2021.07.18

インターハイ男子注目校(5)仙台大学附属明成(宮城)「“新しい自分になる”挑戦と成長の夏」

優勝した昨冬のウインターカップを経験している3年生の山崎紀人[写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

 7月25日から30日にかけて新潟県で行われる「令和3年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」。2年ぶりとなった夏の祭典に向け、バスケットボールキングでは大会で見るべき注目のチームをピックアップした。

■男子注目チーム(5)仙台大学附属明成(宮城県)

「紀人、お前がエースなんだ!」

 インターハイを目前にして佐藤久夫コーチの檄が飛ぶ。昨年ウインターカップで優勝を経験している唯一のメンバー、山崎紀人(3年)に向けられたものだ。

『唯一』と紹介するのは、U19日本代表である山﨑一渉と菅野ブルース(ともに3年)が「FIBA U19ワールドカップ」から帰国後に隔離期間があるため、インターハイには途中合流になるからだ。昨冬の優勝メンバーが残る仙台大学附属明成高校(宮城県)とはいえ、得点力とリバウンド力がある大黒柱不在の中で戦うことは容易なことではない。その中でエースの役割が求められているのが、下級生時から主力である山崎紀人なのだ。

 チームは、春先から山﨑と菅野がU19代表に選出されることを想定し、インターハイ県予選後には、2人を先発チームから外した練習を開始している。そうした中で、佐藤コーチは選手たちに宿題を与えていた。

「一渉とブルースはワールドカップで自分の力を出すこと。残った選手たちはエース不在をチャンスと捉えて試合に出て成長すること。この夏はそれぞれが『新しい自分になるチャレンジだ」

 そのような中でキーマンになるのは、得点力あるポイントガードの内藤晴樹とシューターの八重樫ショーン龍ら2年生と、1年生ながらセンターの先発に抜擢されたウィリアムス・ショーン莉音ら新戦力だ。彼ら下級生たちが経験を積んだ最終形には、佐藤コーチが「明成史上もっとも大型チーム」と期待を寄せるスケールの大きなチームの姿があるだろう。だが、現在はその選手層と経験値を鍛えている段階。そのため、佐藤コーチは「一渉が35点取ることを想定して先発メンバーは一人が7点多く取り、ブルースが走る分は全員で走る」ことを課題としている。

 山崎紀人は2人が不在になった1か月間、どのようにチームを引っ張るか迷いがあったという。そこで出した答えは「自分は得点も取るけれど、ディフェンスやリバウンド、ルーズボールを頑張り、チームが困ったときこそ奮起したい。これが自分が考えるエースとしての仕事」というチームを支える覚悟だ。そしてキャプテンの丹尾久力(3年)は「これまで一渉とブルースに頼っていた分、残っていた選手たちの責任感が増したと思うので、2人がいないときも、帰ってきてからも、チームが一つになって戦います」と誓う。

 2週間という隔離期間を経てからの全員集合はコンディション作りやチームへの適応を含めて誰もが経験したことのない未知への挑戦となるが、佐藤コーチが言うように、「一人一人が新しい自分になる」その先にこそ、明成が目指すインターハイ優勝がある。

仙台大学附属明成はチーム一丸となってインターハイを戦う[写真]=小永吉陽子

取材・文・写真=小永吉陽子

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