2019.12.25

日本最強のバスケどころ福岡からやってきた祐誠。初のWCに爪痕を残す

両チーム最多の29得点を挙げた時川司はひたすらリングを目指した [写真]=伊藤 大充
バスケットボールキング編集部

福岡第一の九州大会とインターハイ優勝で巡ってきたチャンス

福岡第一、福大大濠に対抗するためウエートトレーニングには時間を割いたという (写真は永富真佑)[写真]=伊藤 大充


 12月24日、大会2日目を迎えた「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」は武蔵野の森総合スポーツプラザとエスフォルタアリーナ八王子を舞台に男子1回戦20試合が行われた。

 今年のウインターカップから出場チームが男女50から60チームに増え、大会の規模がさらに拡大されたのは周知のことだろう。大会要項には『全国9ブロックにおける各ブロック大会優勝の都道府県から男女各1チームを推薦。関東ブロックは、プラス準優勝の当該都道府県から男女1チームを推薦(計10チーム)』と内訳が記されている。
 
 今夏のインターハイ男子決勝の後、福岡第一高校(福岡県)の河村勇輝選手が「九州ブロック大会に勝ち、そしてインターハイに勝てたので福岡県からは3チームがウインターカップに出場できます。今回はそれを果たすことも目標でした」と語った。つまり福岡第一は九州ブロック大会にも優勝していて、出場枠を1つ増やしていたが、インターハイを制することで福岡県からウインターカップに出場する枠を合計3つ獲得したのだ。
 
 その決勝戦を見ていたのが祐誠高校(福岡県)の三笠富洋コーチと1、2年生だった。三笠コーチは地元のために奮闘している福岡第一を応援しなければといてもたってもいられなかったという。

 キャプテンの時川司はこの時からウインターカップ出場を意識したと語った。福岡県には福岡第一と福岡大学附属大濠高校という全国でもトップレベルの2チームがしのぎを削る日本最強のバスケどころ。それだけに3番手以降のチームが全国大会に出場するのは並大抵のことではない。しかし、福岡第一がそのチャンスを作ってくれたのだ。
 
「いい雰囲気で練習ができるようになりました。みんな声が出るようになった」と、時川は振り返る。
 
 福岡第一の井手口孝コーチの大学の後輩でもある三笠コーチは、国体のスタッフとして先輩の指導やベンチワークを間近に学んできた。中学生のリクルートでは苦労する中、フィジカルを鍛えて力を蓄えてきた。それは「いつかは(福岡)第一さんと(福岡大附)大濠さんをいつかは破って全国に出たい」という強い信念があったからこそ。今回は大会のレギュレーションの変更で巡ってきたチャンスだが、福岡県予選3位決定戦で中村学園三陽高校に勝利して、ついに全国へのキップを手に入れた。

「選手はよくやってくれた。すべては自分の責任」と三笠コーチ

豊浦の大迫亮太朗は3本の3ポイントを含む23得点をゲット [写真]=伊藤 大充


  迎えたウインターカップ初戦、祐誠は6年連続14回目の出場を誇る豊浦高校(山口県)と対戦。前半を35-34と豊浦が1点リードで折り返す接戦となった。

 試合が大きく動いたのは第3クォーター、祐誠は豊浦のゾーンプレスにミスを誘発され連続得点を許してしまう。「もう少し早くタイムアウトを取ってあげればよかった」と、三笠コーチは悔しがったが、豊浦伝統の粘っこいディフェンスと何度も飛び込むリバウンドに手こずり、祐誠はペースをなかなかつかめなかった。

 それでも試合の終盤にはオールコートのディフェンスで追い上げを図る。豊浦にタイムアウトを取らせるプレッシャーをかけることには成功したものの、試合巧者の豊浦をとらえることができず、71-79で敗れ去った。

「最後まで笑顔を見せてくれた。これは彼らの持ち味。それをウインターカップのコートで発揮してくれました」と三笠コーチは選手を称えた。その一方、「選手はよくやってくれました。この負けは自分の責任です」とすべてを背負った。

 試合後、時川は「楽しかったです」と笑顔を見せた。チームの初得点を挙げたことを聞かれると「気持ちよかったです」とまた笑顔だ。

 残念ながら目標にしていた「1回戦突破」は果たせなかった。時川は「勝利して祐誠の名前を挙げてほしい」とそのタスキを下級生に託した。初勝利こそ挙げられなかったものの、祐誠は確実にウインターカップの舞台で爪痕を残したと言えるだろう。

取材・文=入江美紀雄

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