2021.06.10

高校界注目の山﨑一渉&菅野ブルース(仙台大明成)…2人が目指す「本当の大黒柱」

仙台大学附属明成の2人のエースである山﨑(左)と菅野(右)がチームを引っ張る[写真]=小永吉陽子
スポーツライター

得点のバリエーションが増えている山﨑一渉

 今年の高校界でもっとも注目を集めているのが、昨冬のウインターカップ王者・仙台大学附属明成のエース、得点源の山﨑一渉(199センチ)と大型ガードの菅野ブルース(197センチ)だ。ともに3年生で2人が軸となる明成は、6月7日に終了した「令和3年度 全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の宮城県予選を順当に勝ち抜き、インターハイの切符を獲得している。そんな注目を集める明成のエースたちが最上級生になって目指しているのは「本当の意味で大黒柱になること」(山﨑)だ。

 昨冬のウインターカップ決勝の東山(京都)戦。死闘の末に勝ち越しとなるラストシュートを決めた山﨑に対して佐藤久夫コーチは、「本当に入れなくてはいけないシュートを決めたことがうれしかった」とその勇気を賞賛した。それまでの山﨑は「2年生エース」と呼ばれながらも、佐藤コーチからは消極的な姿勢を指摘されることも多かった。優勝後のコメントで本人が「自分がダメなときに3年生が何回も声をかけてくれた」と強調していたように、昨年は先輩たちに引っ張られての優勝だったのだ。

 時折、消極的だったのは迷いがあったからだ。中学時代から195センチを超えるサイズでアウトサイドシュートを得意としてきたが、高校では「シュートだけの選手ではなく、オールラウンドプレーヤーになってほしい」(佐藤コーチ)との願いから、インサイドに跳び込むことや、ブロックやリバウンドで体を張ることなどプレーの幅を広げている。そこでの駆け引きや要求の高さに迷いが生じていたのだ。

「バスケットはこんなにも頭を使う競技だということが明成に入ってわかりました。考えながらやるプレーは難しいけれど、みんなでチームプレーを作ったり、得点を任されることはとても楽しい」とエースとしてのやりがいを感じている。今年に入ってこなした試合数は少ないながらも、得点のバリエーションが増えていることは、37得点を稼いだインターハイ県予選決勝の戦いぶりからも明らかだった。

「自分が積極的にシュートするのは当たり前ですが、1、2年生が抜かれたときにヘルプができるように、チームのミスは自分のミスだと思ってカバーすることが課題です。今年は本当の意味で大黒柱になれるように、自分が引っ張っていきます」(山﨑)

内外角を攻めるオールラウンダー山﨑一渉[写真]=小永吉陽子

最後の年に燃える大型ガード菅野ブルース

 197センチのサイズを持ち、将来性と本人の希望により、明成では1年の頃からポイントガードに挑戦している菅野ブルース。一方でU19代表ではドライブを生かした得点が求められているように、ガードからウイングまでポジショレスにこなす選手だ。

 そんな高いポテンシャルを持つ選手だが、昨年は度重なる負傷や、中学時代から痛めていた右膝を手術することになり、シーズンを通して実戦から離れていた。その間に体を鍛えて年明けには待望の復帰を果たすも、4月24日に行われた白鷗大学とのエキシビションゲームでは、司令塔としての経験の少なさを露呈してしまい、大学生のプレスディフェンスの前に攻めあぐむシーンもあった。

「大学生に強いフィジカルで当たられて、ボール運びでミスをしてしまい、コミュニケーションも取れず、自分に足りないところがわかりました。今はその反省を生かして、どんな時でもボールをプッシュして、積極的にアタックすることを心がけています」と課題に取り組んでいる。

 司令塔としては学ぶことが多く粗削りな面もあるが、本人の申告では「まだ身長が伸びている」ことからも、その可能性は無限大。佐藤コーチは「高校生のうちに失敗を怖がらずにたくさん経験をすることが大事。今はガードとしては物足りないけれど、今を乗り越えれば、その先は人とは違うタイプのガードになれるのではないか」と成長を心待ちにしている。今年の菅野はこれまでの司令塔ナンバー『6』から、エースナンバー(またはシューターがつける)『10』を背負うことになり、さらなる自覚が増しているところだ。

「得点もディフェンスもゲームメイクも全部やるという意味でもらった背番号だと思っています。ウインターカップに出られなかった分も、今年は自分がやってやるという気持ちです」(菅野)

ゲームメイクも得点も任されている菅野ブルース(写真は2021年4月)[写真]=小永吉陽子

 ウインターカップを制した主力が残ることからも、今年の明成は有力なインターハイ優勝候補といえるだろう。だが、高校生としては規格外のサイズを生かしたプレーを構築していることや、新戦力の1、2年生が試合に絡むことからも、チーム作りは模索中である。山﨑と菅野が下級生のときに先輩たちに助けてもらったように、今度は2人が下級生をリードする番である。エースとして苦しい場面でいかに立ち向かえるか。2人が「本当の意味で大黒柱」になったとき、昨年以上にスケールの大きなチームになれるはずだ。

写真・文=小永吉陽子

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