンドゥール 最初は小学校のチームじゃなくて、叔父が住んでいるところにあったクラブにいました。練習は水曜日と土曜日、日曜日と週3回やっていました。
――当時はどんな練習をしていたのですか?
ンドゥール 戦術的な練習はそんなにやっていなくて、ファンダメンタルを中心にドリブル、シュートの練習がメインでした。また、当時は大会があまりなかったので、他チームと競い合う機会も少なかったです。
――小学校卒業後中学校へ進学されたと思いますが、どこでプレーしていたのですか?
ンドゥール セネガルでは小学校、中学校にチームがあるケースはあまりなく、高校から日本の部活動のようなチームがあるんです。なので、小学校時代に所属していたチームで引き続きプレーしていました。
――中学校を卒業したのち日本へ留学することになりますが、そのきっかけは?
ンドゥール 当時日本に留学するつもりは一切なく、「どうやってアメリカに行こうか」ということを考えていました。ですが、15歳の時にトーナメントへ参加した際、そこに来ていた人から「日本への留学に興味はないか?」と聞かれ、その場で日本に行くことを決めました。そういうチャンスがあるなら、考えずに飛び込んでみようと思ったんです。
――それまで日本の文化に触れる機会はあったのですか?
ンドゥール 全くありませんでしたね。世界地図を見ても、日本がどこにあるか分かりませんでした。
――15歳で母国を離れ、岡山学芸館高校へ留学。日本へ来た当初、特に大変だったことは?
ンドゥール 言葉が通じなかったのがまずは一番大変でした。あとは決まった時間に学校へ行って、授業を受けて、練習をして、とスケジュールに沿って行動するのが大変でした。セネガルにはそういう文化がないので。バスケ部にセネガル人の先輩がいたので、さまざまな面で助けてもらいました。
――日本食はどうでしたか?
ンドゥール もちろんセネガルとは全然違いますが、カレーやチャーハンは似たような食べ物がセネガルにもあったので、よく食べていました。ですが、それ以外は難しかったですね。
――日本食で特に苦手だったものは?
ンドゥール 納豆(笑)。生魚も食べないので、寿司もキツかった。その2つは今でも食べられません。
――当時、留学生をサポートする体制はどれほど整っていたのですか?
ンドゥール (セネガルの公用語である)フランス語を話せる先生はいなかったですね。僕以外にも留学生はいましたが、みんな日本語はあまり喋れないので。日本語でコミニュケーションを取るしかなかったので、とにかく大変でした。
――入学当初はどんな授業を受けていたのですか?
ンドゥール 入学して半年はずっと日本語の勉強です。月曜日から金曜日までひたすら日本語を勉強し、半年経った後に日本人のいるクラスへ合流しました。勉強の甲斐もあり、その半年でかなり上達しました。
――留学当初、ホームシックになったことはありましたか?
ンドゥール ありました。日本に来て1カ月くらいで「もう帰りたい」と思いましたね。人生で初めて家族や友だちと離れ離れになったので寂しかったですし、自分にとって難しい状況でした。
――どうやってホームシックを乗り越えたのですか?
ンドゥール 毎週1回、10分ほど電話する時間があって、それが支えになりました。また、同じバスケ部にセネガル人の先輩がいたので、いろいろな話をして。その時に「男の子だから自分の力で乗り越えないといけないよ」と声をかけてもらい、なんとか頑張ろうと思いました。
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