チーム史上初の3位！京都精華学園のキャプテン高橋未来が持つ“求心力”

「決勝に行って桜花学園（愛知県）を倒したかったです…。でも、点数が離れても先生がずっと試合に出してくれたので、頑張って自分たちのバスケットをやり続けようと思いました。後悔はあるかもしれないけれど、全員が『全力でやった』と言っていたので、これをバネに、次に向けて頑張りたいと思います」（高橋未来/3年）

「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子準決勝。京都精華学園高校（京都府）は前回覇者の岐阜女子高校（岐阜県）と対戦したが、前半で22―59と大きなビハインドを負う。後半は相手の得点を抑えて点差を詰めたものの、前半の差が大きく響き、63―81で敗れた。

　だが、決勝進出こそならなかったが、チーム史上、そして京都府女子としても初となるベスト4入り。並み居る強豪たちを倒しての快挙には、走力、スキルともに向上した留学生センターたちの成長が理由の一つに挙げられる。加えて、選手それぞれが役割に徹する“チームワーク”も原動力と言えるだろう。

　そのチームを抜群のリーダーシップでまとめているのがキャプテンの高橋だ。今年、U18女子日本代表にも選出されたガードは、得意とするジャンプシュートを武器に得点を量産。フロアバランスを見ながらの好パスでも仲間の得点を演出した。

　3年前の全国中学校大会（以下全中）では、高橋を中心とした京都精華学園中学校（京都府）は準優勝に輝いたが、今年の3年生にはその時のメンバーが多い。そこに関瑞葵（3年）や留学生らが加わり、より層の厚い布陣を作った。

「全中で準優勝。高橋は（進路に関し）いろんな迷いがあっただろうけれど、全中の2日後には『残ります』と言いに来ました。それがみんなを結束させたというわけではないですが、彼女のチームへの思いが一つにしたと思います」とは指揮を執る山本網義アシスタントコーチ。

　それだけ、高橋の存在は大きい。思い越せば3年前、全中の表彰式後、京都精華学園の選手たちからは大きな笑い声が漏れ、そしてその輪の中心には高橋がいた。

「あの子のバスケットに対する思いと、人をまとめようとする思いとが上手く調和をしているというか。表現が難しいけれど、みんなにバスケットを好きにさせていくようなところがあったと思います。周りも高橋と一緒にやりたいという気持ちが強かった。結局、みんな高橋のファンなんです。

　先輩が間違ったことをすると、普通なら遠慮して言わないけど、ちゃんと指摘できる。真っ直ぐに、そして仲間を大事にして、前向きにチーム作りに励んでくれたと思います」と山本アシスタントコーチは言う。

「中学で育ててもらったので、違う学校に行くのではなく、高校でも京都精華で成長して、まだ行ったことのないところまで（勝ち上がって）行きたいと思ったし、今まで一緒にやってきたメンバーも全員、精華（高校）に上がるから、もう一度、叶えられへんかった夢を叶えようと思って決めました」と、高橋は高校進学のいきさつを語った。

準決勝敗退後、大粒の涙を流した高橋と山本コーチが握手［写真］＝新井賢一

「小学校の時は笑ってバスケットをしていなかったというか。でも、中学校からは先輩や同級生、後輩と一緒のバスケットが本当に楽しくて。京都精華学園に入ったから次のステップに行けると思っているので、6年間、山本先生に言われたこと、今までやってきたことを忘れずにこれからも頑張っていきたいです」と高橋。

「練習中は本当にストイック。でも、練習が終わったら明るいキャラでみんなを楽しませてくれます」とは、高橋の後を継いで新チームでのエース候補である荻田美。中学の時には高橋とともに準優勝を果たした選手の一人だ。

苦楽を共にした仲間たちと最後は笑顔で記念撮影[写真]=大澤智子

　抜群の求心力を持つ高橋。駆け抜けた京都精華での6年間を終えて「このメンバーとバスケットができないのは寂しい…」と涙を流した。

　そんな彼女に「バスケットに対する姿勢が変わらなければ、これからもいろんな人にいい影響を与えてくれるのではないかなと思います」と、中学高校と指導してきた山本コーチは賛辞の言葉を送った。

文＝田島早苗