2024.05.24
一番乗りでセミファイナル進出を決めたのは、広島ドラゴンフライズ。「日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2023−24」のクォーターファイナルで中地区王者の三遠ネオフェニックスから2連勝を収め、クラブに新たな歴史を刻んだ。
5月11日、まずは重要な初戦を77-70でものにした。2年連続でワイルドカードでのチャンピオンシップ出場となった広島にとって、ここまでは昨シーズンと同じ状況。1年前はここから千葉ジェッツに連敗してシーズンを終えた。
5月12日の第2戦も負ければ終わりの三遠に第3クォーターにペースを握られ、第4クォーターを前に5点ビハインド。豊橋市総合体育館のボルテージも上がり、このまま三遠が押しきるかと思われた。だが、制したのは広島だった。昨季の経験のみならず、今シーズン培った粘り強い守備で1年前の壁を越えてみせた。
「昨シーズンCSに出場できた経験は本当に糧になっていると思います。去年は千葉さん相手にまず我々が1勝しましたけど、そこからしっかりとカムバックされてしまった。その経験を今日の試合前にも選手たちには伝えましたし、『GAME1に勝った状況でもいいメンタルを保って、出だしから自分たちのやるべきことを集中してやろう』と話して試合に臨みました。今日の出だしも素晴らしかったですし、本当に選手たちが40分間戦い抜いてくれました。『自分たちがやり続けることで相手に何らかのほころびが出てくる。我慢強くやり続けよう』とも言い続けていましたし、第4クォーターにもミスを誘発でき、そこからいい流れに持っていけたことで勝利することができたと思っています」
追いかける状況となった第4クォーターでは、大事な場面で三遠のサーディ・ラベナがパスミスを犯すと、直後の攻撃でドウェイン・エバンスのキックアウトから山崎稜が3ポイントシュートを決めて逆転。残り2分43秒の失点以降は相手にが得点を許さず、69−66で歓喜の瞬間を迎えた。
「アイザイア・マーフィーのスタッツには見えないような活躍もあった。本当にみんながアグレッシブにプレーしながらも冷静さを保って最後まで戦い抜けたと思います」
今季B1トップの平均89.5得点をマークした三遠を、2試合とも70点以下に抑えての2連勝。指揮官は「言葉にならない本当にいい試合だった。選手たちが今まで積み上げてきたもの、犠牲にしてきたものが今日しっかりと報われたと思いますし、彼らの努力を讃えたい」と選手たちをねぎらった。
今シーズンの広島はクラブ創設から10周年の節目を迎えていた。今では就任3年目のミリングHCのもとで、日本代表メンバーにも絡む寺嶋良や三谷桂司朗、さらには中村拓人、上澤俊喜といった若い力も台頭。広島の未来は明るいと言っていいだろう。
けれど、歴史を振り返ればまだまだ苦い思い出の方が多いかもしれない。NBL時代の2015年には天皇杯で準優勝の好成績を収めたものの、Bリーグが誕生した当初はB2からのスタート。2016−17シーズンは勝てば昇格という一発勝負の「B1・B2入替戦」に敗れ、B1昇格を果たした2020−21シーズンは全20チーム中最下位という悔しさも味わった。
「今のメンバーで 1つでも多く試合がしたかった」。本拠地でのチャンピオンシップで勝利することができず、シーズン終了が決まったのだから当然悔しくてたまらない。それでも、大野HCは敗戦直後にも関わらず、穏やかな表情を見せながら広島に対する思いを語ってくれた。
「自分がこの地域(三遠)にも愛されたいと思った1番の理由は、広島で初めてチームを創設するお手伝いをした経験が大きいです。その時の苦労を知るのは、今の選手では朝山、スタッフではトレーナーとドクターの方くらいですけど、多くの方がチームの血を繋いで歩んできました。僕がチームを去った後も苦労してる姿を見てきましたし、そういうチームが昨シーズン初めてCSに出て、1試合目で勝って、でもそこから2連敗した悔しさというものを今シーズンの彼らから感じました。応援してくれてるブースターさんも、僕がいた時は体育館がスカスカで、ビラを配っても誰も受け取ってくれないような状況だったんです。けど、今はあれだけ熱心なブースターさんが豊橋まで駆けつけてくれて、本当に魅力的なチームになったと思っています」
初のセミファイナル進出には、広島のベンチ側を朱色に染めたブースターの存在も欠かせない。豊橋駅のシャトルバス乗り場は午前中から長蛇の列ができ、エバンスも「本当に皆さんの声援がなければ勝てなかったと思います」と振り返った。
下剋上はまだ終わらない。広島ドラゴンフライズはさらなる自信とチャレンジャーの気持ちを持ち、再びファン・ブースターとともに愛知に乗り込む。セミファイナルの相手は名古屋ダイヤモンドドルフィンズだ。
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